すぺーすびーすと!~ネクサス怪獣擬人化作戦~   作:地獄星バロー

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あれ、なんか一年と四ヶ月間もわたし、リコに捕まってたような……。

と、とにかく前回までのあらすじ!

わたしの名前は古紋アキ、どこにでもいるような新人OLの女性。
ひょんなことから異生獣(スペースビースト)と名乗る娘・ノスフェルとわたしは一緒に暮らすことになってしまった。いつものように会社で仕事をしていたある日、わたしは同僚のリコに捕まってしまう。なんと彼女の正体は、スペースビーストの上司みたいなポジションであるウルティノイドの一人・ダークファウストだったの!! しかもリコは同性愛でわたしのことを狂愛してるからもう大変!? 果たして果たしてどうなっちゃうの、わたしっーー!?


「アキちゃん様ァァッーー!!!」

ノスフェルは走った。ネズミのようにとにかくすばしっこく、例え火の中水の中であろうと走り続けた。ビースト振動波でダークファウストの位置を感知して、アキのもとへ向かうガルベロスと情報を共有し合う。

〜落ち着くんだ、ノスフェル! 先に合流してからの方がいい!〜

「でも! アキちゃん様がっ!!」

〜相手はダークファウスト、俺達の元上司だぞ!? 下手すれば俺達は操られて返り討ちにされるがオチだ。今は待ってろ!!〜

「嫌です嫌です! 私は行きますからね!! 一刻の猶予も無いんですからっ……うぎゃぁっっ!?!?」

言い終わる前にノスフェルはゆらりと崩れ落ちる。突然周囲に黄色い花粉が散乱しており、もろにそれを吸い込んだノスフェルの全身は痺れて身動きが出来なくなってしまったのだ。

〜どうしたノスフェル!! この振動波……まさか、こんな時にか!?〜

ノスフェルは自慢の爪で花粉を振り払い、足の自由を取り戻して立ち上がった。

「ぐぐっ……こんな季節外れな花粉、絶対に人技ではありませんね……!! 日中は外に出ず、深夜の時間帯に活動する……、まさにブルームタイプのスペースビーストの特徴です!」

正体を見破ったノスフェルは地底から響く振動波を感知した。ノスフェルの勘はやはり当たっていたようだ。再び黄色い花粉が地中から放出される前にノスフェルは飛び上がって距離を取った。

「姿を現しなさい! ラフレイア!!」

その声を聞いて、コンクリートや電柱を木っ端微塵に粉砕して、地面からゆっくりとオレンジ色のワンピースの少女が現れる。両腕にはツルのような突起物を隠し持ち、頭には花弁のような黄色い帽子を被っている。そう、彼女こそが黄色い花粉を放出した異星獣・ラフレイアだ。普段は地底で暮らしていたせいか、泥だらけの彼女は日の当たる外に出るなり騒ぎ出す。

「ふはぁっ……ぷはぁっく……アスファルトあっっつ!!! 何よこの蒸し暑さ! 頭狂ってんじゃないの!!」

「へっへーん! 夜行性アンド出不精が仇となりましたね、ラフレイア!」

ノスフェルはそのまま指をビシッと指して元気よく叫ぶ。

「アキちゃん様が殺るなって言ってたこともありますし、今なら見逃してあげますよ。とっととお家にお帰りなさい!!」

ラフレイアはくしゃみをしながら答える。

「ふはぁっ、ふはぁっく……ふはぁっーーくしょん!! ……嫌わよ! 確かにこんな蒸し暑眩しい時間なんかに外に出たくなかったわよ! だからこうして闇ん中からファウスト様からの任務を遂行してたのに……。もうノスフェル! 足止めしてるんだからちゃんと足止めされてよね!!」

「足止め……!? やはり、ダークファウストは既に私達が来ることを見越して……」



〜TLT社・ダークフィールド〜

「……フフフ。あなた達が来ることくらい、容易に想像が付くじゃない。アキちゃんを誑かす私の部下なんて必要ない。必ず始末させちゃうんだから!」

ダークファウスト、リコは裏切り者であるノスフェルとガルベロスがもうじきアキを助けに来ることは既に把握していた。そのため、事前にラフレイアに命令を下して足止めし、亜空間の中に閉じ込め、意識を失っているアキと交わろうとしていたのだ。リコは全身を触手で縛りつけられ、服もはだけているアキの頬に手を触れた。

「さっ、アキちゃん!! 早いとこハネムーンの準備をしないとね!」

そう言ってリコはアキを眠姦しようと手を出した。


#8共同戦線!アキちゃん様を救い出せ!!(ファウストなんて怖くないもん!)

