キラーラビットを仕留めたの地にアルケイディアの仮住まいに戻ると、早速アリーシャとセバスが慣れた手つきでキラーラビットから皮を剥ぎ内臓を切除していく。カバラは魔力炉を確認しに行くと言い塔へと転移。そしてオーマも何か手伝おうとしたが、「オーマ様を厨房に立たせるわけには参りません!」と断られた。
「待っているのもなんだし…カバラの所に行くか。…あの塔だよね?」
目に映るはアルケイディアで唯一破損していない、バベルの塔みたいな塔。オーマは頭の中で塔へ瞬間移動する自分をイメージする。そう。英霊達の空間転移みたいな。
イメージが完成すると足元に魔法陣が展開し、光に包まれ、次の瞬間、オーマは塔の入り口の眼の前にいた。ラノベ小説をよく読んでいた賜物か、イメージは得意中の得意でありスキル「魔法創造」のおかげで難なく成功させた。
「よし!転移成功!」
オーマは扉を開け中に入る。
「うわぁ…。」
床には複雑な魔法陣が描かれ、壁はまるで電子基板の様な模様が点滅し、真ん中には巨大なガラスの球体があり、その中にヴァナルガンドと同じ色をしたキューブ状の石が浮いている、科学的だが魔法的な空間が広がっていた。そしてガラスの球体の前でカバラが立体映像キーボードの様なものを操作していたが、こちらに気がつき振り返る。
「これはこれは!オーマ様。」
「なんだか…神秘的な場所だね?」
オーマは近くまで歩み寄る。カバラは胸を張る。
「大魔力炉バベルでございます。初代ベルゼ様が純度の高い魔力を洗練して作成した魔晶石「アダマンタイト」から魔力を抽出し魔王都全てに魔力を分配するアルケイディアの心臓部の様なものです。」
「へぇ〜。あれ?ヴァナルガンドの石に似てる。」
ヴァナルガンドを取り出し付いている石を見る。蒼い光、形も同じ。
「さようでごさいます。ヴァナルガンドはキーの様なもの、このアダマンタイトから削り出し制作したものです。」
(こんな魔力の結晶に高性能な杖…先代さん、どんだけ想像力豊かだったんだろうか?)
その時、再びヴァナルガンドが反応した。
『魔力炉補機、イフリート、ノーム、ウンディーネ、シルフの未稼働を確認。補機の状態を確認……補機の魔晶石の破損、及び紛失を確認。」
「補機?」
「やはり…破壊されたか奪われてしまっていたか。」
「どういうこと?」
カバラ曰く、アルケイディアの魔力炉は主機であり、魔王都を中心に東西南北の各要所に同じ塔がありまた別の魔晶石があるとのこと。しかしアルケイディア陥落の後に人間が攻め落としてしまい魔晶石は破損、紛失してしまったらしい。
「この主機及びアダマンタイトはベルゼ様の封印により守られていましたが、他の塔はどうなっているか……ですがアダマンタイトだけでは各種魔導兵器は動かせませんが必要ライフラインは稼働出来ました。今はまずこのアルケイディアの復旧が先でしょう。」
カバラが話し終えるとセバスが転移でやって来た。
「オーマ様、カバラ様。食事の用意が出来ました。」
「おぉ!肉料理は久しぶりじゃ。さぁ、オーマ様、参りましょう。」
カバラは足を少し上げそしてカン!っと床を踏む。すると足元に魔法陣が出現し転移魔法が発動。セバスも「では便乗しまして。」っと魔法陣に入り仮住まいに転移。
アルケイディアに夕日が指す。オーマ達がやって来ると、仮住まいの前の僅かに生える芝生にテーブルと椅子が置かれていた。
「あ、お帰りなさいませ!オーマ様、カバラ様。今日は夕日が綺麗なので外でのお夕食にさせていただきました。」
「おっ。粋だねぇ。こういうの好きだよ。」
オーマは席に座る。しかしカバラやアリーシャ、セバスの机も椅子もない。
「ねぇ。みんなの椅子がないけど?」
オーマの発言にアリーシャもセバスも「そんな。高貴な魔王であるオーマ様と食卓を囲むなど恐れ多い!」っと言ってきた。
「えぇ〜。どうせ僕も含めて四人だけならみんなで食べようよ。」
確かに本来の王室や帝室の王様達は大体豪華な部屋で大きな椅子に座り一人で贅沢な料理を食べているだろう。しかし元人間のオーマは、大体家族と食べていた。学校から帰って来たら母が料理の支度をしており、大体6時や7時くらいには父が帰宅してきて親子水入らずで食卓を囲んでいた。それが普通であり、幸せであった。
要するに。
「寂しいよぉ!」
ただ寂しかった。その時。カバラが声を上げて笑った。
「はっはっはっは!」
「えっ?ど、どうしたのカバラ?」
「いえ、少し昔を思い出しまして。ははっ。ベルゼ様も同じ事をおっしゃっていました。セバス殿、アリーシャ殿。」
カバラの声にセバスとアリーシャが頭を下げた。
「かしこまりました。今しばらくお待ちを。」
「お気持ちをお察しできず申し訳ありません!軽率でした!」
「い、いや。アリーシャ。分かってくれればいいよ。」
アリーシャは一礼し、セバスと共に3つ椅子とテーブルを用意した。そしてワゴンを押して来る。
「お待たせいたしました。執事の私、セバスとメイドのアリーシャとで捌き、調理した本日の夕食。」
セバスの説明にアリーシャはテーブルにフォークとナイフを並べていく。
「キラーラビットのソテー、ジャガイモを添えて、です。」
「おぉー!!!」
出された皿の上には湯気が立ち上るキラーラビットの肉のソテーとその脇に飾り切りされたジャガイモ。香草がいい感じに香り立ち、食欲をそそる。
「美味しそう!」
「流石はアリーシャ殿にセバス殿!お見事ですな!」
「いえ。ほとんどの調理はアリーシャです。」
「いえいえ。セバス様がきちんと捌いてくれましたから!」
セバスとアリーシャはどちらも決して傲ることも無くお互いを尊重する良きパートナーだ。そしてセバスがグラスに水を注ぎ、全員が席に着いた。
「それじゃ!いただきます!」
(あ、しまった。ついいただきますって言っちゃった。)
いつもの癖でつい日本特有のいただきますを言ってしまった。オーマは周りを見ると、なぜかカバラが驚いたような感激したような表情を浮かべた。
「おぉ…!オーマ様!「いただきます」の言葉をご存知とは!」
「はい?」
カバラ曰く、「いただきます。」とは魔族魔物の母、ペルセポネへ、それと同時に全ての生きとし生けるものへの感謝の言葉でもあるらしい。
(まんま日本のそれと同じじゃん!)
以外なところで地球の、故郷であった日本と同じ文化が発見出来た。