『デート 初めて オススメ』
なんて履歴をボーッと眺めながら、僕はショッピングモール内のベンチで項垂れていた。
歩夢ちゃんと待ち合わせし、まず最初に水族館へと向かった。しかしまさかの休業日。
ならばと向かった最近話題のスイーツ店。向かうと大行列でまさかの二時間待ち。
僕の立ててきたプランも思いつきも、ことごとくと潰されていく。そんな僕を見兼ねたのか、歩夢ちゃんは近くのショッピングモールに行きたいと言ってくれた。
その提案は嬉しさ半分、そして申し訳なさ半分だった。
「……はぁ、情けないな……僕」
いつまでも俯いていては、通りかかる人達に怪しまれる。僕が顔を上げたタイミングで歩夢ちゃんが戻ってきた。
「待たせしちゃってごめんね!」
「ううん、大丈夫だよ。混んでなかった?」
「うーん、少し混んでたかも」
歩夢ちゃんがお花摘みから帰って来ると、僕の顔をじっと見つめてきた。
「何かあったの?」
「ん、どうして?」
「なんだか顔色が悪い。具合悪くなっちゃった……?」
そっと僕の頬に触れる歩夢ちゃんの手のひら。通りかかる奥様方の、微笑ましいものを見るような視線が恥ずかしい。
「あ、歩夢ちゃん……その、流石に恥ずかしい……」
「あっ、ご、ごめん……」
察してくれたのか歩夢ちゃんは手を引っ込めた。少し名残惜しかったが、僕が注意した手前"もう一度お願い"とは言えなかった。
「その、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから」
「ううん……大丈夫じゃないよ。凄く辛い顔してる」
「え……?」
「お願い。話して……?」
今ほど歩夢ちゃんの優しさが痛いと思ったことは無い。
鏡を見なくても、自分がいま辛い顔をしていることくらい容易に想像がついた。
僕を写す鏡かのように歩夢ちゃんも辛そうな表情を浮かべている。
そんな表情をさせてしまった自分に、さらに嫌気がさす。
「ごめん。せっかく歩夢ちゃんが楽しみしてくれてたのにこんなデートになっちゃって……ほんとはもっとちゃんと歩夢ちゃんに楽しんでもらえるようなデートをしたかったんだ……失望したよね」
「そ、そんな! 私は……」
「本当にごめん……やっぱり僕じゃ」
「大丈夫だよっ!」
ギュッと歩夢ちゃんの両手が僕の右手を包んだ。
「あのね。デートで大事なのって結果じゃなくて、過程だと思うんだ。私は、あなたとどこに行って何をしたかよりも、あなたとどんな道を通ってどんな景色を見ながら、どれだけの時間を一緒に過ごしたかの方が大事。だから今日は凄く楽しい!」
歩夢ちゃんはとても真っ直ぐな目で、僕に訴えかけてきた。
「実は今日が楽しみで昨日あんまり眠れなかったんだ」
「え……」
僕と一緒だった。
……もしかしたら待ち合わせの時に寝ていたのは、それが原因だったのか。
「それ聞いたら尚更……」
「ああっ、その……そういう訳じゃなくてね。デートでどこかに行くのが楽しみって意味じゃなくて、あなたとデートする事が楽しみで眠れなかったって意味なの!」
つまり内容は重要じゃなかった……。それはそれで深夜一生懸命考えていた僕が報われないが、そうじゃないんだよね。
「僕とのデートを楽しみにしててくれてありがとう」
「うんっ!」
きっと歩夢ちゃんにとっては、どんな内容であってもデートだと言えばそれはデートなのだ。
その時、お腹の虫が同時に鳴った。
「お昼ご飯食べていこうか?」
「あ、なら私気になってるお店があるの!」
「ならそこに行こう!」
手を繋ぎ合い、僕らは歩き出した。
歩夢ちゃんUR引けました!(事実)