人間の住む大陸、テル・アブ・フレイラ最大の都市。神聖都シャンバラ。初代転生者のチートで魔法と科学が発展した街。しかし、今は一つの事件で世間が騒いでいた。
『緊急速報、不死身の冒険者ユート・アウルディム。暗黒大陸魔王都跡アルケイディアで突如生命反応消失!新たなる魔王出現か?』
オーマとの戦闘でユートはこの世から消えた。人間側からしてみれば由々しき事態。冒険者ギルドの代表達は城で話し合っていた。
「あの不死身のユートが死んだのかよ!?」
「ありえないわ!彼はチートスキル「超回復」とチートステータスを持っているのよ!?どんな魔王でも倒せるわけがないわ!」
「事実、ユートの生体反応は消えた。そして皆も感じたのではないか?あの時の強大な魔力反応。」
オーマが止めに放ったEXランク相当の魔法。その魔力波は人間の大陸まで届いていた。人間達は息を飲む。
「どちらにせよ。暗黒大陸までは長い道を行かねばならない。どういうわけか転移魔法も繋がらない。今は様子見に徹した方がよい。」
場所変わって暗黒大陸、魔王都アルケイディア。オーマは崩れかけた辛うじて明かりが灯っている。玉座の間で……木で出来た簡素な椅子に座り、祀られていた。
「えっと……あの〜?」
「アラブレ・トィーユ・サラバレ…。」
神官長カバラを筆頭にセバスとアリーシャが跪き、カバラは祝辞の呪文を唱える。オーマは真名看破で名前を見る。
「あの〜。カバラ…さん?」
「は、はいぃ!?な、なんでありましょうか!?祝辞間違えましたか!?」
滅茶苦茶ビビられた。
「何やってるんですか!ジジイ!」
「おやめなさい、アリーシャさん!!魔王様の前ですよ!!」
「と、とりあえず僕の話を聞いてください!」
オーマは説明のために話しかけるがカバラとアリーシャはやいのやいの言い、セバスはそれをやめさせるので必死で聞こえていない。
「ちょっ……話を聞けったら!!!」
声を上げた、その時だった。
『スキル、魔王の声。発動。補足、三人。重圧執行。」
「え?」
真名看破が始めて発動した時と同じ電子音声が響く。すると、カバラ、アリーシャ、セバスが地面に突っ伏した。
「お、お許しを…わ、私が悪いですぅ…。」
「し、執事として…新たな魔王様のお言葉に耳も傾けないなんて…な、なんたる失態。お、お許しを…。」
「ま、魔王様…ど、どうか怒りをお鎮め下さいぃぃ…お、押しつぶされるぅ…!」
三人にとって魔王の声はまさに巨岩となって負荷をかける。
「ご、ごめんなさい!えっと……わ、分かればいいです。」
声を落ち着かせると「魔王の声」は解除された。それと同時に三人は重圧より解放された。
「「「ッハァァ!はぁ…。」」」
「話、聞いてくれますか?」
「「「は、はい。」」」
オーマは女神ペルセポネから魔物魔族をチート持ちから守る為遣わされた事。産まれたばかりで右も左もましてや世界情報も知らない事。全てを話す。(元人間とは言わなかった。)
「や、やはり貴方様は女神ペルセポネ様の使者!」
「という事は神霊に近いもの!」
「ようやくまともなの来たわ!」
はしゃぐ三人。しかしカバラは何かを思い出し二人に鎮る様に促す。
「わ、我々と言うものは…無礼をお許しください。オーマ様。自己紹介に生い立ちまで説明してくださったのにまだ我々は自己紹介がまだでしたな?私はこの魔王都アルケイディアの女神ペルセポネ様の神官長を勤めております、カバラと申します。」
カバラは祈るようにお辞儀をする。
「私は魔王様の身の回りのお世話をさせていただきます、執事のセバスと申します。メイド達の長でもあります。何なりと申し付け下さいませ。」
セバスはすっと胸に手を当てお辞儀をする。
「セバス様におなじく身の回りのお世話をさせていただきます、アリーシャと申しますぅ。料理、洗濯、戦闘もお任せ下さい!」
アリーシャはエプロンドレスの前に両手を添え、お辞儀をする。
「よろしく、頼みます。」
ようやく挨拶が終わり、オーマは一息つく。そして周りを見る。
はっきり言ってボロボロで伽藍堂。配下も三人しかおらずなんとも侘しい。恐らく長い年月の間に人間に攻められ、散り散りバラバラになり、廃墟と化したのだろう。
その時、カバラは思い出したようにアリーシャに告げる。
「アリーシャ殿!杖を!初代様の杖をここに!」
「は、はい!」
アリーシャは玉座から出て行き何処かへ走っていった。
「杖って?」
「ははっ。初代魔王様から遺されし魔杖にございます。人間たちに幾度となく狙われてきましたが今日まで守ってきました。」
カバラの説明のすぐ後でアリーシャが布に包まれた何かを持って来た。
「こちらに。」
「うむ。」
カバラはアリーシャから受け取り、そしてセバスが布を取る。
「これは…。」
そこには全体が金で出来ており、先端にまるで天球儀の様な輪が付いており、その真ん中に真っ黒のキューブ状の石が浮いている綺麗な杖があった。
「さぁ!御手を。」
「は、はい。」
オーマは恐る恐る杖を握る。
するとキューブ状の石がまるでルービックキューブの様に回転しだした。周りに浮いている輪はオーマを取り囲み、まるでコンピュータがデータをスキャンする様に動く。そして自分の周りにSF映画でよくありそうな立体映像が出てくる。
『前ユーザーと照合されません。……前ユーザー、死去を確認。前データをフォルダーに移行。今ユーザー用のファイルを作成。作成成功。』
再びあの電子音声が響く。
(スキル発動時といい、今回といい…まるでバーチャルゲームみたいだな?)
