【WR】がっこうぐらしRTA_全員生存ルート【完結】   作:アサルトゲーマー

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初投稿かもしれません。


19エンディング

 

 

 ぱち、ぱち、と。燃えた木が爆ぜる音が聞こえる。

 木が爆ぜるのは内部の水分が沸騰、蒸発して、圧力が高くなった結果。風船のようになった内部が耐えきれずに壊れるからだと何かで聞いたことがある。

 そんな益体もないことを考えながら、私は避難用シェルターの内部で、閉じられたシャッターを見つめていた。

 

「大丈夫よ…大丈夫…だって約束したもの…」

 

 ぶつぶつと独り言をつぶやくりーさん。その姿は酷く憔悴しているようで、見ているこちらまで気が滅入りそう。

 その腕の中にすっぽり嵌った太郎丸も心配そうに鳴いている。

 

「なあ、みき。あのふたり、本当に大丈夫だと思うか?」

 

 くるみ先輩の声。そんなの、先輩だってわかり切っているはずだ。

 もし、あの炎の壁の向こうがまだ安全だったとしても。ベルの音の中では満足に動くことすらままならないしずく先輩、そして生徒を傷つけることを極端に恐れる佐倉先生のふたりでは、到底。

 …それでも、希望を捨てられないから、私に尋ねたのだろう。

 

 はじめはくるみ先輩が助けに行こうとした。しかし、気絶したけい、錯乱したりーさん、戦うことに全く慣れていないゆき先輩の三人を連れた状態ではとても無理だと判断し、私が無理やり納得させてここまで連れてきたのだ。

 結局、火の回りが想像以上に激しかったため、助けに行くこともままならず。そうして見殺しにも等しい形でこうして彼女たちを待っているのだ。

 

「そうですね。しずく先輩の台詞を借りて言うなら。大丈夫だって安心してよ、へーきへーき……こんな感じでしょうか」

「ぷ。なんだよそれ」

「私が未来について悩んでいる時、こう言ってくれたんです。私って心配症ですから」

「心配役は必要だろ。みんながしずくみたいじゃ困る」

 

 

『朝食のテーマはなまこです』

『なまこォ!?』

『なまこだ…(絶望)』

 

『缶詰、暴力、洗濯物って感じで』

『服の汚れはとれましたか…?』

『んまあ、そう…よくわかんなかったね』

『よし!(適当)』

 

『ここの掃除をするので、死体は後ろの箱に、入れて、ください』

『私には筋力がありません。だから、クルミの助けが、必要だったんですね』

『ゴ、クルミ助けて!』

 

 

「ぶふっ!」

 

 くるみ先輩の言うように、みんながしずく先輩だった場合を想像してしまい、思わず噴き出した。

 一体どんなのを想像したんだよ、と言うくるみ先輩もくすくすと笑っているあたり、似たような事を考えていたのだろう。

 

「悩んでいるのが馬鹿みたいですね。…だいじょーぶ、です。彼女なら絶対にここまでたどり着きますよ」

 

 私がそう言った瞬間、太郎丸が吠えた。そしてシャッターの下から、いつか見た、血まみれのスコップが生えてくる。

 

「げーっほげぇっほ!このままだと煙に巻かれて死んじゃうゥ!」

「しずくさん!あと少しですよ!」

 

 それはしずく先輩と佐倉先生の声だった。そのシャッターの向こうから「ゴリラのことクルミって言ったの謝るから開けて!」とか「開けろ!巡ヶ丘市警だよ!」と、彼女がいつものコミカルさで騒ぎ立てている。

 

「ね?」

 

 言ったでしょ?と。私は得意げに笑いながら立ち上がった。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 今度こそはリセだと思った(小並感)

 

 めぐねえの助力を得てなんとかシェルターまでやってこれました!見えないってのは怖いなサム…(レ)

 それに地味に太郎丸もファインプレーです。あの鳴き声がなければ方向がまったくわかりませんでした。めぐねえ?煙に巻かれて半分迷子になってたよ。

 まあこっちは体力無くなって担がれてたんだがな!

