すぺーすびーすと!~ネクサス怪獣擬人化作戦~   作:地獄星バロー

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わたしの名前は古紋アキ。どこにでもいるような新人OLの女性!
ある朝、今日も仕事しに会社に行こうとベットから起きたら、自分のことを異生獣(スペースビースト)と名乗る変な娘・ノスフェルと出会い、そして暮らすことになってしまった。
今日はそんな記念すべき生涯後悔しそうな初晩。人間じゃないノスフェルのことだから絶対家の物々荒らしてる気がしてならない。なのでわたしは今日はなるべく早くに帰ってきたわけだけど……。



#2人間生活って何ですか?(教えるのは大変!もうロスト・ソウル寸前……)

「ただい…はぁ、もう勘弁してよ……」

 

ある程度予想していたとは言え、ゴチャゴチャに散乱している本棚や小道具。その中心でノスフェルは子供のような純粋な仕草で木っ端微塵に学生時代に描いた絵を粉砕する。掃除嫌いなわたしですら嫌悪しそうな汚れっぷりにわたしは絶句した。まさかここまで無茶苦茶にされてしまうとは……。

 

「いてて……なんですかコレ?…………あっ、アキちゃん様ァ♡お帰りなさい!」

 

 

案の定、ノスフェルは家を荒らしていた。まぁアニメや漫画でよく見る異種族との生活ギャップあるあるのド定番かもしれないけどさっ……。怒りをなるべく露わにしないよう心に押さえ込んで返事をした。

 

「うん……ただいま……ノスフェル」

 

とりあえずわたしはまだ荒らされていない安全圏に荷物を置いて、片付けられそうなところから目を配る。するとどうであろうか、冷蔵庫が空きっぱなしで野菜や果物が床に転がり込んでいるではないか。嫌な予感がしたので、さっとノスフェルの方を再び向いた。

 

「アキちゃん様、ところでこの黄色い棒みたいなのはなんですかー? もしかして私とアキちゃん様の練習用のアレですか? もぉーアキちゃん様って積極的♡」

 

わたしがノスフェルの言いたいことを理解するまでそう長くはかからなかった。なんでこの娘は胸だけじゃなくこうもそういうネタも豊満なの? それに冗談でもわたしは女なんだからノスフェルなんかとしたくなんかない! 私は少し赤面になりながらも私は叫んだ。

 

「腐るからさっさとバナナを冷蔵庫に閉まって!」

 

「えー、もぉう、アキちゃん様ったら意地悪♡」

 

ううう……。なんでこんな目に……。このままじゃいつわたしの貞操を奪われてもおかしくないよ。なんとしてでもノスフェルと異種姦の関係になるだけは避けないと。第一わたしもノスフェルも女性なんだし、そっち系の道には間違っても行きたくない!!

 

「わたしはそぉーゆうエロ発言は嫌いなの! というかどうして異星獣の癖にそんなこと詳しいのよ!」

 

「なに言ってるんですか! 生命を次世代に繋ぐには大事なことですよ! それと私達スペースビーストは振動波でお互いの得た情報を共有することが出来ますからね!!」

 

「いやいやそう言うことじゃなくてね、ノスフェル……」

 

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「――でもって、この道具はこう使うの。分かった、ノスフェル?」

 

「なぁぁーるほど! わっかりましたぁ! 家事のことはオールインプットしました! あとはお任せください!!」

 

ふぅ……人に物を教えるってこんなに大変だっなんて。ノスフェルが日本語を理解していたことが不幸中の幸いだよ、なんせ海外ならワン、ツゥースリーで統括してるものをいっ『ぽん』、に『ほん』、さん『ぼん』。いちまい、にまい、さんまい。そしてひとり、ふたり、さんにん……って細々と分けたりしてるもんね。親が子供に基礎的な教育をする際の辛さが気持ちが見に締めて理解したよ。でもノスフェルが覚えが早いお陰で助かった。これもスペースビーストの特徴なのかな? 色々と部屋も片付いて落ち着いてきたのでわたしは気になったことをノスフェルに聞いてみた。

 

「そう言えばノスフェルはスペースビースト、、、なんだよね? わたし達人間と違って何か凄いこととか出来るの?」

 

「はいっっ! よくぞ聞いてくれました!!もっちろん沢山ありますよ! 私の場合、例えば……」

 

「ひぃっっ!!!」

 

ノスフェルがそう言った途端、とんでもないことが起きて思わずギョッとしたわたしは腰が抜けてしまった。なぜならば一瞬で彼女の爪が人技とは思えない速さで長く、そして鋭く変わったのだ。恐る恐るわたしは聞いてみる。

 

「そそ……それって、どう使うのよ?」

 

「そうですねぇ……昔は無作為に動いてる肉達を適当に斬り刻んでましたけど、今はアキちゃん様に刃向かう愚弄ども全員にですかね!!」

 

うっふぇ……。あとお願いだからもうやめてっ! 気持ちは嬉しいけど色んな法律に引っかかっちゃう! 爪だけに!!