素直な感想を思った後に電子音声が響く。オーマはカバラ達を見る。カバラ達はただ祈る様に見ていた。
(この電子音声みたいなやつ、僕にしか聞こえないのかな?)
『新たにユーザーを登録しました。ユーザー名。及びステータスを確認してください。』
『ユーザー名:オーマ。
クラス:魔王。
ランクS S S。
種族:神魔族。
称号:女神の最高傑作、魔族魔物の救世主。チートキラー。
ステータス
筋力B(魔法の効果にて変動あり)
耐久A
敏捷B〜EX(魔法の効果にて変動あり)
魔力EX+++
幸運A
スキル
真名看破EX
魔王の声A
魔法創造EX
女神のチートキラーEX
「な、何だこりゃ!?ってまぁ、そりゃそうか。僕自身もチートみたいなものだもんね?」
『今ユーザーの登録が完了しました。魔杖ヴァナルガンド。起動します。』
キューブ状の石が元に戻り、輪も元に戻った。そして石は息を吹き返した様に蒼い光を取り戻した。
「おぉ…おぉ!魔杖ヴァナルガンドが起動した!」
「おめでとうございます。オーマ様。貴方はアルケイディアの魔王となりました。」
「おめでとうございます!」
三人が祝福する中、オーマは照れ臭そうに頭をかく。
「な、なんか照れるけど…頑張るから。みんなよろしくお願いします。」
オーマの言葉に三人は頷いた。その時、杖から再び電子音声が響く。
『停止中の魔力炉主機を確認。再始動しますか?』
「魔力炉?」
何のことか分からずオーマは首をかしげる。しかし他の三人は違った。
「ま、魔力炉はまだ生きている!?」
「はい?」
騒ぎ出す三人に話を聞くと魔力炉とはその名の通り魔力を吸い上げて動く動力炉であり、魔王都アルケイディアの動力源らしい。カバラから窓から指差された場所を見る。そこにはバベルの塔みたいな巨大な塔がある。他は廃墟同然だがその塔だけは当時のまま。初代魔王が死ぬと同時に杖を隠し、動力を悪用されない様に停止し今に至る。
「とりあえず再始動すればいんですか?」
「はい!」
カバラは目を輝かせる。オーマは杖に再始動と言い、かっこつけのため杖を掲げる。
『魔晶石と魔力炉主機とコンタクト…成功。魔力炉、再始動します。』
杖から光が放たれ塔に命中する。
ゴウン、ゴウン、ゴォォ!
塔からまるでエネルギーが供給される様な音が響き、塔の付け根から徐々に光が登って行く。そして一番上まで光が登ると、街の草だらけになった街灯に明かりがつき始め、噴水広場の噴水が噴き出し始める。
アルケイディアにエネルギーが戻った。噴水を見たアリーシャはまさかと思い玉座の間から飛び出し近くの錆びついた蛇口をひねって見る。そこからは綺麗な水が出てきた。そして城にも壊れていない電球らしきものに灯りがついた。
「み、水が、水が戻りました!灯りも…戻りました!」
「これで一々井戸から汲まなくても良さそうですね。」
「おぉ…光が、アルケイディアの光が戻った!」
三人は万歳万歳!と喜ぶがオーマが外に出てて行くのを見ると慌てて追いかけた。
「これが…アルケイディア…。」
街の灯りが戻り全体が見渡せる様になった。廃墟と化してしまっているがちゃんと整地され、一つも余分がない。当時は美しい街だった事をありありと感じた。
「綺麗な街だったんだ。」
「はい、初代様が原案したそれはそれは美しい街、我ら魔族魔物の理想郷でした。」
「今は廃墟ですが。でも当時の懐かしき風景もいくつかあります。」
「また同時に戻れかも知れないんですね!」
アリーシャはオーマの手を取りニコリと微笑む。
「頑張りましょうオーマ様!私も全力でサポートしますから!」
「う、うん!もちろん!女神様との約束だし。」(か、顔近っ!)
アリーシャは意外と美人。オーマは頰を赤らめ顔を背ける。その途端にカバラ怒り出した。
「不届き者!オーマ様に淫らに触ってはならん!」
「いいじゃありませんか!お世話するのはメイドの役目です!」
「お二人とも落ち着き下さい。」
また言い合いを始めるカバラとアリーシャにセバスが仲裁に入った。オーマは笑いながらその光景を見たのち、星空を見上げた。
(…僕やるよ。だから見守っていてください。女神様。)
スキル、魔王の声A=カリスマと威圧が混ざった混合スキル。発動すると相手にメデューサのキュベレイ同様の重圧をかける。精神力次第では軽減できる。