『琴葉茜』とマイクラ世界   作:糸内豆

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第49話 本を読む

「うわっ、めっちゃ細かいなぁ」

 

 無事、拠点まで戻ってきた()と葵は早速行商人から受け取った本を読むことにした。空路とはいえ村との往復でだいぶ日も傾いてきたし、今日はもう家で過ごすことにする。

 題名だけが書かれた簡素な表紙をめくると、目次も前書きもなくいきなり文章が始まっている。余白がもったいないとばかりにギッシリと書かれており、ページ数に対してそこそこのボリュームがありそうだった。

 葵の横から本の内容を覗き込む。

 

「ちょっと、お姉ちゃん」 

 

 装丁を知らない人が本を作ったらこうなるといった感じだ。これが原本か写本なのかも、誰によって、いつ、どういった経緯で著されて売りに出されたのかも分からないが……読んだらそのことについても書いてあるのだろうか。

 

「お姉ちゃんってば」

 

 マイクラ世界の謎文字を日本語として認識出来るとはいえ、文字が細かくて見辛いのまではどうにもならない。健康体な茜ちゃんボディの視力が下がってしまいそうだ。

 

「お姉ちゃん、近いよ!」

 

 そんな風に食い入るように本を眺めていたら、気がつくと葵にくっつくぐらい寄っていた。

 慌てて距離を開けると、葵が微かに頬を赤くして半目になっている。

 

「す、スマン」

「もう……渡すから読んでて。私、晩ご飯作るから」

 

 葵は本を押しつけるように渡してくる。

 そのまま声をかける間もなく、台所の方へと行ってしまった。

 

「あ~……どないしよメイドさん、葵怒らせてもうた~」

 

 瀟洒という言葉とは程遠い、ソファでゴロンと横になっているメイドさんに助けを求める。しかしメイドさんはやれやれだぜとでも言いたげに、手のひらを横にして上げるばかりだ。

 メイドさんは当てにならないし、かといって葵の後を追いかけるのも気まずい。

 葵の言ったように本を読んでおいて、後で謝るしかないか。

 気を取り直して本の内容に目を向ける。

 

「ふむふむ」

 

 文章はまず著者が訪れた土地の説明から始まっていた。

 どうやらこの時点でクラフターについて探る旅を始めてから何年か経っているようで、それ以前に赴いたことのある土地についても若干触れられている。紙の特産地だったようで、もしかしたらここで旅を記録しようと思い立ったのかもしれない。

 この辺りにはクラフターに関わる事柄は書いてなさそうだ。流し読みしてめぼしい情報が出てくるまでパラパラとページをめくっていく。

 

「これや」

 

 やがてそれらしき単語を見かけた辺りで捲るのを止め、じっくり読む。

 本には次のようなことが書かれていた。

 

 

 ――そもそもクラフターとは、どこからやってきた存在なのだろうか。

   私がそれを伝承をよく知る古老に尋ねると、老人は答えた。

   「外の世界――この世ではないところから」

   この世ではない? それはつまりあの世、ネザーから来た存在ということだろうか。

   私がそう問うと老人は首を横に振った。

   「それは全く理の異なる世界。我々の想像の及ばぬ世界。

    クラフターはそこからやってきたと語った」

   どのように?

   「門にして鍵であり、天地創造の力を持つ書によって。

    その書は記されたままの世界へ読み手を送る力を持つという。

    クラフターはそれを携え、やがて終わりの地へと姿を消した」

 

 

「ビンゴォ!」

 

 俺は思わず喝采を上げた。

 間違いない、『時代の書』だ。

 何やら宇宙的恐怖みたいに形容されているものの、『時代の書』そのものがゲートでもあり、使用する鍵でもあるという解釈はそう外れてはいない。

 ちょっと気になるのは天地創造の力を持つという点だ。

 以前村長から聞いた話によれば、この世界を作り上げたのは『神様』であってクラフターではないはずだ。しかし、これではまるでクラフターが『時代の書』を使って世界を作り上げたようにも見て取れる。

 もしも世界生成を行なうMystCraftの『時代の書』だった場合、元の世界へ戻る役には立たないことになる。

 

「それに終わりの地か……」

 

 マインクラフトで終わりを意味する土地と言えば、『ジ・エンド』だろう。

 エンド要塞という場所から転移する、ネザーとはまた別の世界であり、ある意味マインクラフトにおけるラストステージとも言える。

 そこへ行ったということは話に出てくるクラフターとはエンダードラゴンを倒しに行ったということだろうか。

 いずれ行くことになる可能性も考えてはいたが……。

 

「それも含めて、葵と話さんとな」

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