俺「この人たちもダメか…」
どうしたらいいんだ。
ボランティアの人たちは全く集まらなかった。
焦りばかりが募っていく。
〜部室〜
かすみ「先輩、今日も来ませんね…」
果林「必ず1000人集めてくるからみんなはイベント内容を考えてって出て行ってからもう何日も経つわよね…」
しずく「このまま部長一人で1000人集めるつもりなのでしょうか」
愛「歩夢からの連絡も全然出ないの?」
歩夢「うん…夜も遅くまで頑張ってるみたい…」
璃奈「璃奈ちゃんボード むむむ」
エマ「なんとか手伝ってあげたいけど」
彼方「部長が手伝う余地を与えてくれないからね〜」
せつ菜「部長…」
〜校庭〜
生徒A「ごめんね、三船さん、私やっぱり元の部に戻りたいんだけど…」
栞子「そうですか…わかりました。」
生徒A「あれ?引き止めないの?」
栞子「えぇ、それがあなたが選んだ道なら、私に止める権利はありませんから…。ですが後悔はしないでくださいね」
生徒A「う、うん。ありがとう」
栞子「それでは…」
生徒B「ね、ねぇ、最近の生徒会長、覇気がなくない?」
生徒A「うん…絶対もっと反対されると思ってたのに…」
栞子「(やはり私が間違っていたのだろうか…。こんなにも多くの生徒が元の部活に戻るなんて…どうして…)」
俺「そこをなんとか!」
栞子「(あれはスクールアイドル同好会の部長…。何しをしてるんだろう)」
俺「この人もダメか…。ダメだ、切り替えて次行こう」
栞子「(まさかボランティア1000人集めるのを1人で?そんなの無茶すぎる)」
〜食堂〜
俺「次は…この人たちを当たってみるか」
栞子「失礼します」
俺「君は…三船さん」
栞子「まさか1人でボランティアを1000人集めようとしているのですか?」
俺「そうだとしたら?」
栞子「はっきり言って無謀です」
俺「無謀か…。そうかもな」
栞子「え?」
俺「君の言う通り無謀なのかもしれない。実際に人は全然集まらない…。それだけじゃない、これ」
俺はスマホの画面を栞子に見せる。
栞子「これは…掲示板?『虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会の部長はスクールアイドルじゃないからスクールアイドルの気持ちなんて理解していない。』『お願いというよりやってよって押しつけてる感じがする』」
俺「最近の書き込みだ。見つけたのはたまたまだけど、正直他のスクールアイドルにとって俺はこう見られてるんだろうなって」
栞子「…」
俺「けど今の俺にはこうするしかできない。どんなにスクールアイドルのことをわかったつもりでも俺はスクールアイドルじゃない。だからスクールアイドルの気持ちをわかってないって言われたら何も言い返せないよな。けど俺にできることはこれしかないんだ。みんなを夢の舞台に立たせるには俺にできることをしないと。」
栞子「1人で1000人集めることがあなたのできることですか?」
俺「これはできるかじゃなくてやらなきゃいけないことだから」
栞子「そうですか…」
俺「それじゃあ俺次の用事あるから」
栞子「…」
俺は食堂を後にした。
歩夢「あれ?栞子ちゃん?こんなところで何してるの?」
栞子「上原さん…。そうですね、たった今まであなた方の部長とお話をしていました」
歩夢「あの子と!?なんて言ってた?最近部活にも全然来なくなっちゃって」
栞子「やはりそうですか」
歩夢「ねぇ、教えてあの子はなんて言ってたの?」
栞子「そうですね、彼は1人でボランティアを1000人集めるつもりです」
歩夢「やっぱりそうなんだ…」
栞子「知っていたのですか?」
歩夢「うん、多分そうなんじゃないかって…」
栞子「知っていてどうして助けようとしないのですか?」
歩夢「え?」
栞子「仲間が困ってるなら助ける。あなたたちならそういうと思っていました。」
歩夢「うん…もちろん助けたいよ。けど彼がそうさせてくれないっていうか…そういう雰囲気じゃないというか」
栞子「雰囲気ですか…。ならあなた方の言う繋がりや絆はそこまでですね」
歩夢「え?」
栞子「私から言えることはそれだけです。失礼します」
歩夢「ま、待って!栞子ちゃんは人と人との繋がりを信じてくれるの?」
栞子「…正直最近まで全く信じていませんでした。ですが彼とのデュエルで繋がりを強さを痛感しました。それだけではありません、最近私が適性のある部活に勧めた生徒たちがこぞって元の部活に戻っています。理由を聞くと将来より今を大切にしたいと。正直最初は私も止めていました。ですが、彼女たちは元の部活の方がいきいきしているという話を聞きました。それだけじゃない、元の部活で結果を残す生徒も出てきたと聞きました。話を聞くと仲間と楽しくできるほうがいいとそう言った話を聞きました。そこまで言われるとあなた方のいう繋がりを信じざるを得ないと考えるようになりました。」
歩夢「そうだったんだ」
栞子「ですが」
歩夢「うん…」
栞子「今のあなた方の話を聞いてやはりスクールアイドルは無意味なものなんだと再認識しました」
歩夢「え?」