「もぉぉう! 早く痺れてよねっっ!! ふはぁっくしょん!!」

 

ノスフェルとラフレイアの戦闘は続く。周囲に爆発性のある花粉を撒き散らし、花粉が付着した建物が次々と爆発する。更にこの花粉には猛毒性があり、スペースビーストであるノスフェルが下手に吸い込むと麻痺してしまう。そのためノスフェルはとにかく逃げ回るしかなかった。

 

「このままじゃ、町が壊れてしまう! アキちゃん様を救うのが優先ですが、仕方ありません」

 

ノスフェルは手からダークボウルを放って応戦する。

 

「だってここは、私とアキちゃん様が末永く幸せに暮らす大切な場所ですからね!!」

 

ダークボウルを喰らったラフレイアは、地に足を着ける。

 

「ふはぁっっくしょん!! いったいじゃないノスフェル!!!」

 

一旦は花粉が止まるも、怒って再び放出しようとする。

 

「もう! 絶対許さないんだからッッ!!!」

 

しかし背後から火炎弾を浴びて、ラフレイアは尻餅を着いた。

 

「今度は何よっーー!! ……って、ファウスト様!?」

 

ラフレイアが振り向くと、なんとそこにはリコがいた。動揺するラフレイア。しかしノスフェルには見覚えのある少女の姿だった。

 

「あっ、ガルベロス! 来てくれたんですね!!」

 

「ばっ馬鹿! 幻影を見せてる最中に言ったらバレるだろ!!」

 

しかし動揺していたラフレイアには耳に入っておらず、全く気付いていない様子だ。

 

「そんな……、どうして……!!」

 

完全に隙を付いたガルベロスはマフラーを靡かせて、そのままラフレイアの両腕を噛み付くように拘束する。

 

「きゃああ!? ふはぁっくしょん!!」

 

ガルベロスの元にノスフェルは移動した。二人は身動きが封じられ、必死に抵抗するラフレイアを見つめた。ようやくリコが幻影で、その正体がガルベロスであったことに気付いたようだ。

 

「はっ!! ガルベロス!? よくも図っ……ふはくしょん!! くっ……はぁーなぁーせぇー!!!!」

 

ジタバタするラフレイアをみて、ガルベロスは呆れ顔でノスフェルに尋ねる。

 

「で、どーする? ノスフェル」

 

「このままギッタンギッタンに殺してやりたいところですが、きっとそれを知ったらアキちゃん様は悲しみます……。あっ、ところでどうしたんですか? その服、確かセーラー服――」

 

ガルベロスは赤面する。彼女は恥ずかしさからまだノスフェルに女子高生をやっていることを伝えてなかったのだ。

 

「言わんでいい言わんでいい! とにかく、コイツは死なない程度にボコしておくぞ!!」

 

「ですね! ……ふふっ」

 

「うっせー! 笑うな!!」

 

そう言って二人はラフレイアに迫った。

 

「や、ヤメロー! 私は決して光には屈しないぞ! 絶対に負けて溜ま」

 

このあとノスフェルとガルベロスの総攻撃を受けたラフレイアは呆気なくノックダウンし、ピヨピヨしてる間に土の中に埋められた。ついでに再び花粉を撒き散らさないよう帽子も粉砕され、呆気なく完全敗北を喫したのであった。

 

「さっ! 早く向かいましょう! ……ガ・ル・ちゃん!!」

 

