タルブの森のシエスタさん   作:肉巻き団子

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シエスタさん、観察される

見られている

 

食堂の人に紛れて、廊下の角の影から、広場の木に隠れて、あからさまな時にはドアの隙間から見られていた

 

本人は隠れているつもりなのでしょうが、他のメイドや貴族様も彼女の奇行には気付いています

 

燃えるような赤毛と豊満な褐色の身体を持つ女貴族様などは指を差して彼女のことを笑っています

 

だけど馬鹿にされようがからかわれようが彼女は私を観察することを止めず、この奇行が始まってすでに十日あまりが経過しています

 

彼女の正体は同僚のあの娘が聞いてもいないのに教えてくれました。ルイズなんとかという名前で、よりにもよってあのどうしようもないクズがいるヴァリエール家の三女だそうです

 

そんな少女がなぜ自分のことをストーカーのように嗅ぎ回っているのか疑問でなりません。赤毛の女貴族に理由を聞かれましたがこちらが教えてほしいくらいです

 

いつもの仏頂面に不満げな私の顔を見ても少女が私の観察をやめることはありませんでした。それどころか食堂で朝食などの給仕をする際には、少女は決まって私の先回りをしてその給仕を受けます

 

何度か私に話しかけようと身を乗り出したこともありますが、私の纏う人を寄せ付けない空気やあの娘に邪魔されたりと、結局話しかけられたことはありません

 

同僚のメイドや周りの貴族様たちから漏れ聞こえてくる声には少女を侮辱するような言葉が幾つも飛び交っていましたが私には何の関係もありません。その噂について何を思うでもなくいつも通りの仕事をする日々を過ごしています

 

いつも通り過ごしていただけなのに、なぜか少女の私を見る目は日増しに輝いているように思えます

 

赤毛の女貴族様曰く、少女の噂や現状を知っても全く少女への態度を変えなかった私のせいということでした。わけがわかりません……

 

日々輝きを増していく少女の鳶色の瞳はいつも私を追いかけ、物陰やドアの隙間からは柔らかそうな桃色の髪が見え隠れしています

 

何か用があるのならはやく言ってくださいと言いたくなるのを我慢して、今日も私は少女に観察される

 

期待に満ちた顔で少女は私を追いかけてくる

 

そんな私と少女を見て赤毛の女貴族様は可笑しそうに笑い声をあげるのでした




『あの娘』や『どうしようもないクズ』はちょっとした伏線です

ネタバレ ダメ ゼッタイ


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