栞子「たしかに人と人との繋がりの強さはあるかもしれない、ですが肝心な時になんの手も差し伸べない同好会に真の絆があるのでしょうか?」
歩夢「それは…」
栞子「少なくともそれが改善されない以上、私がスクールアイドルが無意味という考え方は変わりません」
歩夢「…そうだよね…栞子ちゃんの言う通りだよ。私って…いっつもそうなの…彼が苦しんでる時にいつも何もできなくて…本当ダメだ…」
栞子「上原さん…」
歩夢「ありがとう栞子ちゃん、おかけでやるべきことがわかったよ」
栞子「え?私は何も…」
歩夢「ううん、そんなことない。栞子は的確に私たちのダメなところを教えてくれた。やっぱり栞子ちゃんはちゃんとみんなのことを見てくれてるね」
栞子「それは…生徒会長として当然のことをしたまでです」
歩夢「えへへ、そっか。ねぇそうしたら生徒会長の栞子ちゃんにもう一つお願いがあるんだけど」
栞子「お願いですか?」
歩夢「うん…それはね…」
〜週末、ショッピングモールにて〜
栞子「はぁ、なぜこんなところに来てしまったのか…」
歩夢「あ、栞子ちゃーん、待ったー?」
栞子「いいえ」
歩夢「ごめんね、今日はお買い物付き合ってもらって」
栞子「生徒会長として適切な物を選んで欲しいと言われたので」
歩夢「でもまさかほんとに来てくれるとは思わなかった」
栞子「…それで今日は何を買うのですか?」
歩夢「うん、今日はねあの子へのプレゼントを買おうと思うの」
栞子「彼への?」
歩夢「うん…私あの子に何もしてあげれてないから。だからまずはねあの子への日々の感謝の思いでプレゼントをあげようと思うの。そうしたらあの子がいろいろ話してくれるきっかけになればいいなって」
栞子「なるほど、そういうことですか」
歩夢「うん、栞子ちゃんは彼にどんな物をあげればいいと思う?」
栞子「そうですね、まず彼は何か好きなものはありますか?デュエル以外で」
歩夢「あはは、デュエル以外か〜。うーんそうだなー、あ、コーヒーが好きかな」
栞子「でしたらマグカップなどはどうでしょう?」
歩夢「あ、それいいね!早速見に行こう!」
〜数分後〜
歩夢「うーん、なかなかいいのないなぁ」
栞子「ひとまずマグカップはやめて他のものにしますか。」
歩夢「他は何かなー」
栞子「例えば彼が日頃よく使うものとかはどうでしょう?」
歩夢「よく使うものか〜、あっ!」
栞子「ありましたか?」
歩夢「うん!あの子ね、いつも部活の記録をノートに書いてるの。だからノートとかどうかな?裏表紙にみんなのメッセージを書いたりして?」
栞子「いいんじゃないでしょうか」
歩夢「そうだよね、ありがとう。ふふふ」
栞子「私、何かおかしなこと言いましたでしょうか?」
歩夢「ううん、でもね、栞子ちゃんは私たち同好会を廃部にしようとしているのに私ってばつい栞子ちゃんに同好会の活動ノートはどうか?って聞いたのが自分でもおかしくて」
栞子「それとこれとは別の話です」
歩夢「前の栞子ちゃんじゃ考えられなかったよね」
栞子「え?」
歩夢「前だったらスクールアイドルなんて無意味なんだから活動記録を書くノートなんて必要ないって言いそうだったのに。やっぱり栞子ちゃんは私たちの敵なんかじゃない」
栞子「上原さん、あなたは彼と似て本当にお人好しですね」
歩夢「うん、あの子のがうつちゃったかな」
栞子「それでどれにするんです?」
歩夢「そうだな〜、この紺色のノートなんてあの子っぽくていいかな」
栞子「デコード・トーカーの色ですね」
歩夢「言われてみればそうだね。うん、よしこれにしよう」
〜数時間後〜
歩夢「栞子ちゃん、今日はありがとう」
栞子「いえ、生徒会長として当然のことをしたまでです」
歩夢「それでもありがとう。正直栞子ちゃんがいなかったら私たちとあの子はそのままだったと思う。だから本当にありがとう」
栞子「…」
歩夢「それじゃあ私行くね」
栞子「えぇ、お気をつけて」
歩夢は帰路につく。
栞子「どうしてこんなことを。スクールアイドルは無意味なもののはずなのに…」
一方…
俺「…」
穂乃果「あれ?虹ヶ咲の部長?」
千歌「本当だ!おーい!」
俺「穂乃果に千歌、どうしたんだよ?」
穂乃果「実は私たちもスクールアイドルフェスティバルの企画をいろいろと考えてたんだ」
千歌「うん、案がいっぱい出てきちゃって大変だよ」
俺「そうか…」
穂乃果「あなたは何をしてたの?」
俺「え?俺か…。ボランティアに参加してくれる人たちを集めてたんだ」
穂乃果「そうだったんだ!それなら実は穂乃果の知り合いや声をかけた人たちが参加してくれるって!」
千歌「うん、私の友達説明会には行けなかったけど参加したいって!」
俺「本当か?」
穂乃果「うん、スクールアイドルフェスティバルのことを説明したら是非参加させてほしいって」
千歌「私も」
俺「そうか…やっぱり2人のところには集まるんだな…」
穂乃果「どうしかたの?」
俺「いや、2人はやっぱりすごいってことだよ」
千歌「そんなことないよ、あなただって本当にすごいよ」
俺「それはどうかな…。俺はスクールアイドルじゃないからスクールアイドルの気持ちはわからない。だから頼んでも協力してくれない。結局俺がやってるのはみんなを夢の舞台に立たせるためにボランティアをやってほしいって頼んでるただのエゴなんだ」
