すぺーすびーすと!~ネクサス怪獣擬人化作戦~   作:地獄星バロー

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なんで?


「アキちゃん様、下がっててください!! ぐううっ……」



どうして?


「何故だ、ノスフェル? 何故なんだ? 何故人間を守る? はぁっっ!!」



なんでこうなっちゃっうの……?



「私は……、私はアキちゃん様と、この場所が好きだからぁぁぁ!!!!」



#3最初の刺客、ダークガルベロスの奇襲!(この星のレリックまでは壊さないで!)

時は遡ること半日前、家でノスフェルが作った朝食をとるところから物語は始まる。

 

「おはよーノスフェル……どうしてそんなにニコニコしてるの?」

 

「おはようございます、アキちゃん様! 当たり前ですよ、だって今日はアキちゃん様との初デートの日なんですから♡ あっ、ちゃんと昨日言われた通りに早速朝ご飯を作ってみましたよ! 是非食べてください♡」

 

「だからそれは人間社会のルールを学ぶためであって、決してデートじゃないからね!……おー! ホントにノスフェルが朝食作ってくれたんだ! ありが……」

 

そう言って、わたしは思わず膠着してしまった。テーブルの上にあったのはわたしが見たこともない不気味な食べ物の数々。う、嘘でしょ……。そもそもこれって、地球上に存在する物質なの……?

 

「うん……、まぁ、そうだよねぇー。料理なんて始めてだろうし……、最初は誰だって仕方ないよ……」

 

でもだからといって食べないのは折角作ってくれたノスフェルに対して失礼だ。わたしは早々に覚悟を決めて椅子に座る。箸を握るだけで震えてくる指をノスフェルに気づかれないように抑える。

 

「い、いただきます……」

 

やっぱり……まっっっっずぅぅぅぅいっっっ!!!!

 

「どうですかぁ?」

 

ノスフェルがニコニコで答える。気分はまるでメイドさんのようだ。でもわたしの気分は給食で脱脂粉乳を飲まされたあとみたいな感じだ。まるで切り株を食べさせられてるような味だった。なんとか吐き気を抑えながら必死に笑顔を作ってわたしは答える。

 

「うっ……うげぇ………美味しいよ、でもゔぇ……まだまだだね」

 

うん。あとでもう一度、御飯の作り方をノスフェルに仕込んで置かないといけないな。

 

 

対してノスフェルはと言うと、わたしの気も知れずに、

 

「えー!? そんなぁ……気合入れて作ったんですよぉ〜」

 

と可愛子振って悔しがっていた。しかしそのときに彼女の目には、何か悔しさだけではない何か……不安なものを感じさせた。

 

……気のせいだよね。

 

 

 

「アキちゃん様とデート〜♡ぐへへ……」

 

「だからっ、デートじゃないのっ!! 全く……マイペースなんだから!」

 

「まぁまぁいいじゃないですか! さっ、次行きましょうよ!」

 

「ちょっーと待った!! 今は赤信号、止まれだよ!!」

 

「えー!! でも赤は大チャンスですよ? 点滅し始めたときとか特にそうです!!」

 

「郷に入っては郷に従え。屁理屈は言わずにちゃんと覚えること!」

 

なんとか朝食を完食してひと準備をしてから、わたし達は外に出かけた。駅や公園、お店にコンビニやらと、色んなところへ巡っては満喫して楽しむ。ノスフェルに地球のルールや暮らし方を教えるためだ、でもつまらないんじゃもったいない。だからこれは決してデートではない……何度も言うけどノスフェルは女の子なんだし。

 

「なるほど! これが公衆トイレですか……中に入ってもいいですか?」

 

「良いけど……」

 

「やりましたぁ! わーーい!! さっ、アキちゃん様も一緒に……」

 

「ごめん、そっちは男子トイレだよ。あと滑りやすいから走らないでね」

 

「えっ……っていたぁっ!! そう言うことは先に言ってくださいよ……」

 

「ごめんごめん笑」

 

とまぁ、こんな風にわたし達はなんだかんだで楽しいひと時を過ごしていったのであった。そして時は流れる。

 

「じゃあ次はショッピングモールに行こっか」

 

「ショッピング……ってなんですか? スーパーマーケットと同じじゃないんですか?」

 

「うーん……そう言われるとちょっと難しいなぁ。とにかく大きな建物で、古今東西、色んなものが種類別に売ってあるの。食堂とかもあるんだよ」

 

「うわぁぁ……。それは楽しみですっ!」

 

「そうだね」

 

