すぺーすびーすと!~ネクサス怪獣擬人化作戦~   作:地獄星バロー

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わたしの名前は古紋アキ。どこにでもいるような新人OLの女性!
ひょんなことから異生獣(スペースビースト)と名乗る娘・ノスフェルとわたしは一緒に暮らすことになってしまった。
そんなノスフェルって確か『闇の勢力』って所に属してるらしいけど……、逆にそれと敵対している『光の勢力』って一体どんなものなんだろう? 知りたいような、知りたくないような……。


#6光の勢力-ネクサス-の進撃!(ウルトラマンとは違うらしい!?)

「もぉぉ……またアンタなの……」

 

 

「まぁまぁそう言うな、今日こそは取材させてくれよ! な?」

 

 

はー、どうしてこんなことになってしまうのかなぁ……。

状況を整理すると、今日の仕事は珍しく定時前に終わった。余裕を持て余したわたしはノスフェルにメールである約束をした。なんだかんだでノスフェルも人間社会に溶け込み始めているのだ。数週間前、わたしが昔使っていたスマホを譲渡してあげたら、なんともう完全に使いこなせるようになっていた。ちょっとちょっと、そんなずば抜けた学習能力ずるくない? ……そういえばノスフェルも以前ビースト達は振動波を利用して情報を共有するとかなんとか言ってたし、まぁ当然と言えば当然なのかな。それで話を戻して、普段から勝手に晩ご飯を作ってしまうノスフェルに代わって、今日こそはわたしが作るから任せてっ、と返信してからスーパーに寄って食材を買い終わってかわたしの目の前にはいつかのカメラマンが待ち伏せていた、という現在に至るわけなのだ。

全く……なんなの、このストーカーは!!

 

 

「そう言えば、ちゃんと自己紹介出来てなかったよな。俺の名前は姫 隼也(ひめ しゅんや)。世の中の理不尽な不正を全部暴く正義のジャーナリストってところかな。よろしく」

 

あーもぉう! 早く帰る予定だったのに……めんどくさい!!

 

「別に聞いてないですしよろしくしませんから……。はぁ、分かりました。要件なら聞いてあげますからさっさ言ってください、姫さん」

 

そう呼んだら姫さんは顔を少し赤らめてすぐに言い返す。

 

「ひっ、姫さんって言うな!………コホン、それで最近この街を騒がしている女性達がいるんだが……古紋さん、何か心当たりはあったりしないか?」

 

「なっ……やはりわたしの名前知ってたんですね……」

 

「だから前言っただろ、俺はアンタに用があるんだ、と。それで古紋さん、結局どうなんだ?」

 

わたしの脳裏にノスフェル、そしてガルベロスが過った。いきなりそんなことを聞かれたから少しビクッとしちゃったけど、表面に出さないように心拍を整えてから答える。

 

「……知らないけど」

 

「そうか、なら良かった。アンタは最後の希望だからな」

 

最後の希望? ますますこの人が分からなくなって来た。怖い、通報した方がいいかな……。

 

「……あの、最後の希望って」

 

「いや、それはこっちの話だ。まぁそれでな、俺が言うその女性達、実は人間じゃねぇんだよ」

 

「げっ……」

 

まさか。

 

「ん? どうした?」

 

いや、そんなはずは無いよね。

 

「い、いえ。なんでも無いです……」

 

わたしは何かとてつもない嫌な予感に襲われていた。それもそのはず、ノスフェルやガルベロスの様子を見ていてわたしは、姫さんが言う『彼女ら(異星獣)』が明るみにはならないだろうと勝手に信じ切っていたからだ。こういう場合、姫さんみたいな人に何か漏れてしまうのは非常に良くない空気が来ている。いつの時代も、マスコミとは危険な存在なんだ。TLT社に入ってからより一層痛感するようになった。

 

……ってことはこの状況、つまり姫さんはスペースビースト達に関する何かを掴んでしまった、ってことだよね。もしやノスフェルやガルベロスがわたしの知らないところで何かやらかしたとかじゃないよね……。額の汗が止まらない。

 