穂乃果「そうかな?」
千歌「あなたのみんなのためにスクールアイドルフェスティバルを開催したいって気持ちはすごく大切だと思う」
俺「けど」
穂乃果「とにかく何かあったら穂乃果たちに相談してよ!」
千歌「そうそう!私たち力になるからさ!」
俺「ありがとう…2人とも。あ、俺行くわ次の約束があるんだ」
穂乃果「うん!がんばってね!」
俺「(やっぱり2人はすごい。やっぱり俺じゃなくてみんなに任せた方がいいのか。今の俺に出来ることってなんだろう…。思い返してみると大抵のことはデュエルで解決できた…けどこの問題は解決できない。デュエルがない俺なんて何もできないんだ…。そうだ、デュエルを教えられてもダンスも歌も教えることはできない。できるのはみんなの手伝いだけ。それって俺じゃなくてもできるじゃないか…。スクールアイドルフェスティバルに俺の力は必要ないのかもしれない…)」
〜数日後〜
俺は部室にいた。
とりあえず今日もボランティアに協力してくれるかのアポをとっている。
アポを取ってしまった以上はしっかりやろう。
けど、それ以上は…
すると部室のドアが開く
俺「あ」
歩夢「あ、部室に来てたんだ」
俺「あぁ」
歩夢「最近、全然来なかったから…」
俺「…そうだな…」
歩夢「ね、ねぇ」
俺「ごめん、俺次の約束あるから行くわ」
歩夢「あ、ちょっと待って」
俺「なに」
歩夢「こ、これ」
俺「これは…」
歩夢「いつもね、あなたにいろいろとしてもらってるから…その私たちの感謝の気持ちを込めて…その…受け取って」
俺「ノート…。けど今の俺にこれをもらう資格があるのかな」
歩夢「え?」
俺「俺はみんなに何一つしてあげれてない」
歩夢「そんなことないよ!あなたはいつだって私たちを導いてくれたよ。だから資格がないかんて言わないでよ…」
俺「…。とりあえず受け取っておくよ」
歩夢「うん。」
俺「それじゃあ」
歩夢「うん…」
俺は部室を後にした。
栞子「行ってしまいましたね」
歩夢「うん…」
栞子「…」
〜数時間後、屋上〜
俺「結局、今日もダメか。もういっそのこと、穂乃果や千歌に任せて俺は潔く身を引いたほうが良さそうだな」
そこへ
栞子「まさかあなたにそんな弱点があったとは思いませんでした」
俺「三船さん?それに弱点ってどういうことだよ」
栞子「はっきり申し上げます。あなたの弱点、それはなんでも1人で抱え込んで誰にも頼ろうとしないことです」
俺「そんなこと…あるかも…」
栞子「えぇ、そうです」
俺「けど、今まで俺はみんなを頼っていろいろやってもらってきたし…」
栞子「それは本当に頼っていると言えるのでしょうか?」
俺「どういうことだ?」
栞子「あなたがやっていたのはみなさんができるとわかっている仕事を頼んでいただけではないでしょうか?頼るというのは何も仕事を頼むことだけではないと思います」
俺「ほかに何があるんだよ」
栞子「…そうですね、あなた方のように言うなら心でしょうか?」
俺「心?」
栞子「えぇ、辛い時、あなたは仲間に辛いと言ってきましたか?なんでも1人で抱え込んで来ませんでしたか?たしかにあなたは優秀な力を持っています。ですがなんでも1人で解決できると思ったらそれはあなたの傲慢です。頼るというのは辛い時に仲間に辛いと言って助けを求めることではないでしょうか?あなたは誰かに頼ることで誰かに迷惑をかけてしまう、そう思っていませんか?」
俺「それは…」
栞子「きっとそうだと思います。ですがあなたの場合、誰にも頼らないことによって周りを心配させ、かえって迷惑をかけていると考えたことはないのですか?」
俺「ない…」
栞子「やはり…。同好会の皆さんは少なくともあなたに頼って欲しいと思っています。特に上原さんはそれが顕著です。幼なじみなのに頼ってもらえず自分の心配ばかりされてあなたの力になれない。あなたの気遣いが彼女を逆に傷つけているように思えます」
俺「俺が歩夢やみんなを…」
栞子「私はあなたとのデュエルで少しは人との繋がりを学んだつもりでしたが、どうやらそれも筋違いのようですね。あなたは誰を傷つけることを極端に恐れている。だからあなたは誰にも頼ろうとしない。ですがこれだけは言えます。全員が全員そう思っているわけではないのです。どんなに大変なことでもあなたに頼って欲しい人たちがいる。」
俺「俺に頼って欲しい人たちが…」
栞子「それとあなたはデュエルで解決できないことには極端に弱い。たしかにこの現代でデュエルモンスターズは私の生活様式の1つになりました。だから大抵のことをデュエルで解決できたから気づかなかったかもしれないでしょう。ですが、デュエルだけが人生の全てではありません。そんな時こそ仲間の手を借りるべきなのではないでしょうか?」
俺「…」
栞子「私から言えることはそれだけです。それでは失礼します。」
そう言うと栞子は去っていった。
彼女の言う通りだ。
俺は誰かに頼ることでその人に迷惑をかけるんじゃないかって、それでもしかしたらその人を傷つけてしまうんじゃないかって思ってた。
