基本イチャイチャしか書かない者です。
今作は、お忙しい方でもすぐにパッと読んでいただけるよう1話1話短めに書いていこうと思っていますので、よろしくお願い致します。
夢からの一歩(つまり寝起き)
ただ平凡な家庭を築くのが夢だった。
決して裕福でもなければ貧乏でもない。家もとてつもない大きさを誇る高層ビルとかじゃなくて、アパートとかマンションとかそのくらい。
「汝、健やかなる時も、病めるときも……」
僕の夢とはつまり、暖かい家庭だ。
特別、僕が冷たい家庭で育ってきたからではない。きちんと両親の愛を受けて育てられてきた。だからこそ、僕の子どもとして来てくれる子のために暖かで穏やかな家庭を作って待っていたい。
そして僕にとっての理想の妻は、どんな時でも僕の横で太陽のように笑ってくれる人。他にも勿論、優しいとか可愛い、器用……たくさんあるけど、何よりも一緒にいて心の底から笑える人がいい。
「……共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
牧師さんが新郎……つまり僕に問いただす。
「はい、誓います」
そしてまた牧師さんの誓いの言葉が始まり、次は新婦へと問いただす。
彼女はほんの少し僕の方に体を向け
「はい! 誓います」
いつもの彼女らしく元気に誓ってくれた。
「それでは、指輪の交換を」
僕と彼女はそれぞれ結婚指輪を手に持つ。
それを互いの左手の薬指にはめる。ベールで隠れてはいるけど、とても嬉しそうだというのがよく分かる。僕も少しでも気を抜いたらすぐうっとりしそうになりそうだ。
そこをぐっとこらえて、僕は彼女の顔にかかったベールをあげる。
純白なウエディングドレスに身を包んだ彼女の全体を改めて視界に入れただけで、僕の脳は焼ける寸前だった。
「美しい」という言葉がここまで似合う女性もそうそういない。
ガラス玉のように透き通る金眼が僕を捉える。年が経っているというに彼女は、昔の面影を残し、今でもその幼さは健在。
彼女は今でも自分の童顔が変わらない事を気にしているようでしていない。時々、柄にも無く僕にイタズラを仕掛ける時は異様なまでにその童顔を駆使して、僕を言いくるめる。
叱ってやろうという気も失せるというものだ。
「誓いのキスを」
そんな彼女とこのキスをもって家族になる。僕が夢見る暖かな家庭を彼女となら作っていけると。
「
「愛してるよ……」
少しずつ僕たちは顔を近づけていく。あと少し、あとほんの少しで歩夢ちゃんの柔らかな唇にたどり着く。それは何度も味わった感触で、僕はもう虜になっていた。
無しでは生きていけないほどに依存しているのかもしれない。
僕と歩夢ちゃんの唇が触れ合う。
まるで時が止まったかのような錯覚に陥るほど、僕は緊張していたはずなのに、重なった瞬間に重りが全て取り払われたかのようだった。
僕は一生、彼女を離しはしない。そう神に誓うように唇で繋がった。
そして、僕はそっと唇を離し……離し…………っ!?
「ん、ふぅ…………はぁ♡」
「んっ────!?」
塞いでいた僕の唇をこじ開けるは、歩夢ちゃんの舌。ザラザラとした感触が僕の口の中を支配する。
誓いのキスとは本来、ソフトなキスで済ます。済ますべきだ。最低でも2、3分で抑えなければいけない。だけども彼女が今しているのは、ソフトとはかけ離れたディープキス。
「ちょ、新郎新婦!? ここはほんの少しでいいのですが!」
牧師さんが止めに入ってくれるが、口が塞がれているため反応を返せない。その間も歩夢ちゃんの舌による行進は続く。
次第に、歩夢ちゃんの両手が僕の首の後ろに巻かれ、その密着度は極限まで達していた。
入ってきた彼女の舌は、僕の歯並びを執念に調べ、終わったかと思いきや僕の舌とじゃれ合うかのように絡み合う。
僕の口内で分泌された唾液達は、舌に乗って歩夢ちゃんの元に運ばれる。そのお礼とばかりに僕の方には、歩夢ちゃんの唾液が送られてきた。それは決して嫌悪するものではなく、どちらかと言えば彼女を体内でも感じられるという安心感が勝っていた。
感性がおかしいと思われてもしょうがない。
おそらく僕は相当、彼女に毒されているのだ。僕が拒絶しないので、歩夢ちゃんはそれが嬉しいのか時折「好き」と連呼して僕への愛を示してくれる。
結局、彼女によるキスの拘束は数十分に渡った。酸素を取り入れるすきもなく、唇が離れた瞬間に僕は急いで呼吸を繰り返す。
彼女を見やると「してやったり」といった様子で妖しい笑みを浮かべていた。
「ふふっ♡ 大人なキス……しちゃったねっ♡」
これは、そんな彼女との波乱万丈な新婚生活のお話である。
……ある。
……ぁる。
…………る。
***
「だあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
怒号にも似た、まるで獣の吠える音のような自身の声で目が冴える。こんな経験をするとは夢にも思わなかった。
第一、自分がこんな声を出せることに驚きだし、人生で初めてこんなに声を出した気がする。小学校の運動会の応援ですらこんなに出なかったのに……。
そんな僕の声を聞いてか、ドタドタ、と二階の僕の部屋に続く階段を登る音が聞こえてきた。
やって来たのは紛れもなく、
「大丈夫!?」
彼女────上原歩夢こと、歩夢ちゃんだった。
上原歩夢をすこれ。