素直になれない私のロマンス   作:huuuuuuum

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夢と私と黒歴史。

夢を、見ていた。

 

とても……とても優しくて、胸が詰まって、苦しくて、それでいてまるで…私の心の中に出来てしまっていた、分厚い氷を溶かしてしまうのではないかというほどの熱を帯びている。

 

その影響なのだろうか。自分で自分が心配になってしまうほどに、私の心臓の鼓動は時を刻むごとに速さを増していって……今にもそれが体から飛び出してしまうのではないかと錯覚してしまうまでに刺激的で、そしてやっぱり苦しくて、胸が詰まって、とても優しい……そんな夢。

 

もう……なんだかぼんやりとしか覚えてはいないのだけれど、眠りに入る前にあんなことを姉さんが言うからよ。

あんな夢の中にいた私、気持ち悪いわ。

やっぱり、今の私は変になってしまったのかもしれない。だってこんな私、昔の私が見たら一体どんな目で見るのだろうか。軽蔑する? 冷ややかな目で見られるのだろうか。それともお得意の罵倒が始まるのかもしれないわね。我ながら、そうされても仕方がないと思う。

 

 

でも、だって、ね? ……あんな夢を見てしまったら…その、、、いくら私だって……どうにかなってしまうじゃない……もうっ。

こんな私になってしまった責任は誰にあるのかしら……一人はもちろん私。当事者ですもの。当たり前だわ。

でも恐らく私以外にこの責任の一旦を担わせることができるのであるとするならば、それは一体どこのどなたさんに責任を一緒に背負ってもらえばいいのだろう……。ああ、こんなことを考えていては、また夢の内容を思い出してしまうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカ、ぼけなす、八幡っ。

 

 

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「うっす」

 

「あら、どちら様かしら。お名前と学年、所属クラスを教えていただけると助かるわ。それと、今度からは入室するときはノックをお願いしてもいい?」

 

「……俺、一応ここの備品とか言われてるくらいなんですけど? 備品の名称くらいちゃんと覚えてくれませんかね。ほら、備品の管理は部の部長に責任があるんじゃねえの? 知らんけど。」

 

「あら、そうだったわね。ごめんなさい、比企谷君、安心して……ええ、そうよ。あなたは備品ではなくて……ちゃんと、人よ? 」

 

「……一見優しい言葉をかけるにように見せかけて、ちゃんと俺をdisる要素も入れることに成功してる辺り、流石雪ノ下さんですね。」

 

「ええ、あなたは国語学年3位。私は1位。厳然たる力の差を思い知ったかしら? ……八幡? 」

 

「っ!! ……おい、お前、今な、なんつった?」

 

「……あら、たった今自分に向かって言われた言葉すら覚えてられないだなんて、やはりあなたは人ならざるものだったみたいね。残念だわ」

 

「おいおい、あっち向くなよ。なんでいきなりそんな不機嫌になるの?俺なんか悪いことした? ……つーか雪ノ下って、そんな情緒不安定な女子みたいなところあったんだな。」

 

「……なによ。私が何に不満なのかも察知できないくせに、せっかく、勇気出したのに……」

 

「あのなあ、訳わかんねえから。いや、まじでさ……ああ、もうくそっ」

 

「……なによ……ついにヤケクソにでもなったのかしら。こんな事も分からないような人、どれだけ時間をかけて頭を回したところで無駄よ。諦めていつもの通り今日も別々に黙って本を読んで過ごしていましょう? 特に会話する必要もないのだから。」

 

「…フゥ…………悪い。そんなに不貞腐れないでくれ………………雪乃」

 

「っっっ!!!!! ……あなた……か、顔、真っ赤よ? ……あの、、その、、あとなんて言ったか……もう一度言ってもらえないかしら?」

 

「いや、お前な。さっきまで散々同じ事で俺にあんだけ当たってたくせに、自分がそれ言うのはずるいだろっ!」

 

「……お願い……。ごめんなさい、、、でも、自分でも私がどれだけ荒唐無稽な事を言っているか分かっているの。それでも、それでもね?……私はあなたの口から……聞きたいのよ……お願い、どんな我儘を言っているかなんて自分でも自覚してるっ!それでも……それでも聞かせて?」