けど俺に頼って欲しい人たちがいる。
みんなは本当にそう思ってるんだろうか。
俺はカバンから歩夢からもらったノートを取り出した。
俺「これって確かみんなからの感謝って言ってたよな…」
俺はノートの袋を開ける。
そしてノートを開く。
裏表紙を見ると俺の目から一筋の涙が溢れ落ちた。
同好会のみんなから感謝のことば書き綴ってあった。
俺はみんなに必要とされていることを再認識した。
なのに俺はみんなの助けも借りようとせずに全部自分でやろうとしていた。
みんなが俺を必要としてくれたのにどうしては俺はみんなを必要としなかったんだ。
こんなにかけがえなのない仲間を…。
〜廊下〜
歩夢「あ、栞子ちゃん。ねぇ、あの子見なかった?」
栞子「えぇ、彼なら屋上にいますよ」
歩夢「本当?でも…」
栞子「行かないのですか?」
歩夢「ううん、さっきの感じだと今言っても何も話してくれなそうで…」
栞子「はぁ。上原さん、あなたの適性を1つ教えてあげましょう」
歩夢「適性?何?」
栞子「それは」
歩夢「それは…」
栞子「今の彼のそばにいる適性です」
歩夢「今のあの子のそばにいる適性…?」
栞子「上原さん、あなたは彼に必要とされたいと思っていませんか?」
歩夢「うん…思ってるよ」
栞子「そもそもその考え方が間違ってます」
歩夢「え?」
栞子「あなたが彼に必要とされたいと思っていようがいまいが、彼にとってあなたのような存在は必要なのです。」
歩夢「私が必要…?」
栞子「えぇ、彼は誰かに悩みを打ち明けるのが極端に苦手です。ですからあなたはようにいつでも味方でいてあげれて何も言わなくてもただ側にいてあげれて、彼の苦しみを受け止めれるような存在が彼には必要なのです。」
歩夢「そんな私…そんなこと…」
栞子「上原さん、あなたには自覚がないでしょうが、あなたはそれを無意識でやっているんです。彼だけじゃないあなたという存在が同好会に調和をもたらしているのです。」
歩夢「私が…」
栞子「ですから上原さん、あなたは彼の側にいてあげてください。彼が何話さなくてもただ側にいてあげるだけでいいんです。そうすればきっと彼も自ずと口を開いてくれるのではないでしょうか」
歩夢「そう…かな…」
栞子「私から言えることはそれだけです。それでは失礼します」
歩夢「あ、待って栞子ちゃん」
栞子「なんです」
歩夢「その…ありがとう」
栞子「生徒会長として当然のことをしたまでです」
歩夢「そっか…でもありがとう」
栞子「私と話していないで早く行ってあげたらどうです?」
歩夢「うん、そうだね」
歩夢は屋上に上がっていった。
栞子「はぁ…私…何を言ってるんだろう…。けれどこういう適性を見つけるのも悪くない…かな」
〜屋上〜
歩夢「あ、やっぱりここだったんだ」
俺「歩夢?」
歩夢「はい、激甘コーヒー」
俺「え?」
歩夢「あなたって落ち込んだ時、いつもこれ飲んでるなって思って」
俺「ありがとう…」
歩夢「…」
俺「…」
歩夢「話づらいよね、いろいろと」
俺「え?」
歩夢「でもいいの。話したくないならそれで。誰にでもそういう時ってあるから…」
俺「…」
歩夢「でもね、話さなくてもいいから1つだけお願い聞いてもらってもいい?」
俺「何?」
歩夢「あなたの側にいさせて欲しいの。何も言わなくても何も話さなくてもいいから。ただ側にいさせて欲しいの」
俺「……。わかった」
歩夢「ありがとう」
しばらく沈黙が続いた。
けれど歩夢は気まずそうな顔1つせずにいた。
多分、歩夢には俺の苦しみも全部伝わってるんだと思った。
けれど歩夢は何も言わなかった。
ただ側にいてくれた。
俺「はぁ…」
歩夢「どうかした?」
俺「よし、これからさ今の気持ち思いっきり叫んでもいいかな?」
歩夢「うん、いいよ」
俺「よし、それじゃあ…」
俺「なんでみんな協力してくれないんだよー!最初はやってくれるって言ったじゃんかよー!もうどうしたらいいかわかんねぇーよー!」
歩夢「ふふふ、すっきりした?」
俺「あぁ、だいぶ」
歩夢「よかった、あなたの本心が聞けて」
俺「あぁ…」
歩夢「ねぇ、どうしたらいいかわからないならみんなに聞いてみたらどうかな?みんなに聞いてみればきっといい案が出てくると思うの。1人でやるよりみんなで協力した方がいいんじゃないかな。それにね、みんなあなたに頼って欲しいって思ってるの。もちろんあなたがみんなを信頼してることは知ってるよ、でももっともっと頼って欲しい、辛い時は辛いって言って欲しいの。だって私たち大切な同好会の仲間でしょ?」
俺「あぁ、そうだな。それ三船さんにそっくりそのまま言われたよ」
歩夢「ふふ、やっぱりね。三船さんやっぱり人を見る力があるんだね」
俺「あぁ、そうだな」
歩夢「それでこれからどうする?」
俺「もちろん、部室に戻るよ。そしてみんなに色々と案を出してもらう」
歩夢「うん、それがいいよ。みんなあなたを待ってるよ」
俺「あぁ、ありがとう歩夢」
歩夢「ううん、お礼なら栞子ちゃんに言って」
俺「栞子ちゃん…前から思ってたんだけど、歩夢と三船さんってそういう仲なの?」