それに、始めてノスフェルと一緒に出かけた時に、既に他の仲間が潜伏しているかもしれないとか言ってたし、他の方が何かやらかしたとかなんじゃっ……? わたしは平常心を必死に保ちながら聞いてみた。

 

「へ、へぇ~。じゃあそれって何なんですか?」

 

むぅ……隠すのって苦手だ。わたしのわざとらしい演技を姫さんがジッと睨んでから答えた。どうやら姫さんは予想以上に『彼女ら』のことを知っていたようだ。

 

「ああ。そいつらの名は宇宙からやってきた異生獣、スペースビースト。人間の闇を喰らう悪魔さ………一見嘘みたいな話なんだけどな」

 

「どぉっ!! どうしてあなたがすぺーす……。あ、いえ…あの、」

 

嘘……。わたし以外がスペースビーストに出会ったとしても、まさか自分以外の人間がスペースビーストについて知っているなんて……。思わず声をあげてしまった。しかも姫さんの言動からすると、ノスフェルが属している『闇の勢力』についても何か知っているようだ。わたしは姫さんにバレないように詮索してみる。

 

「あの……どうして姫さんはそんなに詳しいんですか?」

 

「だから姫さん言うな! ったく。信じられねぇ話なんだが、実は俺……」

 

そこまで言いかけたところで姫さんは遠くに何かを発見した素振りを見せて、顔色を変えた。すぐにわたしの手を握って走り出す。

 

「きゃっ、急になんですか!!」

 

「良いから! とにかくここを離れるぞ!!」

 

いつものヘラヘラした感じの姫さんとは打って変わって真剣な眼差しで言われ、つい引き込まれてしまった。わたしは抵抗せず、姫さんに引っ張りられながら人気の少ない通りへと駆け込んで行った。

 

まるで何かから逃げるように。

 

……しかし余りにも姫さんの足が速い。まるでジェット機に手を持ってかれた気分だ。わたしの足に疲労が一気に蓄積してくる。

 

「ちょっと! 速すぎません? 少しゆっくり走ってくださいってー!!」

 

 

________________

_______

__

 

わたし達は人通りが少ない通りの中で足を止めて、しばしの休憩を取っていた。

 

「はぁ………はぁ………一体全体何がどうなっているんですか、姫さん」

 

「だから姫さん言うなって!……奴等、ビーストが近くにいたんだ。それもアンタを狙っていてな」

 

「ビーストが!? そんな!」

 

すぐにわたしは必至に辺りを見回す。しかしそれらしい人なんてここにはいない。

 

ノスフェルは家で家事をしっかりやってくれてるはず、ガルベロスは時間的にまだ学校だろう。

 

どうやらわたしにはビーストの体質があるのかもしれない。じゃあ今度は一体誰が何の目的でわたしを狙っているの? 刺客……またガルベロスみたいのが来るってこと?

 

でも、それならばまた和解したい。仲良くなりたい! 種族は違えど、仲良くなる道はきっとあるはずだもん。

 

「……古紋さん、お前本当にもうビーストに出会ってたりなんてねぇよな? さっきから妙に反応がおかしいし」

 

ギクっ……マズい、ここでバレるわけには。必死に話題を変える。

 

「いえいえわたしは別にそんなつもりじゃ! ……でも姫さん。もしですよ、もし仮にそのスペースビーストがいるとしても、別に良いんじゃないんですか? わたしは分かり合えると思います」

 

姫さんは険しい顔で答えた。

 

「そんなことは絶対にあり得ねぇ。奴等は情のカケラも無い、己の勢力の為なら容赦無く人間の恐怖ごと食い殺すんだぞ、だから俺はそいつらを狩っている。一匹も残らずな」

 

「狩る……? 彼女が、彼女達に情のカケラもないなんて、そんなの……!!」

 

違う。絶対に間違ってる。

 

わたしはノスフェルとガルベロスとの短いけれど深い出来事を思い返す。

 

 

わたしと出会って、少しずつだけど確かに彼女達は変わった。

 

絶対に人間と、わたし達と仲良くなれる。

 

たとえ闇の勢力に属しているからって殺すなんて……、絶対に駄目なんだ! 姫さんを、わたしが止めなきゃ!!