 それに最後のレベルアップもなかなか効きましたね。あれが無かったら3回はガバをやらかしていたでしょう(薄氷の勝利)

 

 

 合流してしばらく休憩したらシェルターの家探しタァイムです!と、言ってもやる事は車の鍵の回収くらいですけどね。

 地下二階の避難隔離区域にある謎の小部屋に噛み傷のある首つり氏体があるので、そいつのポケットから拝借します。ポケットから手を抜くと必ず写真が落ちますが無視だ無視!血でベタベタに汚れているから誰の写真かもわからない、いわゆる雰囲気アイテムだからね、しかたないね。

 

「おい、何してんだ?」

 

 ん、氏体漁ってましたね。これ以上することもないし睡眠だ睡眠だ睡眠だ!

 くるみちゃんをスルーしてとっととブランケットでも手に入れて寝ましょう。

 

「……写真?」

 

 いらないからあげるわあなたに。

 

 それじゃおやすみなさーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 おはようございまーーーーす!

 起きたらシャッターを解放!「奴ら」は全員燃え尽きているので今日に限っては校内全て安全です。そしてみんなを引き連れて車の鍵を使うぞー!

 

 全員脱出ルートなので現在は8人+1匹の大所帯です。これではどう頑張ってもめぐねえカーには乗りません。

 しかし安心魔界神。あの首つり死体は必ずワンボックスの車の鍵を持っています。だから、死体漁りをする必要が、あったんですね。

 

 さらにさらに車は駐車場から離れた場所、来客用入り口のところにポンと放置されているので、多少ススは被っていますが傷ひとつありません。まるで全員脱出ルートのために追加されたモブみたいだぁ…。

 

 スマートキーなのでぽちっとしてやると開錠されます。そしてドアを開けたところでフィニッシュ!あとはもうムービーだけなのでお茶でも飲みながらエンディングでも眺めていましょう。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 車のドアを開いた時の事だった。すん、と。しずく先輩が鼻を鳴らした。

 そして、一筋の涙が彼女の頬を濡らす。

 

「そっか…」

 

 彼女はひとり、何かに納得したように呟く。その顔は、喜んでいるような、悲しんでいるような、複雑な表情だった。

 

 

 

 

 

 

 学校はもう、何もかもが滅茶苦茶だった。電気、水道などのインフラストラクチャはもちろん、畑や缶詰といった食料、図書館の本やバリケードなどがほぼすべて燃え尽きていた。

 今後の事はまた後で考えるとして、まずはまだ使えるものを探すため私たちは学校中を探検していた。

 

「なあ、みき。ちょっといいか?」 

 

 屋上に行くと、くるみさんに呼び止められた。

 

「さっきヘリの所で見つけたんだ。印の入った地図と…コレ」

 

 ゴトリ。目の前に置かれたのは黒い金属の塊だ。映画などでよく見かけた、ピストルそのもの。

 

「これって拳銃だよな?なんでヘリの奴はこんなもん持ってたんだろ」

「そんなの、」

 

 感染している()()を撃つためじゃないですか。そうは思ったが口には出さなかった。

 私はとぼけることに決めて、地図の方に視線を滑らせる。

 

「それより、地図の印ってなんですか?」

「ああ、そうそう。ここなんだけど」

 

 くるみ先輩に指差された部分を見る。そこは私たちのいる学校と聖イシドロス大学と、あと一つはよくわからない場所にバツが付けられていた。

 これはもしかして、ヘリが向かう予定地だったのだろうか。しかし法則性が分からない。学校と、なんだろう?

 

「……あとさ、もういっこ」

「まだあったんですか?」

「いや、ヘリの奴とは別。地下の首つり死体から見つけた」

 

 ペラリと差し出された写真。それを見た瞬間、私の肌は粟だった。

 

 血で汚れてはいるが、はっきりと判る。それは、笑っている、しずく先輩の写真。

 

 なぜ、それがあの死体から?

