『琴葉茜』とマイクラ世界   作:糸内豆

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第45話 防壁と動物小屋

「ほな、ちゃっちゃと防壁完成させてまうか」

 

 新拠点は完成したものの、まだまだ建てないといけない設備はいくつもある。

 その中でも一番命に関わるものとして、まず防壁の建設を行なうことにした。

 

「これがないと安心して夜も寝られんわ」

「お姉ちゃんいつも爆睡してるでしょ……」

 

 今回作るのは、以前村で作ったものを強化したようなものである。

 拠点を正方形で囲むように鼠返し付きの壁を設置し、その外側を掘り下げるというシンプルな構造はそのままだが、壁の素材は石になっているし高さや厚さ、さらに堀の深さも増しているので、恐らく前と同じ規模のゾンビの襲撃を受けても一晩は保つだろう。クリーパーやスケルトンが群れで来たら、その時はさっさとヘリで逃げるしかないが。

 また防壁の内側には何カ所か階段を設置し、上に登れるようにする。ここから拠点の周辺の様子を確認したり、襲撃があった際はここからスポーンブロックまで足場を伸ばしたりする。また弓による狙撃も可能。ちょうど西欧の城壁のようなものだ。

 

「せや、堀に水入れたらプールみたいに泳げんかな。手間やけど」

 

 基本、この世界の水は埋め立てたり回収したりしなければ涸れはしないが、水源から無限に水が広がっていくわけでもない。そういうわけでなみなみと水が張ってある状態を作りたければ、その空間に1ブロックずつ水源がある状態にしないといけない。そうしないと空いた空間に水流が発生してしまうからだ。

 そういうわけで泳ぐための水場が欲しければ、手間を惜しまずちゃんと水を設置しないと水流で思ったように動けないということになるわけである。

 が、それとは別に葵は致命的な欠点を口にした。

 

「それ、ゾンビやスケルトンが朝になっても生き残ったりしない?」

「あ」

 

 ゾンビやスケルトンは太陽光を浴びると炎上し、最終的にはスリップダメージで倒れる。

 が、それはあくまで炎上によるものであり、決して太陽光で直接ダメージを受けているわけではない。

 そして炎上は水に触れると鎮火する。特に水の上にいるスケルトンなんかは昼間だろうと弓を持ってないクラフターを何人も射殺してきたものだ。

 

「あと、気がついたらお姉ちゃんが溺れてそう」

「…………」

 

 否定出来なかった。

 そんなわけで当初の予定通り、空堀を掘って防壁は1日で完成。

 前と違って、十分素材があったからその分早まった形だ。

 そして、次の日は……。

 

「なー、やっぱ今のままでよくないか?」

「駄目だよ! 動物さん達にもちゃんと住むところを用意しないと!」

 

 あの生意気な動物共の住処を用意しないといけない。

 現状、動物は柵で囲ってまとめているだけであり、屋根も壁もない吹き曝しの状態である。ゲームの時と変わらない環境だ。

 肉類や牛乳、羽などを安定して確保するためにもある程度は管理しないといけないのは分かっているが。

 

「どうにも癪やで」

 

 葵に対しては飢えた老人のために焚き火に自ら飛び込んだ兎の故事が如く、進んで食料になりそうなくらいやたらと懐いている動物達だが、何故か俺に対してはやたらとふてぶてしい態度ばかりを取る。

 確かに食料にするため飼っているのだから敵視されてもおかしくはないが、それにしたって態度が違いすぎないだろうか。

 そんなことを話しているとメイドさんがやってきた。

 ちょうどいいので動物小屋についての意見を募る。

 

「建物は欲しい? 雨の日の世話が面倒だから?」

 

 確かに放牧状態では世話する側も雨の日に濡れることになるか。動物のためではなく、世話する側のためというのがメイドさんらしいが。

 まあ現状、農作業を担当しているメイドさんがそう言うのでは仕方ない。飼っている頭数もさほど多くないので、1舎建てて柵で動物ごとに区切ればいいだろう。

 

「しゃあない、これもお肉のためや」

 

 コクコクと頷くメイドさんと俺を葵が呆れたように見ていた。

 そういった調子で動物小屋はさほど時間もかからず完成する。柱と壁と屋根、それから仕切りの柵があるくらいで後は内装もほとんどない。ウシやヒツジは草を食べることから、地面もそのままだ。一応換気を考えて所々に柵を使った窓を設けてはいる。

 

「んー思ったより早く終わったなぁ」

「慣れてきたのもあるかもね」

 

 後は動物達を誘導して終わりだ。

 

「ほわぁぁぁ!?」

 

 そして案の定、俺は手に持った種目当てのニワトリ共に追いかけられる羽目になった。

 葵はのんびりウシを誘導しており、メイドさんはビシバシとヒツジを追い立てていたというのに。

 なんで自分だけと思っていると、メイドさんがやってきてジェスチャーで理由を示した。

 

「えっ? ウチから舐められる感じのオーラが出てる? 実際チョロい、あっ、やべっ本音出た、やとぉ!? 待てやコラ! しばいたるわぁ!」

「ちょっと、喧嘩しないの!」

 

 口、もとい仕草を滑らせたメイドさんは脱兎の如く逃げ出し、俺はそれを追いかける。

 結局逃げ足の速いメイドさんを捕まえることは叶わず、最終的にはおやつ抜きの一言で固まったメイドさん共々葵に怒られることとなった。

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