 

「狩るなんて、そんなの良いはずありません! きっと彼女達とだって分かり合えますよ!! きっといい子だっているはずなんで………きゃっ!?!?」

 

わたしが言い切る前に、両足に突然にゅるにゅるした何かに触れた感触を感じ、恐る恐る足下を見る。

 

〈ぐちょぉ……べちゃあ……〉

 

「ひぃっ!?」

 

わたしの両足に触手のような何かが絡みついていた。 うへぇ……気持ち悪い……。徐々に上半身目指して侵食してくる触手。わたしが驚愕と羞恥心に見舞われて思考停止して間に触手が伸びてきた先へと引っ張られていく。

 

「なっ…なにこれ……姫さん!」

 

「マズい! 古紋さん、早くこっちに!!」

 

暗い路地裏にいる何かにう引き込まれそうなわたしに姫さんが手を伸ばす。

 

「助け……いひぃっ!!」

 

本当にこのままじゃ捕まりそうだ。わたしは例え姫さんであろうと迷わず掴もうとするも、足が思うように動かせない。更にその両手から腕までにも新たな触手が絡みついてきた。

 

ヌメヌメした感触がダイレクトに伝わる。

 

「きゃあっっ! やめてぇっ!!」

 

「古紋さんっ!!」

 

姫さんの助力も虚しく、わたしは触手の主のところまで引っ張られて遂に捕らわれてしまった。全身に触手が絡み付き、体力が座れていくような目眩を感じた。

 

「あふぁっ……!! もう、らめっ……」

 

ううっ…! 最悪な破廉恥だっ……!! 触手の主は姫さんに向かって甲高い声で叫ぶ。

 

「ネクサス……今度こそ貴様を殺す! 今こそ我が同胞の恨み、はらさせてもらうわよ!!」

 

触手の主、その正体はやはり少女のものだった。つまり、彼女も異星獣……って!! なんで桃色のスケスケコートをほぼほぼすっぽんぽんのまま着てるのよ! 完全にアウトだよ!? 他には両腕が触手になっていて、わたしの身動きが一切取れないよう完全に拘束している。おまけに身体中が水分出てきているようなヌメヌメした気色悪い感触に見舞われていた。マズいマズいマズい………色んな意味で、このままじゃわたし死んじゃうよ!!

 

「ペドレオン、それなら正々堂々と俺を殺れよ! 古紋さんを放せ!」

 

「いやぁねぇ。アンタを倒すのに手段なんていらないわ!」

 

姫さんのことをネクサスと呼んでいて、姫さんからはペドレオンと呼ばれている彼女もスペースビーストでしょうね。きっと既に姫さんが狩った複数の仲間達(スペースビースト)の仇をとるためにわたしを狙ったんだ。

 

「さぁて、ネクサスの餌食として捕まってもらったメスをどうしてやりましょうかねぇ~」

 

触手がデリケートなところまで侵入してくる。

 

「あはぁっ!!ちょっ、やめてっ……!!」

 

ほんとにこれ以上はマズいから!

 

この状況、流石の姫さんも手出しが出来るわけ無いし、そもそも姫さんは人間でしかも男性だ。異生獣である彼女なんかに勝ち目なんて無い。男の前でこんな目には会いたくなかった。気持ち悪い同人誌の展開なんかわたしの身には起きる筈ないと信じて疑わなかったちょっと前のわたしを返して……。

 

もうおしまいだ。全てペドレオンによって晒される。どうにでもなれ。わたしは覚悟して目をつぶった。これじゃあ和解どころじゃないよ……。

 

 

助けてっ……ノスフェル……!!!

 

 

 

 

『ジュアッッ!!』

 

 

 

「ぐわぁああっっ!!」

 

 

 

突然勇ましい声が響いたと思ったら、今度はペドレオンが悲鳴をあげて触手が全て解けてしまった。何が起きてるのか分からないままわたしは転がり落ちる。

 

「えっ……?」

 

わたしは目を開けて状況を確認する。

 

 

 

そこには、さっきまで姫さんがいた場所に赤色の宇宙人……みたいな、人間のようで人間じゃない何かが立っていた。もしかして、また新しいスペースビースト!?

