転生魔王のチートキラー   作:誰かの影

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初戦〜vs不死身の冒険者ユート後編

情報量を整理していた時に、執事さんが柱に投げつけられた。その時だった。

 

ドクン!

 

(?…なんだ?この感じ…。)

 

妙な感情が湧き上がって来た。そして次にメイドさんが交戦に入る。魔力が放出されおおよそ千は超えているだろうナイフの嵐が冒険者ユートを襲う。しかし、痛みを感じていないのか刺さったまま突進しメイドさんを吹き飛ばした。そして刺さったのが気に食わなかったのか剣で何度もお偉い方であろう老人が張った防御魔法を叩く。

 

 

ドクン!

 

(まただ…僕は…苛立っている?)

 

はっきりと理解した。自分は今、あの冒険者にとても苛立っている!

 

 

 

 

障壁が砕け、剣がアリーシャを襲うその瞬間。オーマの中で魔力の奔流がダムが決壊した様に解き放たれた。

 

 

「止めろ!!!」

 

 

解き放たれた魔力は冒険者を後退させ、オーマは右手を前に出し、そして指を弾いた。するとオーマの前方に赤、水色、黄色、緑色の魔法陣が展開され4色のレーザーが放たれた。レーザーはアリーシャやセバスを巻き込むことなくユートだけを的確に狙う。イメージしたのは某アニメの世界最古の毒殺女帝の魔術。

 

 

そして、もう一つ、心の中に湧いて来た。女神との約束、守ること。

 

「これ以上。魔族魔物を傷つけるのなら…僕が許さない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーマがユートと交戦を始める直前にカバラは転移魔法でセバスとアリーシャを回収し離れた場所で二人に回復魔法を施しながらオーマの戦いを見ていた。

 

「な、何という術式の数!あれ一つ一つがA++相当の魔法だ!」

「これが…ランクS S S魔王の力…!」

「儂でもA++相当の魔法は行使可能じゃが…それでも詠唱が不可欠じゃ。…魔法陣を詠唱代わりにしておる様じゃが…。」

 

 

セバスとアリーシャが驚くなか、カバラは興味津々な目でオーマを見ている。神官長であるカバラにとって魔法は十八番同然。しかしオーマが放つ魔法はそれすら上回っている。もちろんカバラもやろうと思えば魔法の連射は可能。しかしそれには長い詠唱がいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぅ!こんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ!?こんなの魔導の勇者以上じゃねぇか!!!」

 

一方のユートは大苦戦している。チートスキル「超回復」によりダメージを受けても即回復するがオーマの魔法はそれよりも早い。さらに回復しながらの防御は身体に多大な負担をかける。

 

 

「ゴフッ。な、なんだ?」

 

ユートの口から何かが出てきた。手についたそれを見る。

 

「血?な…ば、馬鹿な!何で不死身の俺が!?女神様からもらったチートスキル「超回復」と、チートステータスを持っている俺がダメージを受けるんだ!?」

 

「当たり前だろ?」

「!?」

 

オーマの言葉にユートは顔を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーマに相手のステータスとスキルは「真名看破」により強制的に開示される。情報が分かれば対処もしやすい。平たく言えば攻略本を持っているのと同じ。

 

「お前のチートスキルは超回復。ダメージを受ければ即座に傷は塞がる。さらにチートステータスで筋力と耐久は最大値。だけど決定的な、致命的な弱点がある!」

 

「な、なんだと!?くっ!こんな魔法の嵐…ふ、防ぎきれねぇし…避けられない…っ!」

 

傷ついても即回復するユートだがすぐさま魔法のレーザーが同じ部分を攻撃する。その時だった。ユートの身体が痙攣し始めた。

 

「ぐぁっ!あが、ガガガガガガっ!?」

 

「お前の弱点は魔力が決定的に低い事と、もっと致命的な弱点は…細胞の分裂の限界は一般人と変わらない事だ!」

 

再びオーマは指を弾くと無数の魔法陣がユートを取り囲み電撃を放つ。

 

「グァアァァァ!!!アガガ、アァァァァァァァァア!!!」

 

それまで、どんな傷も塞がり回復して、まさに無敵のユートだった。しかし今は傷が変な風に塞がり、さらには手足が膨れ始めた。

 

 

 

 

 

「そ、そうか!その手があったか!」

 

カバラは目を見開き、なるほどっと手を叩いた。

 

「どういうことですか!?さっきはあいつに何しても回復していたのに。なんで急に…。」

 

アリーシャはユートを見ながらカバラに聞く。

 

「あやつの超回復はダメージを受ければ即座に再生する。しかしそれだけじゃ。あやつの決定的な弱点。それは…細胞分裂の上限まではチートしてない事。人には一生で出来る細胞分裂の限界がある。あのお方に過剰に何度も攻撃され、とうとう限界を迎えたのじゃ!」

 

カバラがユートを指差す。二人が見ると、そこには血反吐を吐き、手足の組織が異常に膨れ上がったユートがいた。剣は握れず、逃げる事も出来ない。まさに達磨状態、超回復による再生も、分裂出来る細胞を酷使した事でがん細胞化したのだ。そして超回復による再生は癌化した細胞を再生に使用してしまう。もはやがん細胞の塊。

 

「ここまでだな。ユート・アウルディム。いや、相沢悠人!!」

 

「!?な、何で俺の前の名前を!?」

 

前世の名前は自分を転生させてくれた女神アフロディーテのみ。しかし目の前の魔族は自分の名前を知っていた。

 

「僕の名前は、お前達の様な過剰なチートを貰って転生した転生者を狩る転生者、女神ペルセポネ様に遣わされた魔王オーマだ!!」

 

「なっ…お、お前も転生者!?」

 

ユートの顔が見る見る青ざめる。転生者を狩る転生者。つまり。

 

「チート…キラー!?」

「せっかく転生したけど、ペルセポネ様との約束だからな!悪く思え!」

 

巨大な魔法陣が展開される。その中心に高密度の魔力が集まる。それを見たカバラはギョッとし再び転移でセバスとアリーシャを連れ、なるべく離れた場所に移動した。オーマがイメージするはコルキスの魔女の大魔術。

 

「灰すら、残さない!神言魔術式・灰の花嫁(マキア・ヘカティックグライヤー)!!!」

 

魔法陣の中心から極太のレーザーが照射される。逃げる術はない。

 

「グァァァァァア!!!」

 

ユートは直撃を受け、細胞の分裂が限界に達した身体は、チリとも灰とも分からないものに変わり、散っていった。レーザーは城の壁を貫通し、市街地跡の鐘楼を消しとばし、後方の岩山の山頂を吹き飛ばした。

 

 

 

不死身の冒険者と呼ばれたユートはここに討たれた。

 




神言魔術式・灰の花嫁=あの魔女の必殺技。
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