 

「わかるだろ?しずくの写真だ。なら、あの男は、しずくの家族なんじゃないかって」

「…っ。ああ、そっか…」

 

 しずく先輩の涙の理由が分かってしまった。

 きっと、死体の時点ではわからなかったけれど、車のにおいで気が付いてしまったのだ。

 あの死体が、家族だったことに。

 

「これ、渡しておくよ」

「…え?なんでですか」

「だってさ、あたしじゃどうすりゃいいか分かんないし。あたしってバカだからさ、きっと持っててもロクな結果にならないと思う」

「それを後輩に押し付けるってどうなんですか」

「あーあー!きこえなーい!じゃあちょっと地図をみんなに見せてくるっ!」

「先輩!もう!」

 

 くるみ先輩は私に写真を押し付けると、疾風になって階段へと消えていった。

 

 …正直なところ。わたしは気にかかっていることがあった。

 なぜ、あの男は地下に逃げ込んでいた?しずく先輩を探しに来たのなら校舎に居るべきだ。

 

 すこし整理しよう。私は深呼吸をして、その場に座り込んだ。

 

 きっとあの男は地下がある事を最初から知っていた。そうでなければ、あのパスワード式のシャッターは開けられない。

 なら、なぜそこから出なかった?……もしかして、しずく先輩を待っていた?

 

「直樹さん?どうしたんですか?こんなところで」

 

 声を掛けられて、顔を上げると佐倉先生が心配そうにこちらを覗き込んでいた。

 ……先生にはこの写真を見せておくべきだろう。

 

 私が「地下の死体から手に入れたものです」とそれを差し出すと、先生は顔を青くした。

 俯きながら、話を続ける。

 

「しずく先輩の写真を持っているなんて、それこそ近しいひとでしょう」

「……」

「あの男の人はしずくさんを迎えに来て、だけど途中で噛まれて、自ら命を絶ったんです。…いつまで経ってもやってこないしずく先輩に絶望しながら」

 

 どさりと音が聞こえた。顔を上げると、佐倉先生は膝を突いて頭を抱えていた。

 

「……そういう、ことだったんだ」

「先生?」

「しずくさんは、最初からこの事件が起きる危険性について知らされていた。なら、あの時の過剰なまでの暴力性はむしろ」

「先生」

「シェルターの位置を知っていたのだって、ぜんぶ、ぜんぶ…」

 

「先生!!」

 

 久しぶりに、大きな声を出した。佐倉先生はその声でハッとしたようで、その顔を笑顔でつくろいながら立ち上がった。

 …ひどく不格好な笑顔だ。そんな顔じゃ、しずく先輩にすら怪しまれるだろう。

 

「先生は一度、しずく先輩とはっきり話してみるべきです」

「…でも」

「でも、じゃありません!」

 

 この際、はっきり言ってしまおう。

 私は立ち上がって大きく息を吸った。

 

「しずく先輩は、アホでサボり屋ですけど、私たちにはずっと誠実でした!そんな彼女のことが信じられませんか!?」

「──そんな訳ない!」

「…ほら、それなら大丈夫です」

 

 写真を押し付けて、スカートに付いたほこりを払う。

 

「きっと、佐倉先生はしずく先輩の正体に気が付いているんですよね。でも、私は先輩の正体に興味がないので、この話は先生と先輩のふたりだけのものにしておいてください」

 

 そう言って、私は屋上を後にした。

 横目でちらりと見えたポカンとした先生の表情。それが少し、可笑しかった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、私たちは次の拠点へと移ることになった。

 行き先は「聖イシドロス大学」。先生曰く、ここには巡ヶ丘高校と同じような設備が整っているらしい。その情報の出所を訊いてみたら、苦笑いをされた。…藪蛇だったようだ。

 今は荷物を選別し、焼けるのを免れたワンボックスカーに積み入れをしている。

 

「私たちはもう、家族なの!」

 

 家族。その言葉の響きにどきりとした。声の主はりーさんだったが、私の視線はサボっているしずく先輩の方へ。…どうやら心配は杞憂だったようで、近頃よく見せるようになった「にへら」とした顔で手を振ってくる。膝に太郎丸を乗せたけいもそれを真似てこちらに手を振っていた。太郎丸までしっぽを振っていた。