 

「おのれネクサス……今日こそ貴様を殺してあげるわっ!」

 

ペドレオンが触手から火球や電撃を放ちながら宇宙人の元へと突撃する。対して赤色の宇宙人は微動だにせずにゆっくりと前進する。

 

 

ペドレオンと戦ってる……もしかしてこっちは良いビースト、なの……?

 

 

 

『ジェイヤアッ!!!』

 

 

「うわぁああっ!?!?」

 

 

赤い宇宙人は素早くペドレオンの急所へと回り、躊躇せずに飛び蹴りをする。素早い動きに翻弄されてペドレオンは倒れ込んだ。

 

「おのれっ……絶対に今日こそは貴様を倒して見せるぞ ……ネクサス!」

 

 

ネクサス……。そう言えばさっきから聞くそのワード、前にどっかで聞いたことあるような……?

 

 

〜それに対して光の勢力にはネクサスと呼ばれる受け継がれる光の種族や、来訪者とか言う……~

 

思い出したっ――。腹痛が酷くてすぐには思い出せなかったけど、確かノスフェルが説明してた光の勢力にもそんな感じの名前が――!!

 

 

『俺もだ、一気に決めさせてもらうぞ。ハァッ!』

 

どこかで聞いたような声調で喋る赤い宇宙人、もといネクサスはそう言いながら右手を高く掲げる。不思議なことに、辺りにオレンジ色のモヤモヤが立ち込めて、以前ガルベロスがわたしにやったような変な空間と似た感じな状況へと徐々に変わっていった。

 

わたしだけで無く、ペドレオンも驚きを隠せない。

 

「これは……」

 

『メタフィールドを展開した。これでお前たちスペースビーストは完全に現実世界から切り離してやった。それと、このメタフィールドにはスペースビーストの体力を徐々に削る効果もあってな』

 

「なにっ!? ネクサス……絶対に許さんっっ!!!」

 

ペドレオンが触手を伸ばしてネクサスの動きを封じようと巻きつける。

 

『ジュワァッ!』

 

しかしネクサスはいとも簡単に触手を破り、攻撃態勢に入った。ペドレオンの触手は吹き飛び、苦しそうに喘ぐ。

 

「ぎぃやぁっ!うぐぐ……そんな……アタシの触手がぁ……」

 

『これでトドメだ……』

 

「ちょっと……」

 

 

待って。殺すなんて駄目。

 

やめてぇっ!

 

『ジュウゥワアッッ!!!!』

 

 

ネクサスはペドレオン目掛けて両腕をL字に組んで破壊光線を放った。

 

 

「ぐぎゃあ!……うっ………うぐっ……」

 

ペドレオンに見事に命中し、苦しそうに倒れ込む。

 

「そんな……こんなこと……」

 

わたしは思わずペドレオンの元に駆け寄った。せめてペドレオンの最期を見届けてやりたい。

 

「ペドレオン、だいじょぉ……」

 

ネクサスがわたしに向かって叫ぶ。

 

『下がれっ!』

 

 

「えっ?」

 

 

「ぐぅ………お前だけでもぉっ!!! 死ねぇええっ!!!!」

 

ペドレオンはわたしを巻き込んで自爆しようと襲い掛かる。

 

「ひやぁっ!?!?」

 

 

 

 

 

大きな爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

『だから言っただろ、スペースビーストは容赦無く人を殺すって』

 

 

わたしはネクサスによってお姫様みたいに抱きかかえられていた。あの一瞬の出来事でも、素早くわたしを救助して爆発から逃れていたのだ。ネクサス……ペドレオンが姫さんにそう言った時から少し引っかかってた。だけど今ので話し方でようやく誰なのだが察したわたしは恥ずかしめに小言で返す。

 

「だからって……彼女を殺す必要無かったじゃないですか………姫さん」

 

 

 

ネクサスは人間の姿へと変える、というより戻ったって言うのかな。予想通り、その姿はやっぱり姫さんだった。

 

「……分かってんなら姫さんって言うな。女々しくて嫌なんだよ……。まぁいい、これで今回の任務は果たせたし」

 

「任務? もしかしてあの娘を殺したことなんですか!? そんなの絶対良くありませんっっ!!!」

 