ノスフェルのスマイルにわたしも笑顔で返して、ふと思った。こうしてわたしは地球のことをノスフェルに教えていて、彼女はそれを全て受け入れてくれている。けれどもしもこれが真逆の立場だったらどうなっているのだろうか。わたしはスペースビーストが群がる暗黒の世界を受け入れられるのだろうか。闇の勢力とやらに身を任すことが出来るのだろうか。正直、わたしはそんな自身はない。太陽が輝くこんな昼間から堂々しながらノスフェルは、わたしとこの星を受け入れたんだ。考えてみれば信じられない話だ。

……そういえば、以前ノスフェルが言ってた闇の勢力だの光の勢力だのって……あれって一体どういうものなのだろう。

なんで光とか闇とかは対立しているのだろうか。

 

 

――そうか。わたしは、ノスフェルのことをもっと知りたかったんだ。

 

そう考え込みながらデパートに着く。

 

「おー! これがエスカレーターですか!! 凄い、勝手に上がっていってます!」

 

「……ねぇ、ノスフェル」

 

「ん? どうしたんですか? アキちゃん様?」

 

「前から気になってたんだけどさ、闇の勢力とか光の勢力とかって一体なんなの?」

 

「えー、今それ聞いちゃいます?」

 

「聞いちゃいます。ほら、エスカレーターに乗ろう」

 

「一緒にエスカレーターに乗りながら秘密を赤裸々する……♡分かりましたっ! じゃあ早速乗りましょ!!」

 

「えっ、わたし今なんか意味深なこと言った?」

 

わたし達はデパートの最上階を目指して、エスカレーターに足を踏み入れた。

 

 

 

「それでは説明します。えっと……闇の勢力にいる者はみんな暗い、真っ暗な世界、そして負の感情がある場所でしか生きられないんです」

 

「要するに、恐怖ってこと?」

 

「そうですね。反対に光はその逆。明るいところや、幸せの感情があるところだけです。だから、お互いの住処を守護し、繁栄する為に対立しているんですよ」

 

「ちょっと待った。この星は明るいよ? どうして闇の勢力のノスフェルがここにいられるの?」

 

「それはですね、地球には光と闇が同じくらいあるからですよ!……いろんな意味で」

 

色んな意味で……なるほど。確かに心の中に闇を抱え込む人達は多い。それに夜になれば光と闇は逆転するしね。

 

「もしかしたら私以外にも既に地球に潜伏してる異星獣達がいるかもしれませんねぇ……でも、」

 

「でも?」

 

「私が何よりこの世界で生きていけれるのは、他ならぬアキちゃん様のお陰です。始めてアキちゃん様の家に来てから私は暖かさと優しさを知りました。光や闇なんて関係ない。ここが私の家なんだなって」

 

「ノスフェル……」

 

「だから一生この私を下僕にして、いっぱいいっぱいやっていきましょうね♡」

 

「ノスフェルゥ……」

 

最上階に降りて、付近のお店を見ながら回る。10年に一度の感動を一瞬にして壊された気分だ。憎たらしい程にキラッキラッに輝いているノスフェルの笑顔に、わたしは拳骨を与える。

 

「あいたっ! 何するんですかっ!」

 

「なんとなく。じゃあ他にはなんかないの?」

 

「他にですか。そうですね……闇の勢力には異星獣ことスペースビーストの他にも、ウルティノイドという私達を使役できる闇の種族がいますよ。それに対して光の勢力には、ネクサスと呼ばれる受け継がれる光の種族や、来訪者とか言う……あれ? アキちゃん様、どうかしました?」

 

やば……話の途中だけど、めっちゃお腹が痛い。どうしようどうしようどうしよう。やっぱ朝のノスフェルのご飯が来ちゃったんだなぁ。

 

「ごめん……ちょっとトイレ。ノスフェル、そこの洋服屋さんを見て待ってて! 話は出てから聞くよ!」

 

「……分っかりましたぁ! 待ってます!!」

 

わたしは猛ダッシュで更衣室を探す。女子トイレ女子トイレ……。あった!

 

___________

_____

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ふう、助かった……。

 

 

数分後にトイレの個室から出たわたしはふうと少し安堵してから、急いで洗面所へと向かった。ノスフェルはきっと何かしら変なトラブルを作り出してそうだし、面倒なことが起きる前に、早いとこ戻らないと。そう思って手を洗い、トイレを出た。

 

「やっと見つけたぞ人間、貴様に話がある」

 

「ふぇっ……!?」

 

どうやらトラブルに巻き込まれていたのはわたしの方だったようだ。

 

 

更衣室を出たわたしの目の前に、茶髪な髪の毛に右目は白色、左目は黒色。真っ黒色の時期外れな癖のある形のマフラーを身に纏い、ボロボロな紺色のユニフォームを着た高校生くらいの少女が、まるで対戦相手を探し回る飢えたボクサーのようにわたしを睨みつけていた。