歩夢「ううん、私が勝手に名前で呼んでるだけ」
俺「そっか、いずれにしろお礼を言わないとな」
歩夢「うん」
俺「まずは部室に戻ろう」
歩夢「うん、行こう」
〜部室〜
かすみ「先輩今日も来ませんね…」
果林「歩夢も来てないわね…」
俺は部室のドアを開ける
かすみ「せ、先輩!?」
果林「歩夢も…」
俺「みんな…。ただいま…」
かすみ「もうーおかえりなさーい!どこに行ってたんですかー!?」
俺「ちょっといろいろと」
彼方「どうせ部長のことだから1人で1000人集めようとしてたんでしょ〜」
俺「ま、まぁ…」
愛「もういくらぶちょーでもそんなことできないっしょ」
果林「それで尻尾巻いて助けを求めにきたってわけね」
俺「ま、まぁ…」
果林「ふふふ」
せつ菜「部長、おかえりなさい。みんなあなたが帰ってくるのを待っていたんですよ」
エマ「私たちを頼ってくれることもね」
璃奈「璃奈ちゃんボード むん」
歩夢「ねぇ、早速ボランティアを集める方法をみんなで考えようよ」
愛「そうだね、愛さんたち10人ならきっとできる」
せつ菜「そういえば穂乃果さんたちから連絡があったんです。ボランティアの人数、徐々に集まり出してると」
俺「本当か?やっぱり穂乃果たちは違うな」
歩夢「そうかな?」
俺「え?」
歩夢「穂乃果ちゃんや千歌ちゃんたちも元は普通の高校生だった。それは私たちも変わらないよ」
俺「けど穂乃果たちはどんどんボランティアを集めて」
歩夢「多分だけど、あなただからというより方法が違ったんじゃないかな?」
俺「方法?」
愛「なるほど方法かぁ〜」
果林「部長、あなたお願いする時、ただがむしゃらにお願いしなかった?」
俺「うっ…たしかにしてかも…」
果林「やっぱりね」
彼方「たしかにただお願いだけされても、ちょっとね〜」
しずく「ボランティアに参加したくなる誘い方ですか」
璃奈「璃奈ちゃんボード むむむ」
エマ「参加したくなる誘い方…そのボランティアが楽しそうだったら参加したくなるよね」
彼方「うん、それだ〜」
せつ菜「誘うこちらがワクワクしていてれば、たしかに参加したくなるかもしれませんね!」
俺「誘うこっちがワクワクか…。たしかにこっちがどんなにスクールアイドルフェスティバルの楽しさを伝えても切羽詰まってたらその魅力は伝わらないか…」
歩夢「前に言ってた楽しいが伝染するだね!」
俺「楽しいが伝染する…。そうか俺に足りなかったのはそれだ…。自分のことで手一杯でボランティアの人たちのことを何一つ考えてなかった…。これはみんながいなかったらきっと気付かなかった」
彼方「そうだよ〜だから彼方ちゃんたちにちゃんと感謝したまえ〜」
俺「あぁ、ありがとうみんな。」
せつ菜「気にしないでください。私たちはあなたが頼ってくれたことが何より嬉しいですから!」
かすみ「そうですよ〜先輩は〜もっともっとかすみんを頼りにしなきゃだめですよ〜」
俺「…」
かすみ「あれ?かすみんなんか悪いこといっちゃいました?」
俺「いや…そうじゃないんだ。どうして今までみんなを頼らなかったのかを考えてて。多分俺怖かったんだと思う。ハノイの事件で傷ついた俺は誰にも傷ついて欲しくない、自分と同じ思いをしてほしくない、だから俺の悩みを打ち明けたらその人を悩ませて傷つけるんじゃないかって。リボルバーとの戦いを終えても心の奥どこかで無意識に思ってて。だから誰にも悩みを相談してこなかった…。そう幼なじみの歩夢は同じを思いをしてきた。あの絶望を知ってるからこそ歩夢にさえ言えなかったんだ」
せつ菜「部長…」
俺「けど実際はそうじゃなかった。悩みを打ち明けてくれないことでみんなを逆に困られせた。そして悩みを打ち明けたらこんなにもみんなが喜んでくれた。だから俺はこれからはもっともっとみんなを頼るよ!」
歩夢「うん!そうだよ!」
かすみ「はい!もっともっと頼ってください!かすみんが受け止めてあげます!」
果林「そうね、部長には散々相談乗ってもらったし少しはこっちが乗ってあげないとね」
彼方「彼方ちゃんもどーんと構えてるよ〜」
しずく「私も微力ながらお手伝いさせてください!」
璃奈「私も…璃奈ちゃんボード ウェルカム!」
エマ「私もなんでも聞いてあげるよ」
愛「あ、愛さんもー!同じ学年なんだしいっぱい頼ってよねー!」
俺「みんな…わかった。これからはどんどん頼るから。とんでもない案件でもどんどん頼っていくからよろしく!」
歩夢「ふふふ、どんなことでも私は待ってるよ」
俺たちはボランティアの人数を集める手段を考えた。
そしてちょうど同時期に虹ヶ咲の学校説明会が開催されることを知った。
虹ヶ咲の学校説明会はネットでライブ中継される。
俺たちはこれをチャンスと捉え、学校のPRと同時にスクールアイドルフェスティバルのPRを同時にすることにした。
しかし問題は生徒会長 三船栞子が認めてくれるかどうか。
たしかに学校の説明会で仕組み上、各部活は学校の講堂を紹介にしようできる。
しかしスクールアイドルを目の敵にしていた三船栞子がそれを認めるかどうか。
けれども俺と歩夢はそれほど心配していなかった。