 

「ほ……他には?」

 

続いてノスフェルは舌を長く伸ばして、わたしの顔をぐるぐる巻きにする。息苦しくなり、思わず喘ぎ声が出そうになる。

 

「うふぇっと、ふぉんにゃひゅうに、アキちゃん様をペロペロしぇきるひょどひぃしゃをにょびゃしゅこともしぇきます!!(えっと、こんなに風に、アキちゃん様をペロペロできるほど舌を伸ばすこともできます!)」

 

「うっふぇ……気持ち悪いし、苦しいからさっさと離して!! それで他には?」

 

ノスフェルは舌を元に戻して、少しうずくまってから答えた。

 

「うーーん……あ! ダークボウルって個人的に私は呼んでるんですけど、手からドス赤黒い球体をぶつける飛び道具もあります♡これでいつでもアキちゃん様を守れますよ!!……あれっ、これってダークじゃなくてアームって言うんでしたっけ? まぁ……どっちでもいいですけどねっっっ!!!」

 

そう言いながら窓を開いたノスフェルは手から闇のオーラがぷんぷん纏った球体を作り出して投げ飛ばした。物凄い勢いと爆発音がわたしの耳をつんざき、慌ててベランダに出て見上げてみれば、雲にぽっかりと空いた穴が出来ていた。コレはヤバイ……。

 

「ホントに物騒だからそれもこれも使用禁止!!」

 

「えーそんなぁ……あっ! でも戦い以外にも使える能力ありますよぅ♪」

 

ノスフェルは残念そうにしながらもポンと手を叩いてから、ほんの少しだけ頬を赤くした。そんなことには目も触れずに、わたしは興味津々に聞いてみる。

 

「え、ホント? 例えば例えば?」

 

するとなんということだろう。

 

ノスフェルがヒョイと手をクロスしてから怪しいポーズをしたかと思うと、なんとわたしそっくりの人間みたいなものが目の前に現れたのだ。

 

……っえ!?

 

 

こ……これはどういう………???

 

「これはビーストヒューマンって言って、私が念じた人間の分身をそっくりそのまま召喚出来るのですよ! 私はビーストヒューマンを使って光の勢力との戦闘前によくシュミレーションをしてました!」

 

なるほど……元々戦闘民族みたいなノスフェルから見れば凄い便利な機能だ。待てよ、これって上手く活かせばわたしの仕事にも役立つんじゃ……!!

 

「おぉ〜、それは凄いね! わたしも上司に大事なプレゼン発表する前に使ってみたいよ!」

 

「わっかりましたぁ! いつでもお貸ししますよ! あ、でも、昼の時間帯はちょっと私の方でも使っているのでその時は無理ですよ?」

 

「え? ノスフェルも本番に向けて何かの練習してるの? それも誰に?」

 

「え、えっと……」

 

 

途端にノスフェルの顔色が真っ赤っかになってもじもじし始める。ノスフェルが強いことは既に他の能力を見て充分理解したつもりだけど、それでも練習無しじゃ勝てない相手がいるのかな? 数分程もじもじしてから、ようやくノスフェルが口に出した。

 

「それはっ……アキちゃん様です!」

 

「え」

 

「だって〜、今晩〜、共に夜を過ごすじゃないですか〜! その時に〜、しっかりと成功出来るように〜色々と練習しておいた方が……グへへへ〜〜!!」

 

ノスフェルが自らなにを露見したのか、さっきのバナナよりも早く判断したわたしは、とうとう恥じらいや恐怖を超えて、感情がぷつんと切れてしまった。わたしはゆっくりとノスフェルの元へ足を進める。

 

「ノォスゥフェルゥ……」

 

「ん? もも、もしかして早速してくれるんですか!? ありがとうアキちゃんさっ………」

 

 

 

 

「てめぇよぉ……やっていいこととダメなことがあんだろうよぉっ! 調子に乗ってんじゃねぇ!!!」

 

「ひぇっ!? アキ…ちゃん、様……?」

 

「第一、なんだその気持ち悪い呼び方は……ぼくに対してどの面下げて言ってんだゴラァァッッーー!!!!!!」

 