セーラー服を着ていたことから、ノスフェルはガルベロスが自分より若い体付きだったことを思い出した。更に地球、そして日本には年上を敬う文化が深く根付いていたこともあり、ノスフェルニヤニヤしながら敢えてそう呼んだのだ。ガルベロスが何か言い返す前にすぐに走り出した。

 

「言ってくれるじゃんか……!!」

 

ガルベロスは羞恥心に見舞われながらも、ノスフェルを追いかけた。

 

 

 

ビースト振動波を頼りに、TLT社の元へ着いた二人。しかしこのまま直行するにはあまりにも二人の格好は怪し過ぎる。何せノスフェルは普段アキの家で家事をしていること主なので、いつも主婦のようなエプロン姿の格好でいることを多い。そして慌てて飛び出た今回もエプロンを着けたまま。その上ガルベロスはセーラー服だ。ただでさえスペースビーストであることをなんとか隠して周囲の人々と生活しているため、こんなところでいきなり主婦もどきとJKが会社に乱入したら、後々アキに多大なる迷惑がかかることは目に見えている。

 

「むぅ……ガルちゃん、どうします?」

 

「そうだな。一旦飛んで屋上から侵入しよう。これなら怪しまれねぇ!」

 

「ですね!」

 

二人は人目に付かない路地裏に回ってからジャンプ移動して屋上へと上がっていった。

 

「よっしゃ、これでいけるぜ! ……アキ!」

 

「ええ。待っててください! ……アキちゃん様!!」

 

そこにあのカメラマン、姫隼也も姿を現す。

 

「古紋さん! 今行くぞ!!」

 

「えっ」

 

刹那、互いに顔を見合わせた三人の間は静寂に包まれる。

 

 

三者三様に驚愕し、沈黙はすぐに破られた。

 

「お前ら……まさかノスフェルとガルベロスだな!?」

 

「げげっ! ネクサス!?」

 

「こんな時ってのにっ!!」

 

「上級スペースビーストが全く持って見つからないと思ったら……。お前ら、今まで一体どこに隠れやがった!?」

 

「へっへーんだ! 私達上級ビーストにかかれば特定の知的生命体以外の認識を阻害させることぐらい容易いんですよっ!!」

 

「だが逆にネクサスの位置を認識できなくなることも考慮すべきだったがな……」

 

「そんなことがお前たちに出来たとはな。だがもう関係ない、ここで倒させてもらうぞ!!」

 

隼也はネクサスの姿に変わり、戦闘態勢に入る。しかし二人は戦うことを拒んだ。

 

「お断りします! 今日はあなたの相手をしている場合じゃないんです。さっきも邪魔されましたし、これ以上時間はかけられません! 私はっ、私はアキちゃん様を助けなければいけないんです! だからさっさと帰ってください!!」

 

「そーだそーだ! これは俺達元闇の勢力としての問題だ! ネクサスは引っ込んでろ!!」

 

『アキちゃん様……?』

 

それ聞いた隼也は首を傾げた。そして、すぐにあることに気付く。

 

「もしかしてお前、それって古紋さんのことか? まさか、お前ら古紋さんと……」

 

「漸くお気付きでしたか、私達は古紋さんの忠実なる下僕なんですから」

 

「いや俺は下僕じゃねーし! まぁ……強いて言うなら、友達……かな。つぅーか、なんでお前がアキのことを知ってるんだよ!?」

 

『そうか、道理で古紋さんがビースト殲滅に対して非協力的だったわけか。お前らが古紋さんを惑わしたせいで!』

 

「いやはや全くですね……。私は毎日アキちゃん様の美貌、布団、食器、歯ブラシ、スカート、ブラジャー、パンツ……何もかもが惑わしてきてもうキュッッンキュッ…いえいえ大変でしたよ〜」

 

『そっちの意味の惑わすじゃない!』

 

隼也は暫く考え込み、後ろを向いた。

 

『……まぁいい。今日だけは一旦休戦としてやる。お前ら、力を貸してくれ』

 

「はい?」

 