あのとき、俺と歩夢を引き合わせてくれたのはそう彼女だった。
俺へのノートを歩夢と選んでくれたのも彼女だった。
それにあのとき、彼女は「人との繋がりを少しは信じ始めた」と言っていた。
だから今の彼女ならきっと…。
俺たちは三船栞子のもとへ向かった。
〜生徒会室〜
歩夢「失礼します」
栞子「どうぞ。あなたたち…」
俺「三船さん、今日は君にまずはお礼を言いにきたんだ」
栞子「お礼?」
俺「あぁ、あの時、君は俺の欠点を教えてくれた。そして歩夢と俺を引き合わせてくれた。そして俺がまた同好会に戻るきっかけを作ってくれた。それだけじゃない。君はこのノート、歩夢と一緒に選んでくれたんだろ?」
栞子「それは…生徒会長として当然のことをしたまでです」
俺「それでも。三船さん、本当にありがとう。」
栞子「…。」
歩夢「栞子ちゃん、私からも本当にありがとう。あなたがいなかったら今頃きっと同好会はバラバラだった。やっぱり栞子ちゃんはみんなをちゃんと見てくれるんだね」
栞子「…。そ、それで今日は私に礼を言いにきただけのではないのでしょう」
俺「あぁ」
歩夢「あのね、栞子ちゃん。今度、虹ヶ咲の学校説明会があるでしょ。それでね私たち同好会がPRするとき、講堂を使うのを許して欲しいの」
栞子「何を言い出すかと言えばそんなことですか」
歩夢「やっぱりダメかな…?」
栞子「上原さん、学校説明会の部活のPRの時のルールをご存知でしょうか?」
歩夢「えっと…たしか…全部活は講堂を同じ時間使用することができるじゃなかったっけ…?」
栞子「えぇ、その通りです」
歩夢「えっと…」
栞子「つまりわざわざ私の許可を取る必要はありません」
俺「それって」
歩夢「講堂を使っていいってこと?」
栞子「ですから私の許可は必要ないと。使いたければ使えばいい。それがルールです」
俺「三船さん…」
歩夢「ありがとう!栞子ちゃん!」
栞子「お、お礼を言われる理由がないのですが…」
歩夢「ねぇ、栞子ちゃん。この子から聞いたんだけど、栞子ちゃん前よりスクールアイドルを嫌ってないんじゃないかな?」
栞子「そ、そんなこと…。私はただ人の繋がりを信じ始めたと言っただけです。」
歩夢「そっか、ねぇ、栞子ちゃん」
栞子「何でしょう?」
歩夢「よかったら私たちの練習見てくれない?」
栞子「あなた方の練習をですか?」
俺「そうか、それはいいな」
歩夢「うん、やっぱり実際に目で見たほうがスクールアイドルが無意味なものがどうかわかると思うの。だから私たちの練習を見てみてよ。それから無意味なものかどうか判断してくれればいいから」
栞子「わかりました…。ですが無意味なものと判断したとき、私は容赦はしません」
俺「あぁ、わかってる」
栞子「わかりました。では早速いきましょう」
〜練習場〜
かすみ「げげげ!?なんで三船栞子が!?」
俺「やっぱりスクールアイドルを無意味なものかどうか実際に見てもらったほうがいいかなって思って」
果林「でもさすがに急じゃ…」
愛「でもいいんじゃない!?ここで愛さんたちが頑張ればしおってぃーに同好会を認めてもらえるチャンスだよ!」
栞子「しおってぃー とは私のことでしょうか?」
愛「もち!あれ?嫌だった?」
栞子「いえ、別にどう呼ばれようと気にしません」
かすみ「ならかすみんはずーっと塩対応だからしお子って呼ぶね」
栞子「構いません。ですがみなさんに1つ質問があります」
せつ菜「なんでしょう?」
栞子「なぜ私まで練習着に着替える必要があるでしょうか?」
果林「なるほど…そういうことね、やるわね部長、歩夢」
歩夢「ふふふ」
栞子「どういうことです?」
俺「三船さん、もしかして側から見てるだけでスクールアイドルが無意味かどうか判断しようとした?」
栞子「え?」
俺「俺が言えることじゃないけど、スクールアイドルを舐めてもらっちゃ困るな〜。側から見ただけで無意味かどうか判断できるとは思えないな〜。ましてや廃部にしようとしているなら一緒になって同じ景色を見てないのに廃部にしようとしてるなんて、生徒会長としてどうなのかな〜?少なくともせつ菜が廃部にしようとした時はスクールアイドルをやってたから説得力があったけど側から見ただけで判断されちゃ説得力がないな〜」
栞子「な…!?」
俺「あれ?もしかして図星だった?」
栞子「…わ、わかりました!そこまで言うなら私も練習に参加させていただきます!ですがそれで本当に必要ないと判断したときは覚悟しておいてください」
俺「あぁ、わかっている。そこまでやってダメだったらそれまでさ。いいよね?みんなそれで」
愛「もち!愛さん燃えてきたー!」
璃奈「璃奈ちゃんボード やったるでー!」
かすみ「かすみんのすごいところしお子に思い知らせてあげる!」
栞子「(皆さん、どうして…。同好会のピンチなのに…)」
そして練習に参加する栞子
栞子「(はぁはぁ、皆さんすごいこれだけダンスをしながら歌って息を切らしていない。それだけじゃない歌っている時はポップな歌のときは常に笑顔…)」
果林「部長も考えたわね、栞子ちゃんを練習に参加させるなんて」
俺「あぁ。けどこれもみんなからヒントを得たんだ」