 

「クソっ……そんな、潤んだ目で申し訳なさそうにねだるなよ……可愛いすぎるだろうが……雪乃、、、」

 

「っ!!! ……フフ……ウフフフフ、、、よく言えました。八幡。顔、真っ赤よ? 」

 

「今のお前にだけは言われたくないな。顔、真っ赤だぞ?雪乃。」

 

「ええ、でも、悪くない気分よ……あなたに名前を呼ばれるのが、私をこんなにもとっても幸せな気分にさせてくれるだなんて知らなかったわ……ねぇ、私をこんなに幸せな気持ちにさせてくれてありがとう。八幡? 」

 

「っっっっ!!!!! ああクソっ、もう無理だっ! 」

 

「え? 、、、きゃ、きゃあっ!な、なにするの比企谷くんっ! こ、こ、こんな強引に壁に私を……か、かべどんだなんてっ! 」

 

「……壁ドンな、舌ったらずな雪乃も可愛いな。それと、雪乃、比企谷君なんて言うな。俺が雪乃になんて言ってほしいか、分かるだろ? 」

 

「……な、なによ。耳元でそんなこと囁くだなんてて、バカ、バカバカ、……はちま、は、はち、…………はちまん」

 

「好きだ。雪乃。ずっと前から雪乃の事を想ってた。でも、この想いを打ち明ける気は本当は無かったんだが……なあ、これも、雪乃が可愛すぎるのがいけないんだからな?俺をこんなにした責任とってくれよ? 」

 

「な、な、な、にゃにをっ! なに、な、なにをあなたは……え、そんな顔を近づけたら……もう……わたし、わたし……」

 

「」

 

「改めて言うぞ、好きだ。雪乃。俺とこれからの時間を一緒に過ごしてくれ」

 

「……はい。じゃあ、もう一回……誓って? 」

 

「ああ、お安い御用だ……」

 

 

 

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ああ、ほんの少し思い出してしまっただけでもダメっ。これが八幡……比企谷君が言うところの黒歴史と言うのね、なんだか黒歴史の真髄を見た気がする。ああ、恥ずかしい。誰かに見られた訳でもないのにこんなっ、っていうかあれ誰よっ! 比企谷君があんなキザなこと言わないでしょうっ! それを言うなら私だって! なんで受け入れちゃうのよっ! 何故私はあんなつまらない事で気分をあんなに分かりやすく害していたの!??? あんなの私じゃないでしょう? ねえ、ねえってばっ! 私は誰に確認してるのよバカっ!

 

 

 

あえて言おう。アホである。地の文が出てくるまでに実に約2500文字、雪ノ下雪乃の独白と夢の一端が垂れ流されていて、また夢を思い出し、それについて考えていた雪乃自体が自分の思考にまた頭をやられそうになっている。

ポンコツ幼児退行ゆきのんが現実世界で活躍していた時に眠っていた雪ノ下雪乃の意識は、今は既に覚醒していて、後は自分のベッドの周りを確認するだけだというのにも関わらずだ。もしこのままこの暴走する思考を続けていれば、またまた陽乃と結衣を腑抜けにしたポンコツのんが現実世界に再登場するのであろうが、そんな雪乃からなんとか暴走する意識を取り外すことに成功したのは、目を開けた瞬間に雪ノ下雪乃が自分のベッドの下、部屋の床で姉と親友が幸せなそうな顔で二人ともヨダレを垂らしながら、抱き合いながら寝ている姿を目撃したその衝撃故である。

 

というか何故ここに結衣が?と雪乃は少しだけ疑問に思うが、直ぐに別の衝撃に雪乃は意識を奪われた。

 

 

 

陽乃と結衣が抱き合っているということは、もちろん彼女たちの顔の少し下の辺りで強大な存在感を放つアレとアレが頂上決戦を繰り広げるという事だ。この二人、手早く言うとπの大きさでは、雪乃などとは比べ物にならない。まさに高く険しい頂上の見えない双璧と言える。もはや努力ではどうすることも出来ないのではないか?……と最近柄にもなく雪乃を弱気にさせてしまうほどのインパクトをもつ存在2つだ。