『あのダークフィールドに乗り込むには、本来は来訪者が放つフェーズシフトウェーブによって発動するメタフィールドで書き換えなきゃいけない。しかし今の来訪者にはそんな余力は愚か、前の戦いで母星が消滅したこともあるから、生存者かいるかどうかすらも危ういところなんだ』

 

「はぁ……」

 

『だからお前たちの力も必要なんだ。不覚だが、どうやらお前らと目的は同じようだしな』

 

再びノスフェル達の方に振り向いた隼也。ノスフェルは死んだ魚のような白い目でありながも、真剣な眼差しで隼也・ネクサスの目を見つめる。

 

「一つ聞かせてください。アキちゃん様を助けるって約束しますか」

 

隼也はすぐに答えて手を差し伸べた。

 

『ああ、そのつもりできたんだ。経緯は知らんが、お前らもそうじゃないのか?』

 

ノスフェルはゆっくりと手を出して、隼也の手をちょびっとだけ握った。

 

「分かりました。今日だけですよ。光と闇が手を取り合うのは!」

 

『無論、そのつもりだ!』

 

その様子を見てガルベロスは驚く。無理もない。光の勢力と闇の勢力が共闘することなど、これまで一度もなかったことだ。

 

「おいおいマジかよ……。こうなりゃ意地でもやるしかねぇな!」

 

「ですね。行きましょう、ガルベロス!!」

 

そう言って三人は中に入り、ノスフェルとガルベロスの助力によってリコが造り出した異空間・ダークフィールドへ侵入したのだった。

 

________________________________________________________________________

 

今にもリコはアキと一線を越えようとしていた。

 

「はぁっう……や……め――」

 

「さぁアキちゃん……前戯はこれくらいにして、始めよっか」

 

「そこまでです!」

 

「これ以上アキに手出しすんな!」

 

間一髪のところで、三人は現場に到着。すんでのところで間に合ったのだ。ウルティノイドであるリコの姿を始めて視認したネクサスは思わず声をあげる。

 

『これが……ウルティノイドだと!? この迫力、ビーストとは格が違う!』

 

リコは不敵にほくそ笑んだ。

 

「そう。私はファウスト。光を飲み込む、無限の闇だよ・・・。だから、私とアキちゃんの始めてのコネクトを邪魔しないでよッ!!」

 

そう言ってリコ、即ちファウストは三人に攻撃を仕掛けてきた。

 

「はわっ!? ……流石ウルティノイド。何があろうと問答無用、ということですね!」

 

「ふんっ、面白い。全力で邪魔してやるよ!」

 

攻撃を躱したノスフェルとガルベロスはそれぞれの武器を構えた。

 

「望むところよ、裏切り者のビーストちゃん達!」

 

そう叫んだと同時に禍々しい波動を解き放つファウスト。闇の力が十二分に備わった弾丸が次々と飛ばしていく。

 

『ファウスト! お前が無関係な人間を闇に呑もうと、俺が振り払う!!』

 

攻撃を避けていたネクサスは両腕のカッターのような武器、アームドネクサスに光粒子エネルギーを集中させる。やがて光の粒子は刃の形に変形して、ファウストの動きを牽制した。

 

「痛っ! 足首はダメなのっ!!」

 

足首を負傷したファウストは金切り声をあげた。その腹いせとばかりに次々と周囲を爆発させていく。

 

「ぐはぁぁっっ!!」

 

「ふわぁぁあっ!!」

 

爆発に巻き込まれたノスフェルとガルベロスは悲鳴をあげた。更に間髪を入れずファウストは頭上に光弾を放って空中で分裂させて降らせていく。

 

「くっ……ダーククラスターか! いいだろう、一気に決めてやる!!」

 

攻撃を耐えたネクサスは、両腕をL字に組んで破壊光線を放つシークエンスを行う。

 

「――ジェイヤァァァッッ!!!」

 

攻撃は命中し、ファウストから煙が舞い上がる。

 

『やったか!?』

 

立ち上がったノスフェルは叫ぶ。

 

「まだです、それ生存フラグですからっ!」

 