エマ「そうなの?」
俺「楽しいは伝染するだよ」
彼方「なるほど〜栞子ちゃんにスクールアイドルが楽しいってわかってもらうんだね〜」
俺「そういうこと」
〜1時間後〜
栞子「はぁはぁ」
歩夢「栞子ちゃん、お疲れ様。はい、タオル」
栞子「す、すみません…」
俺「スポーツドリンクもあるよ」
栞子「あ、ありがとうございます」
歩夢「それでどうだった?」
栞子「まだ判断材料が少ないので判断はできません…」
歩夢「そっか、それなら判断できるまで好きなだけいていいよ」
俺「そうだな、説明会まではまだ日にちはある、しっかり考えてもらわないとな」
栞子「えぇ…」
〜15分後〜
かすみ「しお子ー、次はデュエルの練習だよー」
栞子「あれだけ練習して次はデュエルの練習をするのですか?」
かすみ「あったりまえじゃん!あれ〜もしかしてしお子バテてる〜?あれだけ豪語してたのにまさか…」
栞子「そんなことありません!いいでしょう!」
愛「りなりー、今のはさっきにこっちを発動した方が良かったかも」
璃奈「璃奈ちゃんボード ガッテン承知!」
果林「さぁせつ菜、今日も負けないわよ!」
せつ菜「えぇ、私もです!スクールアイドルCSの借り、しっかりと返させていただきます!」
俺「デコード・トーカー・エクステンドはリンク先のモンスターがバトルフェイズ中に戦闘破壊された時、もう一度攻撃できる!バトルだ!デコード・トーカー・エクステンドで魔界劇団ーワイルド・ホープを攻撃!」
しずく「きゃあ」
しずくライフ→0
俺「惜しかったなしずく、倒せるときに時には勇気を持って仕掛けることも大事だよ」
しずく「えぇ、さすがは先輩です」
栞子「皆さん、こんなにも懸命に…」
歩夢「ふふふ、驚いた?」
栞子「い、いえ!こ、これくらいはやっていただかないと…。けど…」
歩夢「けど…」
栞子「皆さんがどうしてスクールアイドルCSで結果を残せたか少しわかった気がします。それにあなた方の部長、私はあの人に勝とうとしていた。しかしそれは時期尚早であったことを今痛感しています」
歩夢「そうかな?栞子ちゃんもいいデュエルしてたよ。でもね、あの子はね、絶対に負けられないデュエルの時、いつも勝ってくれる。みんなの期待を一身に背負って。それでね、そんなあの子が私たちを頼ってくれるようになったのがすごく嬉しいの」
栞子「そうですか…」
歩夢「これも栞子ちゃんのおかげで」
栞子「だから私は何も…」
歩夢「ふふふ」
そして翌日、朝練前…
俺「あれ?」
歩夢「どうしたの?」
俺「鍵が開いてる…」
歩夢「昨日閉め忘れちゃったとか?」
俺「いや、ちゃんと閉めたと思うけど。それにその場合は守衛さんが閉めてくれるはず…」
歩夢「それじゃあ誰か来てるのかな」
俺「もしかして…」
俺は部室のドアを開ける。
栞子「おはようございます」
歩夢「し、栞子ちゃん?どうしたの?」
栞子「朝練に来ただけですが」
俺「にしても俺らより早いって」
栞子「当然です。生徒会長ですから」
歩夢「それ…デッキ調整したてたの?」
栞子「え?あ、いや…えぇ…まぁ…」
歩夢「ふふふ、栞子ちゃんやる気満々だね」
栞子「わ、私がデッキを調整しようが私の勝手です」
歩夢「ふふ、そうだね」
愛「ちぃーす!おっはよー!あれ?しおってぃー早いねー」
栞子「おはようございます」
璃奈「栞子さん、おはよう。デッキいじってたんだ 璃奈ちゃんボード まじまじ」
栞子「そ、そんなまじまじと見ないでください!」
しずく「皆さんおはようございます。あら栞子さん早いですね。あ、デッキ調整されてたのですね」
栞子「も、もうなんなんですか!」
〜朝練中〜
歩夢「栞子ちゃんまさか1番早くくるなんてね」
俺「あぁ、それに今じゃ1番練習にのめり込んでるな」
歩夢「栞子ちゃん練習に誘ってよかったね」
俺「あぁ」
〜放課後〜
せつ菜「栞子さん、生徒会の仕事が溜まっていませんか?私たちが手伝います」
栞子「い、いえ、結構です。私1人でできますので」
せつ菜「そうおっしゃらずに、練習しているとつい仕事が溜まってしまいますよね。わかりますよ、その気持ち」
栞子「で、ですからそんなことないと…」
せつ菜「さぁ、早速生徒会室へ行きましょう!」
栞子「ちょ、ちょっと…」
〜部室〜
せつ菜「皆さん、お疲れ様です!」
愛「あ、せっつーにしおってぃー、おっつー」
しずく「早かったですね」
せつ菜「はい!2人でもやれば早さも2倍です!」
栞子「さ、さすがは元生徒会長ですね…」
せつ菜「はい、少しはお役に立てたでしょうか」
栞子「え、えぇ」
せつ菜「よかった〜」
果林「さぁみんな揃ったわね、早速練習よ」
かすみ「ふふふ、しお子、かすみんについてこれるかな?」
栞子「あ、当たり前です!」
〜練習後〜
栞子「今日はこれで練習は終わりなのですか?」
歩夢「うん、これから説明会のミーティングをするの。よかったら栞子ちゃんも聞いていって」
栞子「わかりました」
俺「それで前にも話したけど同好会の説明には持ち時間があるから1人1人ライブするっていうのができないんだ」
果林「時間的にできるのは1人だけね」