 

 

なんだ、この娘のこの格好……。普通じゃない。明らかに人間じゃないよ。だってよくよく見たら、彼女の背中に尻尾が生えてるもん。

 

――間違いない。この娘は異生獣(スペースビースト)だ。

 

まさか話って……。

 

「何が目的なの……?」

 

その少女は足が少し震えているわたしを見逃さずに言い放った。

 

「ほう……貴様、俺の正体に気付くとはな。流石ノスフェルを従わせているだけはあるようだな。」

 

その格好じゃ誰でも怪しむよ。あと従わせてなんかない、本人がわたしと暮らしたいって言ってるから一緒にいるんだ。

 

「今更自己弁護をしたって無駄だ。闇の勢力の重要な戦力、ノスフェルをたぶらかした貴様を絶対に許さない……」

 

 

あ……なんか嫌な予感。わたしは目を逸らして逃げられそうな場所を探しながら後退りする。

 

 

「俺が貴様をブッ殺す!!」

 

やっぱりぃーー!

 

「ま、待ってよ!? 話せば分かるって!!」

 

「人間ごときが図に乗るな。俺を怒らせるんじゃ……ねぇぇっ!」

 

彼女はマフラーの両端から火炎弾的なのを放射してわたしに襲いかかる。

 

「うわぁっ!?」

 

間一髪で少女の攻撃を避ける。トイレの入り口が真っ黒に焦げた。流石に周りの人もこれには驚いてるよね。わたしは周りを見回した。

 

人々はわたし達に見向きもしてない。

 

……おかしい、誰も気付いてないなんて。それどころかデパートの空間が徐々に歪み始めている。何が起こってるの?

 

 

「残念だったな、人間! 俺は今なぁ、俺とアンタだけしかいない空間、ダークフィールドを展開してやったんだ。だから貴様はここから逃げられない。ついでに言うと、焼け焦げたトイレは俺が貴様に見せている幻影だ。」

 

 

な、にそれ……つまりはわたし、閉じ込められているってこと!? 脱出不可能じゃない! 幻影って、ノスフェルが持ってる能力じゃなかった。スペースビーストって他にも色んな力を持っているんだね。てか、これってマジでヤバくない!?!?

 

「俺の名はダークガルベロス。さぁ、絶望を味わって死ぬがいい……喰らえっ!」

 

ダークガルベロスと名乗る彼女はそう言ったと同時に、わたしに狙いを定めて飛びかかってくる。

 

「やっ、やめてぇっ!!」

 

わたしは覚悟をして目を瞑った。

 

 

ああ……どうすれば……わたしはこのまま、死んじゃうのかな……

 

 

 

 

 

まだ話の続き、聞けてないよ。

 

 

ノスフェルっ……。

 

 

もう一度、もう一度あの憎たらしくて、キラキラしたノスフェルの笑顔が見たい。

 

 

見たいよ……。

 

 

 

 

 

グシャァッと音が響いた。とてつもなく体中が痛………くない!?

 

わたしは目を開ける。

 

ダークガルベロスの手を抑えていた彼女(ノスフェル)の背中があった。

 

 

「ノスフェル……?」

 

 

「ごめんなさいアキちゃん様。私は待つのが嫌いなんですっ……」

 

ノスフェルの白い目から1滴、涙が出ていた。でも、憎たらしいくらい最高にキラキラしていた目だった。

 

「ノスフェル……。貴様、どうして人間を守る俺がアンタを助けようとしているんだぞ……」

 

「………ガルベロス。君は間違ってるよ、確かにこの町は私達が住むには眩し過ぎる。けど、それ以上に……私はそれ以上にっ―― ――なんだ!!」

 

 

「きゃっ!」

 

二人が衝突した衝撃で激しい爆発音がして、そのあとはよく聞こえなかった。でも既にその答えは知っているような気がする。

 

「アキちゃん様、下がっててください!」

 

「うん……ありがと」

 

ノスフェルを信じよう。わたしを信じてくれたんだから。

 

「ぐううっ……」

 

 

「何故だ、ノスフェル? 何故なんだ? 何故人間を守る? はぁっっ!!」

 

 

「私は……、私はアキちゃん様と、この場所が好きだからぁぁぁ!!!!」

 

 

わたしを殺してかつての仲間を取り戻そうとする者と、わたしを守ってかつての仲間に理解させようとする者。

 

ノスフェルとダークガルベロス、二人の『すぺーすびーすと』は人並みとは思えない、驚異的な速さと動き戦闘を始めたのであった……。


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