「ごぉ……ごめぇんなしゃぁぁぁぁい!!!!」

 

この後むちゃくちゃ説教した。

 

ノスフェルはまだ知らなかった。わたしには二つの性格があるということを。決して多重人格というわけではないが、ゲームなどをしてると夢中になって口調が変わる人や、ストレスが溜まったときにドスの効いた声調になったりする人がいるように、わたしにも過大なストレス又は嬉しい物事が蓄積してしまうと、性格が変わってしまう人間だったのだ。

 

どうやらわたしはストレスが溜まると、わたしの場合、男の子のようなヤクザ口調になるらしい。どうしてこんな風になってしまったか、はっきりとは覚えてないけど、多分子供の頃からそうだったとは思う。きっと親の遺伝だろう。怒りが収まったわたしははっと我に返り、ボロ泣きさせてしまったノスフェルを見て少し複雑な罪悪感が出てきてしまった。

 

「ぐすん……」

 

「まぁ、なんだ。その、わたしも……ゴメン。ストレスとか溜まると、わたしって気が付いたら男気が溢れる性格になっちゃうんだ。……変だよね、こんなの」

 

ノスフェルの目の不元には涙が流れたあとが付いていた。その白い目をぐしゃぐしゃにして泣き続けていたんだ。こんなにわたしのために涙を流しくれた人なんてお母さんやお父さんの次だ。なんで自分の感情をセーブできなかったんだろう。異生獣相手に申し訳ない気持ちが湧いて居心地が少し悪くなってしまった。

 

「いえ……私もすみましぇん……練習は今度から週に一度だけにします」

 

 

だめだこりゃ……。

 

でももう自然と怒りは湧いておらず、寧ろちょっとした嬉しさが込み上げてきたような気がしていた。

ノスフェルっていう『すぺーすびーすと』がどんな娘で、どういうことが出来て、どんなにわたしのことを愛してくれるか分かった気がする。いいや、はっきりと分かった。あんまり人には知られたくなかったわたしの悪い性格めこんなにもすんなりと受け入れてくれたし。恋人は流石に嫌だけど、ずっとずっと友達でありたいとちょっとだけ思っているわたしがいた。

 

「……それなら許してあげる」

 

さて、と。

とりあえず家事については基本的な点は大体分かってくれたようだし、次は外に出て人と会ったらどういう対応をすれば良いのか教えないと。ふとした拍子にノスフェルが人に向かってあのダークボウルとか投げ付けたり爪や舌で近所の人を殺したり、、、なんてことがあったら大問題だ。人間のマナーを守りつつ、尚且つどのように人と接するのか早いとこビシバシ鍛えとかなきゃ。でも今は真っ暗で遅いし、明日は珍しく仕事がお休みだから、今日はもういっか。

 

「じゃっ、今日はもう遅いから、さっさとお風呂に入って、一緒に寝よっか。ノスフェル」

 

「一緒に寝れる……♡。で、でも、私なんかが寝て良いんですか? 絶対私、感情を止められませんよ……」

 

「何言ってるの、いまベットは一つしかないし、これから一緒に暮らしていくことになるんだよ? わたし達もう家族みたいなものだよ。勿論そういう意味じゃないけど…….」

 

ノスフェルは少し前までわたしに怒られて落ち込んでいたが、数秒ぐらいわたしを見つめてから出会ってから一番の笑顔になって答えた。

 

「………はいっ! アキちゃん様!!」

 

「じゃあ明日は朝から外に出かけるからね! 人間のルールを学ぶためにも!!」

 

「りょーーかいですっ!!」

 

 

 

たまには寝てばっかの休日を過ごさなくたって良いだろう。今晩わたしがノスフェルに色んな基本的な点を教えてあげて、ノスフェルがそれら全部を受け入れてくれた。ヤバい性癖は心配しかないけれど、これほどわたしを想ってくれる人は親以外にほんっっとうに今までいなかったよ。

 

なら、しっかりとおもてなししなくちゃ!!

 







しかしこの時、わたしは気付かなかった。
ノスフェルがダークボウルを空に投げ飛ばしてから、遠くのビルからずっとわたし達の様子を見つめていた謎の少女がいたことを。


「……あの人間。俺達スペースビーストの強力な戦士であるノスフェルを服従させるとは……、




絶対に許さん!! 覚悟しておけ、人間。貴様は絶対にこの俺がブッ殺す!!!」


そこまで言って彼女はまるで幻影だったかのように一瞬でその場から消え去っていったのであった。

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