そんな二人の4つのものが、目の前で我が我がと言わんばかりに押しのけ合おうとしているのを目撃した現在時刻朝9時52分。

陽乃と結衣をダウンさせていたポンコツのんが出現していたのは約2時間前の話だが、それをまたいで12時間52分ぶりに、まさに雪ノ下雪乃が満を持して正気に戻った瞬間だった。

 

 

 

 

「起きなさい」

 

 

氷の槍を思わせる声が、寝ている二人を襲う。

 

 

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「なるほど、由比ヶ浜さんは私の看病に来てくれたのね。ありがとう」

 

「た、タハハ…うん。ゆきのんのこと心配だしね」

 

「そうだよ雪乃ちゃんっ! だから…ね? よく分からないけど、機嫌を直してくれないかなあ? 」

 

「あら別に? 私は不機嫌になどなってはいないのだけれど。何をそんなにへりくだっているのかしら二人とも。」

 

「うぅ〜、ゆきの〜ん。なんか分からないけど機嫌直してぇ〜起きたらこれでもう訳がわからないよ〜。」

 

「というか、二人は何故あのように幸せそうに抱き合って寝ていたのかしら? 」

 

「あっ、そ、それは……うん……何にもなかったよ、ゆきのん」

 

「……そうね、何にもなかったよ。雪乃ちゃん。私たちも無意識に何か嬉しい夢でも見て奇跡的に抱き合っちゃったんじゃないかな?」

 

夢というワードがでてきた雪乃は、再び顔を赤らめる。まあ今の雪乃はπの双璧の衝撃に心理的に押しつぶされていた後ということもあり、顔が赤くなり瞳が潤み出す程度で済んだ。

だが、その雪乃の変化は、空気が読めすぎて人の心を読むプロフェッショナルな親友と、優秀すぎる上に雪乃のことなら何でもお見通し(四六時中雪乃のこと考えているから)姉に何を考えていたかを察知されるには十分な情報であった。

 

「雪乃ちゃん、もういい加減認めなってば。私の昨日のあれがトリガーになっちゃったのかなあ? じゃあ雪乃ちゃんのアレも私が原因か」

 

「な、何を認めるのかしらっ! 主語を明示しなさいっ! それとアレってなんのことよ」

 

陽乃の言葉を聞いて慌てだした雪乃に、結衣が切り込む。

 

「……ゆきのん。いろはちゃんから聞いたんだよね? 」

 

雪乃はその結衣の発した言葉に一気に冷静になり、先程までの慌てっぷりが一切消えて、答えた。

 

「ええ…あなたはもう返事はしたと聞いたけれど。」

 

「うん。直ぐに返事したよ。でも、私がどんな返事をしたかは言えない。ゆきのんにも、いろはちゃんにもフェアじゃないからね。だから、もしゆきのんが悩んでいるんだとしても、私は今回だけは協力できないんだ。ごめんね。」

 

「ええ、…分かったわ。」

 

結衣の言葉につい弱気な感情を表に出して、伏し目がちになっている雪乃に対して、

今までのシスコンを拗らせたふざけた雰囲気から一気に変えて、雪乃と結衣の話を聞いていた陽乃が告げた。

 

「雪乃ちゃん。正直私は正確なことは分からないけど、ちゃんと考えなさい。多分雪乃ちゃんにとっては、今直面しているものは考えても考えても答えが出ない迷宮みたいな問題なんだと思う。それでも、いくら苦しんでも、つらくても、考えなさい。それで熱を出してもまた私がちゃんと看病してあげる。側にいてあげる。そうする価値があるくらい、今あなたの目の前にある問題はあなたにとって大切なことよ。だから雪乃。逃げちゃだめ。」

 

陽乃の真面目な雰囲気に圧倒される雪乃。ただ、その雰囲気は雪乃に対する深い姉の想いを感じさせるには十分なものだった。

雪乃は、目を下にやりながらも、しっかりとまた目に正気を戻し始め

 

「ええ」

 

一言、二人に発した。

 

 




次回、いろはすvsゆきのん

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