一部界隈でそうなりそうなので流行に乗りました後悔はありません。
『私たち……結婚します』
彼女は僕に言い放った。
彼女の名は上原歩夢。僕の幼馴染で、高校時代にアイドルをやっていた最高に可愛い自慢の幼馴染。
その彼女は今、純白のドレスを纏い僕の目の前に立つ。その隣には、当然僕はいない。
「……綺麗だね」
「ありがと。……ねぇ、あなたは何も言ってくれないの?」
彼女は語りかける。その視線の先に僕はいない。彼女の隣に立つ彼は、僕よりもイケメンで、身長も高い。高校時代に野球部に所属していた彼は、今ではプロとして活動する現役の野球選手だ。
そんな彼は、照れくさそうに歩夢ちゃんに「綺麗だ」と一言呟いた。すると、
「……も、もう! ……えへへ、ありがとっ」
彼女はこれ以上ないくらい羞恥の表情を浮かべ、そして花のように微笑む。僕と何一つ変わらない褒め台詞だったのに、僕とは天と地の差がある反応だ。それは嫌という程、彼と僕との差を明確にした。
彼女の幸せが第一だ。それは彼女が結婚すると言い放ったあの日から何一つ変わらないでいる。でもそれは、自分自身に嘘をつき続けているだけなのかもしれない。
今でも僕の心臓は刺され続けているかのように痛みを発している。
「私……今とっても幸せだよ。あなたと結婚できて……」
視界が虚ろになってきた。次は足取りがおぼつかない。熱は無い。なのに熱い。何とかして笑わないと。せっかくの幼馴染の結婚式なんだ。とても喜ばしい日なんだ。
なのになんでだろう。涙が止まらないよ。
「えっ……ど、どうしたの! ○○君!」
あぁ、そうか。もう僕は君のトクベツじゃないんだ……、僕をずっと「あなた」って呼んでいた意味が今わかったよ。
イケメンの彼も心配してくれている。そうか、歩夢ちゃんはこんな所に惹かれたんだね。こうして彼を妬んでいる僕じゃ叶わないわけだ。
幼馴染という心地いい関係をずっと壊したくなくて、踏み出そうとしなかった。
そして歩夢ちゃんの一番のファンだった僕は今日この日、そこら辺にいるファンの一人へと成り下がるんだ。
「……なんでもないよ。ただこの日が嬉しいんだよ。……結婚おめでとう歩夢ちゃん」
そして僕は彼女を送り出し────。
***
僕は今、朝ごはんを食べている。目の前には歩夢ちゃんがいた。
「ね、ねぇ……大丈夫?」
箸を止めた僕を見て、歩夢ちゃんは僕の顔を覗く。
「うん。大丈夫大丈夫」
「でも……顔色も悪いし」
「大丈夫だから。気にしないで」
無理して僕は笑みを浮かべる。
結局、歩夢ちゃんが結婚するというあれは夢だった。最後に彼女がイケメン野球選手に口づけするその瞬間、僕は現実に戻ってきた。飛び起きた僕に声をかけたのは歩夢ちゃんだ。いつまでも起きてこない僕を心配にやって来てくれたようで、その時の僕は、歩夢ちゃんによるとうなされていたらしい。
「ちょっと嫌な夢を見て寝不足なだけだよ……はは」
「どんな夢だったの……? あなたがうなされてる所なんて初めて見たから心配だよ」
「僕でもうなされることだってあるよ」
「でもずっと私の名前呼んでた……」
え……。と、無理やり動かしていた箸を止めてしまった。確かに見た夢に歩夢ちゃんは出てきている。それがうなされる原因だということも分かる。しかし、僕が無意識に歩夢ちゃんの名を呼んでいたことには驚いた。
「そ、そうだったの……? えぇ、恥ずかしいな……」
「うん。私は嬉しかったけど、こんな時に呼ばれたくなかったよ」
「ご、ごめん。僕の夢によく言いつけておくよ」
と、その時だった。
『今年大活躍! ○○選手に密着!』
テレビでは、年末近くになると毎年流れるその年に活躍したスポーツ選手の特集が行われていた。
そこに移されていたのは超イケメン野球選手だった。
「この人凄いんだよね。確か攻めも守りもどっちもできるとか……」
「そ、そうなんだ。僕、あんまり詳しくないからな」
本当は知っていた。でも、気づいてしまった。その顔がどう見ても夢で見た彼にそっくりなのだ。
だから僕は焦った。歩夢ちゃんの目がテレビに向いてる。夢で見た光景にそっくりだ。
僕は迷わず箸を置き、
「歩夢ちゃん!」
たまらず声を荒らげ、
「僕と……結婚してくれ!」
「……は、はい!!」
「…………え?」
────後に僕は思う。
これこそ夢であって欲しかった……と。
ところがどっこい!夢じゃありません!これが現実!
まさかのタイトル回収
上原歩夢をすこれ