幼馴染以上、夫婦未満   作:イチゴ侍

9 / 9
お久しぶりです!


デートの定義

『デート 初めて オススメ』

 なんて履歴をボーッと眺めながら、僕はショッピングモール内のベンチで項垂れていた。

 

 歩夢ちゃんと待ち合わせし、まず最初に水族館へと向かった。しかしまさかの休業日。

 ならばと向かった最近話題のスイーツ店。向かうと大行列でまさかの二時間待ち。

 

 僕の立ててきたプランも思いつきも、ことごとくと潰されていく。そんな僕を見兼ねたのか、歩夢ちゃんは近くのショッピングモールに行きたいと言ってくれた。

 その提案は嬉しさ半分、そして申し訳なさ半分だった。

 

 

「……はぁ、情けないな……僕」

 

 いつまでも俯いていては、通りかかる人達に怪しまれる。僕が顔を上げたタイミングで歩夢ちゃんが戻ってきた。

 

 

「待たせしちゃってごめんね!」

「ううん、大丈夫だよ。混んでなかった?」

「うーん、少し混んでたかも」

 

 歩夢ちゃんがお花摘みから帰って来ると、僕の顔をじっと見つめてきた。

 

 

「何かあったの?」

「ん、どうして?」

「なんだか顔色が悪い。具合悪くなっちゃった……?」

 

 そっと僕の頬に触れる歩夢ちゃんの手のひら。通りかかる奥様方の、微笑ましいものを見るような視線が恥ずかしい。

 

 

「あ、歩夢ちゃん……その、流石に恥ずかしい……」

「あっ、ご、ごめん……」

 

 察してくれたのか歩夢ちゃんは手を引っ込めた。少し名残惜しかったが、僕が注意した手前"もう一度お願い"とは言えなかった。

 

 

「その、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だから」

「ううん……大丈夫じゃないよ。凄く辛い顔してる」

「え……?」

「お願い。話して……?」

 

 今ほど歩夢ちゃんの優しさが痛いと思ったことは無い。

 鏡を見なくても、自分がいま辛い顔をしていることくらい容易に想像がついた。

 僕を写す鏡かのように歩夢ちゃんも辛そうな表情を浮かべている。

 

 そんな表情をさせてしまった自分に、さらに嫌気がさす。

 

 

「ごめん。せっかく歩夢ちゃんが楽しみしてくれてたのにこんなデートになっちゃって……ほんとはもっとちゃんと歩夢ちゃんに楽しんでもらえるようなデートをしたかったんだ……失望したよね」

「そ、そんな! 私は……」

「本当にごめん……やっぱり僕じゃ」

 

「大丈夫だよっ!」

 

 ギュッと歩夢ちゃんの両手が僕の右手を包んだ。

 

 

「あのね。デートで大事なのって結果じゃなくて、過程だと思うんだ。私は、あなたとどこに行って何をしたかよりも、あなたとどんな道を通ってどんな景色を見ながら、どれだけの時間を一緒に過ごしたかの方が大事。だから今日は凄く楽しい!」

 

 歩夢ちゃんはとても真っ直ぐな目で、僕に訴えかけてきた。

 

 

「実は今日が楽しみで昨日あんまり眠れなかったんだ」

「え……」

 

 僕と一緒だった。

 ……もしかしたら待ち合わせの時に寝ていたのは、それが原因だったのか。

 

 

「それ聞いたら尚更……」

「ああっ、その……そういう訳じゃなくてね。デートでどこかに行くのが楽しみって意味じゃなくて、あなたとデートする事が楽しみで眠れなかったって意味なの!」

 

 つまり内容は重要じゃなかった……。それはそれで深夜一生懸命考えていた僕が報われないが、そうじゃないんだよね。

 

 

「僕とのデートを楽しみにしててくれてありがとう」

 

「うんっ!」

 

 きっと歩夢ちゃんにとっては、どんな内容であってもデートだと言えばそれはデートなのだ。

 

 

 その時、お腹の虫が同時に鳴った。

 

 

「お昼ご飯食べていこうか?」

「あ、なら私気になってるお店があるの!」

「ならそこに行こう!」

 

 

 手を繋ぎ合い、僕らは歩き出した。




歩夢ちゃんUR引けました!(事実)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。