ノスフェルの言う通り、ファウストは倒れていなかった。彼女はなんと闇のエネルギーで作り出した円形状のバリアで光線を防いでいたのだ。

 

「アッハッハァッッ――。ほんっと、爪が甘いね。ネクサス、アンタの光は私が食べてあげるっ!!」

 

『なにっ……ぐがぁぁぁ!!!』

 

ネクサスを押さえ込んだファウストはそのまま光の力を吸収していく。

 

「ネクサス!」

 

「動いたらコイツを殺すわよ、ビーストちゃんたち」

 

『なんて卑劣な……』

 

「おい、どうするノスフェル。このままじゃネクサスまで!」

 

「いえ、彼ならどうせ自分でなんとかできます。どうにか目をそらしてアキちゃん様を救出することが最優先です。でも、どうすれば……」

 

どうせ……。ガルベロスは呆れながらも打開策を思い付く。

 

「いや待て、お前のビーストヒューマンと俺の幻覚を使えばいけるぞ――」

 

ノスフェルはコクリと頷く。ファウストは腕を正面を真っ直ぐに伸ばした闇のエネルギーを溜め出した。

 

「ごちゃごちゃ話してる余裕があるなら、さっさと死んでよ!」

 

ファウストはそのまま闇の光線を二人に向けて放った。大爆発が起こる。みるみる体力が削れていくネクサスはその様子を見て驚愕していた。

 

『……ダークレイ・ジャビローム。馬鹿な、貴様本当にビースト達を!』

 

「いいじゃない。アキちゃんと私を邪魔する相手はみんな死ねばいいもん。じゃっ、最後にあなたを殺さないとね」

 

『ぐふぅっ!!』

 

ファウストはネクサスを解放して投げ飛ばした。倒れ落ちたネクサスに再び光線を撃とうとした。

 

「待ってよ、リコ!!」

 

「え、アキちゃん……!?」

 

その声を聞いてファウストは驚いて攻撃を止める。拘束して眠らせたはずのアキが確かにそこにいたのだ。ファウストは動揺してアキの手を触れた。

 

「なんで? 確かに捕まえてたはずなのに、目覚めないはずなのに……!?」

 

ファウストはアキを捕らえていた場所を再確認したが、やはりそこにはアキがいない。では、一体なぜ?

 

「リコ、わたしのこと好きにしていいから。――ほら、今はわたしだけを見て」

 

アキの誘惑にファウストは動揺を隠せない。

 

「えっ、あっ、えっ……」

 

「リコ、大好きだよ」

 

ファウストの頬が蕩け落ちる。思考が完全に停止し、頭から湯気が止まらない。その隙に立ち上がるネクサス。

 

『これは、まさか……』

 

ネクサスは察する。そこに爆発に巻き込まれていた筈のガルベロスが飛び上がった。するとファウストの目前にいたアキは人形のように崩れ落ちる。

 

「そのまさかだ! ノスフェル!!」

 

続いてノスフェルも煙から現れる。気絶している本物のアキを抱き抱えて。

 

「ガルちゃん、ネクサス! アキちゃん様はこの通り救出成功です!!」

 

ノスフェルが作り出したアキのビーストヒューマンに、ガルベロスの幻影でファウストの注意を逸らし、その隙にアキを助け出す咄嗟の作戦。ファウストは未だに騙されたことに気付かずふにゃふにゃしている。想定以上に効果覿面だったようだ。

 

『よし、脱出するぞ!』

 

ネクサスは巨大な竜巻を発生させて自身とビースト達を巻き上げて、飛行。ダークフィールドから脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ここは……?」

 

わたしは目を覚ました。辺り一面、晴天の天井。そこには、あのウザったらしくも可愛げのある白色の目の家政婦さんの顔が。

 

「良かった、目が覚めたんですね!」

 

目をパチクリして、わたしは呟く。

 

「ノス、フェル……」

 

「はい♡ 無事で何よりです、アキちゃん様!」

 

そっか、わたし、リコに捕まってて、そして、助けてくれたんだね。

 

