敵を目前に一呼吸してから、足を大きく真横に振りぬいた
蹴り飛ばされた巨大百足は森の木に叩きつけられ無様に仰向けにひっくりかえる。不気味に足を動かして寝返ろうとしましたが、私の細い足が巨大百足の頭を踏み抜く方が早かった
巨大百足の全長はおよそ三メイルほど。その群れがぐるりと私を取り囲んでいます
頭部を持ち上げ威嚇するようにギチギチと牙を鳴らす。その牙に冒されると身体が麻痺し生きたまま餌になるしかない。身を覆う甲殻はラインメイジの魔法を弾くほどに硬いというのだから大したものです
この巨大百足を討伐したと賞賛を受けることになる貴族様はいつものようにどこかで待機しているのでしょう。手助けするつもりも、応援すらする気がないのでしょう。そのくせ、しっかりと口だけは出してきます
いちいち口止めされなくても報酬さえ貰えれば言うことはありません。名誉なんて目に見えないものはいりません
私が欲しいのは『あの森を買える』だけの金貨だけです
巨大百足の牙が私の足を狙って伸びてきましたが、意識するまでもなく反射的に身体は動いていました
伸びてきた顎を力任せに蹴り上げ、無防備になった頭を拳で突き破る
体液が飛び散り毒の刺激臭があたりに満ちる
次の瞬間には足を動かし背後から襲い掛かってきた巨大百足を蹴り飛ばしていました
「あと二十一匹……」
いつものように仕事をして報酬を貰う
そして次の仕事まで学院でメイドをやる
そう、いつものように…………
ふと思う
こんな自分の姿を見てあの少女はどう思うのだろうと
一方、トリステイン魔法学院の広場では
「なんでシエスタさんじゃないのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
異国の服を着た黒髪の平民を召喚した少女が叫び声を上げていたそうですが、私にとっては割とどうでもいい話ですね
シエスタさんの行動原理