 

「一緒に戦って、一緒にごはんを食べて、一緒に寝る。ね?」

「何が「ね?」なのかはわかんないけど…ま、悪い気はしないね…。家族、家族か」

「えー、じゃありーさんはおねーちゃん?」

「……!そうね、お姉ちゃんよ」

「わーい!」

「もう、ゆきちゃん!」

「なら、私はお母さん?」

「めぐねえはめぐねえだろ」

「お母さんって感じはしないわね」

「めぐみ母さん…ないな」

「はうう…」

 

 一時期不安定だったりーさんも今は持ち直している。彼女は「家族」に執着しているようだけれど…。

 でもまあ。こんな家族ならけっこういいかも。

 佐倉先生も近頃笑顔をよく見せてくれる。きっといいことがあったに違いない。

 

 私は彼女たちの話を耳に挟みながら、持っていたダンボールの荷物を車のトランクに放り込んだ。

 その時、視界の端に白いもの。

 

「これは、杖?」

 

 拾い上げてみると、それは折りたたまれた白杖(はくじょう)だったことが確認できた。使った形跡はあまり見られない。

 …まあ、これを使うであろう人物はそれなしで学校や駅、さらにショッピングモールを独り歩きした傑物なので妥当といえばそうである。

 無用の長物の可能性もあるが、ブザーやベルの件もある。処分に関してはしずく先輩に任せよう。

 

「はい、先輩。杖です」

「杖?……あ」

「使いますか?」

「使わない。でも持っておく」

 

 しずく先輩はそれを受け取ると、大事そうにぎゅっと抱きしめた。…きっと、大切な誰かからプレゼントされたものだったのかな。

 それを眺めながら私はけいの隣に腰かけた。

 

「あれ?みきまでサボってていいの?」

「これはただの休憩だからいいの。…ね、けい」

「なあに?」

「どうしてあの日、ピアノを弾いていたの?」

 

 あの雷雨の日。けいは音楽室に立てこもってピアノを鳴らし始めた。

 それは結果的には全員が生存するための鍵になったが、あまりにも無謀なことだ。

 

「ひょっとして、戦えないことに引け目を感じてた?」

「んーん。違うよ」

「じゃあ、なんで?」

「私もちょっと、ヒーローになりたくって」

「なにそれ」

「雪野先輩みたいなのは無理だけど、ちょっとくらいはって夢を見たの。人はね、誰だって誰かのヒーローになれるんだよ」

「……漫画の受け売り?」

「あちゃ、バレたか」

 

 ベ、と舌を出して笑うけい。

 それを見ていると、笑いが込み上げてきて、思わず声を上げて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、聖イシドロス大学へしゅっぱーーつ!!」

 

「「「「「おおー!!」」」」」

 

 随分長く感じた準備も終え、私たちは新天地を求めて車を走らせる。

 

「だぁー!こっちも行き止まり!いったいどっからなら行けるんだよ!」

「クルミの見方が悪いんじゃない?ちょっと地図貸して」

「お前は読めないだろ!」

 

 終わってしまった世界の中で、あまりにも明るい仲間たち。

 

「はい、じゃあ今日はここまで!みんなも疲れているだろうし、夜更かししちゃだめですよ?」

「はーい、めぐねえ」

「わかった、めぐねえ」

「おやすみなさーい」

「…はい、おやすみなさい」

 

 これからも辛く、苦しい事が山のように立ちはだかるだろう。

 

「ただいまー」

「……うげ。血まみれで帰ってくんなよ。ほら表に出な」

「センセー。ヤンキーに絡まれてまーす」

「洗ってやるから外に出ろって言ってんだよ!」

「あらあら…」

 

 それでも、彼女たちと一緒なら、なんとかなっていくはずだ。

 大丈夫。へいき、へいき。 

 

 

 

 

 

 

 

【つづく】

 

 

 

 




あとは完走した感想とおまけ回で終わりです。

次回の更新はなまこです。

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