「――ありがと。それと」

 

ノスフェルはスマイル満開でこちらを見つめている。うーん、言い難いな。そろそろ膝枕やめて欲しいんだけど……。更に二人の救出者達の顔もひょいとわたしを覗く。

 

「無事で何よりだ。アキ」

 

「ガルベロス、それに姫さんまで」

 

 

「姫さん言うなっての! ……ったく、コイツらのことについて後で詳しく聞かせてもらうからな。古紋さん」

 

「あはは……」

 

げっ。姫さんにノスフェル達のことバレてら。でも、この空気、もしかして一緒に力を合わせて助けに来てくれたのかな。ふふっ、微笑ましいことだ。光と闇は善悪で決めるもんじゃない。やっぱりわたしは、みんなが仲良く暮らせる世界が良いんだなって。

 

「オノレ……オノレオノレェェエエ!!!」

 

突然辺りをつんざく邪な悲鳴が響き渡った。

 

「なっ、何!?」

 

満身創痍、ボロボロの姿で髪や目がなんかヤバい感じなオーラに包まれているリコの姿だ。ガルベロスと姫さんはわたしを守るように構えた。

 

「……不届きを失礼します、アキちゃん様」

 

ノスフェルは膝枕状態のわたしをゆっくりと起こして座らせる。そして無言でリコの前へと進んで行った。ノスフェルの奴、一体何を。

 

――まさか。最悪の可能性を考慮し、わたしは声の限り叫んだ。

 

「ダメ! リコを殺さないで!!」

 

ノスフェルは何も言わずに進み続ける。力を使い果たしたのか、リコはその場で崩れ落ちる。暫く見つめた後、ノスフェルはようやく口に出した。

 

「ファウスト。アキちゃん様を犯そうとしたあなたの罪は谷より深く、マグマよりも熱い。例え|神〈アキちゃん様〉が赦そうとも、私には決して赦すことはできない」

 

そんな。リコの正体には確かにびっくりしたけど。でもそんなことッ……。

 

 

 

 

グサリ。ノスフェルの爪は、リコを貫く。

 

「故に、あなたには背負ってもらいます。この世界で、生きるということを」

 

みるみるうちにリコの体内から闇が浄化されていき、傷も癒えていく。

 

「ビーストが、闇を祓った、だと!?」

 

姫さんは驚きを隠せない。わたしはほっと一息つく。全く、ヒヤヒヤさせてくれる娘だ。

 

「良かった……リコ、元に戻ったんだね」

 

「確かに元には戻ったな」

 

ガルベロスは静かに答えた。

 

「あくまでノスフェルはリコに憑いていたファウストを殺したんだ。親殺し、同族殺しをしたことには変わりない」

 

「そっ、か……」

 

少しモヤモヤした。確かにファウストは許せない。でも出来ることなら他の方法でなんとかしたかった。

 

「それに、ファウストが消えたからって、リコさんの気持ちが変わったわけじゃないと思うぞ?」

 

へっ……?

 

わたしは恐る恐る振り返る。いない。刹那、背後に気配とやわらかい感触と怪しい吐息を感じ取る。

 

「ア、キ、ち、ゃ、ん、♡」

 

「ヒイッッッッッ!!」

 

逃げる間もなくリコに囚われ肩に顎を乗せられ、尻を鷲掴みにされる。

 

「あの……、佐大、さん……?」

 

「ふふっ、私の愛は本物なんだよ! 今後ともよろしくね、アキちゃん!!」

 

嘘でしょ……。少しは懲りてよ……。

 

「あーーっ!! 一緒の隙をついて、アキちゃん様になんてことをっーー!!」

 

ノスフェルの怒号が響き渡った。ガルベロスと姫さんは肩をすくめる。同じ仕草をしたお互いの様子を見て、すぐに「ふんっ!」と腕を組み合っているが。

 

「ははは……」

 

居間、プライベート、通勤路だけでなく、職場までわたしの日常を侵食するというのか……。とほほ……。

誰かわたしに長期休暇を分けてくれ……。

 

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