とある町の外れにあるビルの廃墟。
その中の少し広い部屋に七人の少年少女が立っていた。
少し広めに間隔を開けて立っている少年少女の足元にはチョークで書き込まれたと思われる魔法陣。そして、彼らの目の前にも似たような魔法陣が書かれていた。
「……えっと……じゃあ、ほんとに今からやるん、ですよね」
静寂を破るように、眼鏡をかけた大人しそうな少女がおずおずと声を上げる。
「当然だろ。なんのために今日まで準備したと思ってるんだ」
と、小柄で活発そうな少年がニヤリと笑いながら言った。
「あぁ、始めよう」
眼鏡をかけた長身の少年は、ズボンのポケットから折りたたまれた紙を取り出しながら言った。
「みんな呪文は覚えてるな。覚えてないやつは俺みたいに紙を取り出して読みながら詠唱しても構わないぞ」
その言葉を聞き、何人かが慌ててカバンやポケットから紙を取り出す。
「さて、じゃあ始めようか」
その言葉にみんな頷くと、一斉に口を開き、紙に書かれた呪文を唱え始める。
『来たれ、天より堕ちし者。地獄を抜け出せし者。十字架を支配する者よ。汝、夜を旅し、暗闇に住まう者。昼の敵にして、闇の朋友。暗黒の同伴者。あまたの人間に恐怖を抱かれる者よ。我、汝の望む物を与え願いを乞う者。幾千の形を持つ月の庇護の元に、我と契約を結ばん』
呪文が唱え終わる。
辺りにシーンとした静寂が訪れる。
失敗か? と何人かが不安そうな顔をした時だった。
魔法陣が赤く光り輝いた。
光はだんだんと強くなり、誰もが目を開けられないほどだった。
「うっ……」
光が収まる。
少年達はゆっくりと目を開く。
そんな目に飛び込んできたのは七体の化け物だった。
七つの魔法陣にそれぞれ一体づつ。姿形はそれぞれ大きく異なっていたが、一番人に近いモノでさえ、生えている蝙蝠のような翼や何の獣かも分からないような尻尾が人ではないと明確に主張していた。
眼鏡の少年は自分の目の前の魔法陣を見る。
そこに居たのは、まるで外国人モデルをしていそうな金髪で長身のイケメンな男性の姿をした化け物だった。恐らくこの中では最も人に近い姿だろう。
しかし、背中から生えた漆黒の翼がやはりこれも人ではないと全力で主張していた。
化け物が口を開く。
「さぁ、願いを、そしてそれに適うだけ対価を言え」
少年はゴクリと唾を飲んだ。
たった一言なのに、とてつもない恐怖に襲われる。
今目の前にしている存在が何か分かっていたら当然かもしれないが。
「……俺のこの身体を対価に払おう。いや、それは前払いとして支払い、願いが叶った暁には、この魂もやろう」
「つまりお前の全てを差し出すと」
少年は頷く。
「そうだ」
化け物はそれを聞くと満足げに邪悪な笑みを浮かべた。イケメンな顔が少し歪む。
「なるほど、なるほど。確かにお前は私を呼び、契約するに相応しい。さぁ、願いを……」
それを聞くと少年はふぅ……と息を吐いた。
「今、コントラクトナイトというゲームがある。それを──」
少年は願いを告げる。
願いを聞いた化け物はゆっくりと少年へと手を向けた。
少年少女の願いは今叶えられる。
──☆──
とある町の外れにあるビルの廃墟。
その中の少し広い部屋に七人の少年少女が倒れていた。
不審に思った親から伝えられ、警察によって発見された後も、少年少女は起きない。
その顔は、まるで心地の良い夢を見ているかのように満ち足りた気持ちよさそうな表情をしていたという。