幼馴染以上、夫婦未満   作:イチゴ侍

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バレンタイン!
(いい子で待ってるのに歩夢ちゃんUR引けなかったよ……)

今回は時系列とか全く関係ないお話なので、続編ではありません!ifです!


特別話 愛を伝える日

 その日の夜、僕は不思議な感覚を味わっていた。僕以外の誰かが布団の中に入ってきている。

 

「覚えてるかなぁ? ⋯⋯ふふっ、幼稚園の頃お泊まり会あったよね? その時も寝ているあなたにこうやって抱きついてたんだよ。⋯⋯って、あなたは寝てたから覚えてるわけないよね」

 

「⋯⋯」

 

 ちなみに我が家には父と母、そして僕の三人で暮らしている。生まれてこの方、きょうだいができた覚えはない。

 

 

「ねぇ、キスしたいな。でも⋯⋯ダメだよね。ちゃんとあなたが起きてるときにしなきゃ⋯⋯」

 

「⋯⋯」

 

 その声は確かに歩夢ちゃんの声で間違いなかった。

 

 そして僕は直感で感じた。

 起きたらナニかを失う。本能に従い、僕はただ寝たふりをする。それは多分、山で熊と遭遇してしまった時の対処法に似てる気がする。

 

 

「幼稚園の頃約束したこと覚えてる? 大きくなったら結婚しようって……私、今もずっと待ってるんだよ?」

 

 それは確かに覚えがあった。砂場で一緒に城を作ってる時に彼女が言っていた。もちろん幼さ故の軽い気持ちで僕は結婚すると返事した。

 それからだろうか彼女との距離が異様に近いと感じ始めたのは。

 

 それから小学校、中学校と上がるにつれて彼女との近すぎる距離を気にし始めた僕は、少しだけ近ず離れずの距離を保った。

 彼女も彼女で、積極的な性格ではないため距離感を悟ってくれたのか、行きすぎな接近はしなくなった。

 

 

「どうしたらあなたは振り向いてくれるかな。どうしたらもっと私の事見てくれるかな。どうしたら私の傍にずっといてくれるかな」

 

 絶えない質問。だが僕は声を出せないでいた。それだけ彼女の、歩夢ちゃんの気迫がとてつもなく恐ろしかったのだ。

 

 

「はぁ⋯⋯こうしてあなたの体温を感じながら可愛い寝顔をずーっと見ていたいな。ずっとずっと抱きしめていたい。あなたの匂いも私だけのものにしちゃいたいよ」

 

 そっと耳元で囁く歩夢ちゃん。彼女の甘い香りと、優しいその声に誘惑されて今すぐにでも起き上がって抱きしめたい。僕の頭の中はもう歩夢ちゃんの事でいっぱいになりかけていた。

 

 

 

「⋯⋯でもね。」

 

 

 

 刹那、場の空気が変わった。

 

 

 

「今日のあれは私許せないよ」

 

 心なしか歩夢ちゃんの声のトーンも2つ3つほど下がっている。

 

 

「バレンタインのチョコ、しずくちゃんから貰ってたよね? 私見ちゃったんだ。あなたが嬉しそうに手作りのチョコ貰ってるところ」

 

「あ、もしかしてあなたはあれが義理とか同じ同好会の仲間だからとか思ってた? 違うよ。だって私、聞いちゃったんだ。しずくちゃん、あなたの事好きなんだって」

 

 な⋯⋯。そんな、しずくちゃんが? まさかこんな時に聞かされるなんて思ってもみなかった。

 

 

「あなたは鈍感だからね。もちろんしずくちゃんだけじゃないよ。かすみちゃんもせつ菜ちゃんも愛ちゃんもみんなみんなあなたの事大好きなんだよ。もちろん私も」

 

 嬉しい。とは素直に喜べないそんな状況なため複雑な気持ちだ。

 

 

「でもね。みんな一緒じゃだめなの」

 

 背筋にゾクっと何かが走った。

 

 

「あなたを好きでいていいのは私だけ。だって私はあなたの幼馴染だもん。あなたと一緒に朝起きて、一緒に朝ごはんを食べて、一緒に学校に行って、一緒に授業を受けて、一緒に私の作ったお弁当を食べて────」

 

 もじもじと体を動かす歩夢ちゃんに刺激され、寝ているフリが続けられなくなりつつあった。

 

 

「────なのにどうして? どうして今日しずくちゃんのチョコ貰ったの? ねぇどうして?」

 

 僕の手首を絞めるように握る歩夢ちゃん。僕は気づかれないように表情を歪めた。

 

 

「私のチョコだけじゃだめなの? 私ちゃんとあなたが好きな味になるように頑張ったんだよ。あなたにもっと私を感じてほしいから血だって入れたのに」

 

 まさか、今日やけに指に絆創膏が貼られていたのはそういうことだったのか。

 

 

「でもね。しずくちゃんからチョコ貰ってたのがどうでもよくなるくらい嬉しいこともあったんだ」

 

 そう、僕は歩夢ちゃんの血が入ったチョコを美味しいと全て食べている。

 

 

「一つ、また一つってあなたの中に私が入っていくのを近くで見ていられてとっても幸せだった」

 

 食べるたびに嬉しそうに僕を見ていた彼女の顔が鮮明に浮かび上がる。

 

 

「それにね。美味しかったってあなたに頭を撫でられた時なんて私どうなっちゃうか分からなかったんだよ。もう今すぐ私だけのあなたにしちゃいたいって本気だったんだから」

 

 頭をゆっくりと優しく撫でるその動きは、まるで私のものだと主張するかのようだった。

 

 

「ねぇ、今日からおやすみだね? 今日は何しよっか? 一緒にデートもいいな。あ、でもお家でゆっくりあなたと過ごすのも楽しいね? ふふっ、考えるだけですっごく幸せ♡」

 

「ふわぁ……ん、ちょっと眠くなってきちゃった。もう少しあなたの寝顔を見てたかったけど、朝起きる前のあなたの寝顔も見たいから早く寝なきゃ! ……それじゃ、おやすみなさい♡」

 

 そして歩夢ちゃんは夢の中へと入っていった。

 

 

 

 残された僕の体には彼女の体温と甘い匂い、そして愛情という名の恐怖が埋め込まれていた。

 

 





自分でも書いてて何書いてるんだろうとか思ったりしたけど、考えないことにしました。みなさん、肌で感じてください!
バレンタインにチョコが貰えないからこれくらいとち狂ったものを書いても許されると思うんですよ(名推理)
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