『琴葉茜』とマイクラ世界   作:糸内豆

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第50話 遠出決定とメイドさんの要求

 葵の作ってくれた晩ご飯を食べ終え、食後のお茶を飲みながら本について話す。

 無表情のメイドさんは雰囲気だけ喜色満面でデザートを食べている。

 

「初めに言うておくと、本の内容と町の人の頼みってのは特に関係無さそうや」

「そうなの?」

 

 頷いてから本に書かれていることが何を意味するのかを詳しく説明する。

 クラフターそのものに関する記述は思ったより少なく、クラフターが関わったことで発展した土地についての話の方が多かったこと。

 その中の数少ないクラフターの出自に迫る記述によれば、『時代の書』が関わっていることはほぼ確定であろうこと。

 ただし、『時代の書』によって世界が創られたことを示唆するような文言も入っており、はたして『時代の書』が原作MYSTのものなのかMystCraftのものなのかまでは断定出来ないこと。

 

「手がかりとかは無さそう?」

「無いことは無さそうなんやけど……」

 

 そして恐らく今回一番重要な点について話す。

『時代の書』を持っていたというクラフターはどこへ行ったのか。

 

「その『時代の書』を持ったクラフターはな、最後に終わりの地へ姿を消したらしいんや」

「終わりの地?」

「『ジ・エンド』、長らくマインクラフトの最終到達地点だった場所や。手がかりもあるかもしれんけど……」

 

『ジ・エンド』について葵に話す。

 エンド要塞という、地下のどこかにある遺構から行ける世界であり、そこは大量のエンダーマン、そしてボスであるエンダードラゴンの住まう常夜の浮島であること。

 一旦入ったらエンダードラゴンを倒す以外に世界を出る方法はないこと。

 

「もしもクラフターがエンダードラゴンを倒して、復活させてなければエンダーマンくらいしか気をつける相手はおらんはずやけど」

「それを知る方法は片道切符で実際に行く以外に無いってことだよね……」

 

 葵は難しい表情で俯いた。

 無理もない。

 事によっては一度足を踏み入れれば生きるか死ぬかの2択の場所。

 巨大なドラゴンと相対するだけでも恐ろしいことなのに、退路が無いとなれば後込みして当然だ。

 

「ちょっと考えさせて……」

「分かったで。まあ他にも情報あるかもしれんし、今は置いとこうや」

 

 とはいえあくまで今回手に入れた本から考えるとそうなるというだけで、『ジ・エンド』に行けば全てが解決すると決まったわけでもない。まだまだ他にも情報を探せば見つかるかもしれない。

 今すぐ決めてしまうのは早計だろう。

 

「それより町に行くかどうか決めんと」

「それもそうだね」

 

 行商人が言うには町の偉い人が頼み事があるとのことだった。

 詳しい話は知らされていないが、焦りのようなものを感じたとも。

 

「とは言ってももう決まりみたいなものだよね」

「まぁ、なぁ」

 

 わざわざクラフターに頼みがあるってことは、恐らく村でやってるような防壁や道の整備だとか、自分達で出来るようなことを頼みたいわけではないだろう。

 クラフターでないと出来ない、あるいは分からない何かについて。

 焦っているにも関わらず、直接会って話したいというのは余人には然う然う教えられないこと。

 都合の良い時に来てくれればいいというのも、どこまで本当なのか。

 

「怪しいけど、行かん方が厄介なことになりそうやしなぁ」

 

 とはいえ今は少しでもクラフターや『時代の書』に関する情報を集めたいところ。

 手がかりを掴むきっかけさえなかなか得られない現状ではある程度のリスクを負ってでも踏み込めるところは踏み込んでいくしかないだろう。

 騙し討ちをしようだとかそういう悪巧みをしているわけでもないだろうし。

 今まで出会ったのが村の人や行商人、メイドさんだけだから判断材料としては弱いかもしれないが。

 

「となると留守番が必要なわけだけど……頼んでいいかな?」

 

 葵はそう言いながらちょうどデザートを平らげたメイドさんに目を向けた。

 メイドさんはサムズアップ。

 食い気が多く小生意気なところはあるけど、普段の行動はそつがないし大丈夫か。

 

「えっ、何々? その間のご飯はちゃんと用意してって? 砂糖生活で満足するようなぺーぺーなんかじゃないから?」

「まぁた偉そうにしよって」

 

 ただしそこはやはりメイドさんだった。

 出かけている間の料理を用意することを要求してきたのである。

 自分でも作れるだろうが葵手製の方がいいようだ。

 まあそれは分かる。

 

「出かけている日数分の朝昼晩の3食に加えて3時のおやつ、それにお腹が空いた時の夜食……ついでに小腹を満たす用のつまめるお菓子も?」

「いくらなんでも食い過ぎやろ! 太るで!」

 

 だが、いくらなんでも要求しすぎではないだろうか。

 大丈夫、私は太らないから。

 そう言いたげにドヤ顔をするメイドさんに対し、葵はぴしゃりと言った。

 

「食べ過ぎは駄目です、日数分3食とおやつまでね」

 

 メイドさんは天を仰いだ。

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