蓮は亮太の部屋に来ていた。
亮太が病室では話せない、着いてきてくれ、というので従った結果だ。
蓮はいつも樹が連れてきた友達と遊んでいたため、こうして逆に誘われて家に上がるというのは初めてで新鮮だった。
「わざわざ部屋まで来てもらってすいません」
「別に大丈夫大丈夫。で、なんで樹が寝たきりなんだ?」
「これです」
亮太は部屋にあったパソコンを起動すると、画面を蓮に見せた。
「『
内容は、プレイヤーは騎士となり、契約した国のためにイベントやミッションをこなしていくというもの。もちろんMMOらしく強制的なものは少ないし、なんなら騎士にならないという選択肢もある。
よくありそう内容だが、ほかと差別化しているこのゲームの最大の特徴は、倒したりイベントによって様々なモンスターをアバターと契約させることができるという点だ。
モンスターと契約することにより、様々なスキルが使えるようになったり、技が出せたり、モンスター自体を一定時間NPCとして戦闘に参加させたりと様々なことができるようになる。
この組み合わせをいかに強いものを、面白いものを見つけるかでよくネットを賑やかせていた。
蓮もそんなネットで騒いでいたプレイヤーの一人で、リリース時からやっていた。
「これが、樹君が起きない原因です」
「は?」
いきなり原因といわれても意味がわからなかった。
確かに樹もプレイはしていたが、たかがパソコンのゲームである。
それにゲームのしすぎで倒れたというわけでもない。
何もない廃墟で倒れていたのだ。
一体何が原因というのか。
「意味がわからないというのも分かりますので、結論から言います。樹君達はこのゲームの中に囚われ、いや、自ら入り込んでいるんです」
「……」
蓮はただ怪訝な顔で亮太を見た。
一体何を言ってるんだと言いかける。
「ゲームの中に? 樹が?」
「はい」
「今は二十一世紀で、小説に出てくるようなVR物はまだ発展途上だし、魔法なんて存在しないと否定されてそうだけど。ゲームの中だって?」
「はい。魔法は確かに世間からは否定されましたけど、だからって存在しないわけではないですよ。樹君が現にこうなりましたし」
蓮が思わずついた皮肉混じり軽口に、亮太は乗っかる。
「なら、樹は魔法で起きないとでも?」
「まぁ……魔法といえばそうですね。ただ、魔法は魔法でもタチが悪そうなものを使ってますが」
蓮はもう訳が分からなかった。
「一から説明します。長くなりますし、とりあえずこの椅子にでも座ってください」
「あぁ……」
蓮は出された椅子に座った。
「じゃあその説明とやらを聞こうか」
「はい、話させていただきます。……そうですね、話は今年の夏休みより前、六月くらいからですかね。その時に──」
──☆──
「──というわけです」
「……つまり、この世に魔法も悪魔も天使もなんでも存在していて、樹はなんらかのきっかけがあってそれを知ったと」
「はい」
「そして樹の誘いに乗った六人は何を思ったか悪魔を召喚して契約したと」
「はい」
「亮太君は話を途中まで聞いて怖くなったから途中で降りたと」
「はい」
「で、失敗したのか成功したのか七人は儀式を行うと言った日の後日倒れたとニュースになったと」
「はい、僕は成功したと思っています」
「んで、ニュースを聞いてとりあえずお見舞いに行ったら俺に会ったと」
「はい」
「だいたいまとめるとそんな感じか?」
そう聞くと亮太は大きく頷いた。
「そうです」
蓮は未だに亮太から聞いた話が信じられなかった。
いきなり魔法や悪魔など荒唐無稽すぎる。
しかし、亮太が話ながら見せてくれたSNSの履歴などから、樹達の間で少なくともなんらかのそういった話がされていたことは認めざるを得なかった。
「そして、もしも悪魔召喚に成功していたとしたら、悪魔との契約内容がこのゲームの中に入り込むことだと?」
「はい。なので、樹君達はこのゲームの中にいると言ったんです」
「やっぱり信じられない。作り話にしか聞こえない」
そう言いながら蓮は立ち上がった。
信じられないというよりは信じたくない、という気持ちだったのかもしれない。
弟が悪魔と契約したなど信じる方が馬鹿らしい。
「信じられないけど、話してくれてありがとう。話は以上ならもう出るね」
蓮は扉へ手をかける。
何故か早くここを離れたい気持ちで一心だった。
「別に信じるも信じないも蓮さんの自由です。ただ……はい」
亮太は立ち上がり、部屋から出ようとする蓮へ机に置いてあったノートを渡した。
「ただ蓮さんに知って欲しかっただけですから。ここに話した内容、僕の知っている内容を全てまとめています。とりあえず受け取ってください」
蓮は受け取るか少し悩み、受け取った。
「ありがとう。じゃあ」
「はい、わざわざ家まで呼んじゃってすいません。今度は一緒にゲームでもしましょう。では」
こうして亮太と別れた蓮は家へ向け、帰り始める。
手には一冊のノートを握りながら。