「落ち着きなって古紋さん。スペースビーストは凶悪な存在なんだぜ。人類にとっても、ネクサスにとってもな」

 

「人類とか、ネクサスとかそう言うのじゃなくて……、なんかおかしいと思います!! だからネクサスだからって……ところでネクサスって何です?」

 

わたしは今までずっと疑問に思っていたことを姫さんに聞いた。

 

「……おいおい。ネクサスってのは、奴等、闇の勢力って言うんだけど、逆に俺達は」

 

「光の勢力、ですか?」

 

「分かってるじゃんか。そっ、ネクサスってのはその光の勢力の戦士達のことさ。ネクサスは正義のためにビーストに立ち向かう。だがこの地球では身体を保たせることが出来ねぇ。俺のように選ばれし人間(デュナミスト)と融合して、受け継いだ力で戦ってるってわけ。どうやら俺と融合したネクサスはジュネッスっ言うみたいだけど……」

 

「ちょっと待って! 正義とか言いながら彼女達を殺すのは全然理由になってないわ! 命はなによりも大事なんですよ!!」

 

「いやいや古紋さん…さっきのペドレオンで分かったっでしょ? 光こそ正義、闇は悪。それが一番重要なポイントなんだぜ。そこに古紋さん、アンタが中心となっている」

 

何言ってるの、わたしはただの人間だよ。

 

「わたしが中心……? もっと意味わかんないよ」

 

「まーその話はおいおい。いいか、古紋さん。これからアンタにはたくっっさんの闇の勢力の刺客が襲ってくるぞ。だからこれからは俺がアンタを守る」

 

「はっ……これから彼女達(すぺーすびーすと)がもっとわたしのところへ……?」

 

真偽がどうかは定かではないが、光の勢力である姫さんが嘘つくはずも無いか。

 

「そうだ、だから俺が来たんだっこと。奴等は危険だ。絶対にビーストに気を許すんじゃねぇぞ……」

 

「だから姫さんは今日までしつこく付けて来たんですね……でも……」

 

「でも?」

 

うーむ……。ただでさえ大変な毎日なのに、もっと大変なことになっちゃった。姫さんがわたしん家にまでこっそり着いてこないことを祈るばかりだ。わたしは光とか闇とかよく分かんないけど、本当はみんながみんな仲良くなれると思うんだ。無惨に散ったペドレオンのためにも、その意思を持ち続けるべきなんだと思う。

 

――それに、わたしにはノスフェルがいる。絶対にノスフェルと姫さんは出会わせては行けない。そんな気がした。寧ろそんな気しかしない。折角仕事帰りと言うのにこれから違う意味でもっと仕事が増えそうで辛い。

 

 

それにっ……。わたしは少し顔を赤らめて言った。

 

 

「姫さん、いつまでわたしを抱きかかえてれば気がすむんですかっ!!」

 

 

「あっ……ゴメン………」

 

 




「はぁ……ただいまー。ノスフェル、掃除とかちゃんとやった?」

「もぉー遅いですよ♡アキちゃん様! わたしを誰だと思ってるんですかぁ?」

「誰ってそりゃあ……おっ、ホントに家事やってる。ありがとうノスフェル!」

「げへへー♡もっと撫で撫でしてください! わたし頑張ったんでぐふぇっっ!!」

「調子に乗らないっ!」

「全く、アキちゃん様は素直じゃないんですから〜♡アキちゃん様、早く夜ご飯を作ってくださいね♪」

「うん!……って言いたいところだけど、ゴメン。わたしの負けだ、今日は色々と疲れた……」

「あらっ〜! やっぱりアキちゃん様には私がいないと駄目みたいですねっ♡♡良いですよ、’’今’’日’’も’’私が作ってあげますからっ!!」

「く……屈辱ッッ……!!」

何故だかはよく分からないけど、どうやらわたしは光と闇、両方の勢力に目を付けられてしまったらしい。

どっちに着くかなんて言われても今は仕事のことでいっぱいいっぱい。わたしはすぐに答えは出せない。でも、今ぐらいはまだ出なくてもいいよね。わたしのことはわたし自身で決めればいいだけなんだから。

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