エマ「全員で歌うとなるとそのあとの準備で時間を取られちゃうもんね」
しずく「やはりここは歌う方、準備をする方、発表される方とわけた方が良さそうですね」
栞子「(意外とちゃんと考えてるんだ)」
愛「で、問題は誰が歌うかだけど」
かすみ「それならーここに適役がいるじゃないですかー」
璃奈「うーん」
彼方「うーん」
エマ「うーん」
かすみ「ちょっとそんなに悩まないでください!」
歩夢「あ、あの!」
果林「どうしたの歩夢?」
歩夢「そのライブ私に歌わせてくれないかな?」
せつ菜「歩夢さん…」
歩夢「その私じゃダメかもしれないけど、なんていうかこのライブはどうしても歌いたいの。普通の女の子だって私がスクールアイドルを始めたらここまで変われるんだって見てる人たちに知って欲しいの」
俺「歩夢…」
せつ菜「そうですね、やはりここは歩夢さんが適任だと思います」
果林「それに歩夢には部長を戻してくれた借りがあるしね」
エマ「うん、歩夢ちゃんならきっと成功するよ」
彼方「うんうん」
かすみ「くぅーかすみんの華麗な舞台がー」
歩夢「ということでいいかな?」
俺「あぁ、もちろんだ。頼んだよ歩夢」
歩夢「うん!」
〜練習後〜
栞子「まだ残っていたのですか上原さん」
歩夢「あ、栞子ちゃん。栞子ちゃんこそ」
栞子「わ、私は生徒会の仕事をしていただけです」
歩夢「そうなんだ、お疲れ様」
栞子「えぇ、上原さんも」
歩夢「ねぇ、今の栞子ちゃんから見て同好会はどう見える?」
栞子「え?」
歩夢「だって栞子ちゃん、誰よりも熱心に練習してるし、デュエルのことだってあの子にすごい聞いたりして偉いなって思って」
栞子「そ、そんなこと」
歩夢「ねぇ、栞子ちゃん、今もスクールアイドルが無意味な物だと思う?」
栞子「え?それは…」
歩夢「あ、ごめん、まだ判断しきれてなかったよね。でもね、練習をしてる時の栞子ちゃんすっごく楽しそうだったよ」
栞子「え、私が…」
歩夢「うん!だからね栞子ちゃんを練習に誘ってよかったって思うの」
栞子「…」
歩夢「たしかにね、スクールアイドルって誤解されやすいと思うの。周りからみたら遊んでるんじゃないかって。でもね実際やってみてわかったの。スクールアイドルは限られた時間と場所でその中で精一杯1人1人が頑張ってる。そして自分の目指すべきを道を必死に追いかけてる。たしかに将来何の役に立つかって言われたらすぐに出てこないけど、この体験はきっと役に立つって信じてる。」
栞子「そうですか」
歩夢「だから学校説明会もスクールアイドルフェスティバルも絶対に成功させる。」
栞子「えぇ。ですが、さすがに遅くまで練習し過ぎです。」
歩夢「あ、ちょっと待って。あと1回だけ、お願い!ね?」
栞子「全く、あと1回だけですからね」
歩夢「ありがとう、栞子ちゃん」
数分後…
歩夢「よし、今日はこれまで。栞子ちゃん、付き合ってくれてありがとう」
栞子「ここで怪我をされた私の監督責任が問われますから」
歩夢「ふふふ」
俺「おっ、終わったか」
栞子「あなたまで…残っていたのですか」
俺「ま、ちょっといろいろとね。イベント前は部長は忙しいんだよ」
栞子「全く、あなたが上原さんを止めないから」
俺「止めたところで歩夢はやめたか?」
栞子「それは…」
俺「あと一回って言われなかった」
栞子「えぇ、まぁ…」
俺「やっぱりな」
栞子「まさかそれを見越して…」
俺「まぁな」
栞子「あなたたちはどうしてそういうところは通じ合っているのにあの時は話し合おうとしなかったのですか?」
歩夢「それは…」
俺「2人ともいろいろ傷ついてきたからな」
栞子「傷ついてきた…?」
俺「歩夢話してもいいかな?」
歩夢「うん、あなたがいいなら」
俺たちは栞子にハノイの事件のことを話した。
最初は半信半疑だったがやがてそれが本当のことであると栞子は信じた。
栞子「そうですか、お2人にそんなことが」
俺「だからお互いがお互いを傷つけまいとつい距離を取ってしまうことがあったんだ」
歩夢「でも栞子ちゃんのおかげでそれもなくなったけどね」
栞子「え?」
俺「俺たちはもう迷わない。互いに辛いならそれを共有するって決めたんだ。お互いに辛いなら辛いって言おうって」
栞子「そうですか」
俺「だから栞子じゃなくて三船さんには本当に感謝してるんだ」
栞子「私は当然のことをしたまでです。それと」
俺「それと?」
栞子「あなたも皆さん同様、私のことをどう呼ぼうが構いません」
俺「そうか。ならありがとう、栞子」
栞子「ど、どういたしまして」
歩夢「さ、遅くなっちゃったしもう帰ろう」
俺「そうだな、送っていくよ栞子」
栞子「い、いえ大丈夫です」
歩夢「そう言わずに、夜道は栞子ちゃんみたいなかわいい子1人じゃ危ないから」
栞子「か、かわいい」
歩夢「うん、さぁ行こ」
栞子「ちょ、ちょっと…」
こうして栞子との蟠りが解け始めた俺たち。
学校説明会は数日後。
そしてその後にはスクールアイドルフェスティバルが控えている。
だけど俺はもう迷わない。
みんなと一緒にボランティアをしてくれる人たちを集めて絶対成功させてみせる。
to be continued…