タルブの森のシエスタさん   作:肉巻き団子

20 / 85
シエスタさん、呼ぶ

いつも貴族様が食事を採るのに利用しているアルヴィースの食堂の上の階は大きなホールになっています。フリッグの舞踏会はそこで行われていました

 

楽団の美しい音色に合わせ、国内外の貴族様が優雅にステップを踏む。豪華な料理が盛られたテーブルの周りでは歓談している貴族様の姿があります

 

美酒と美食と音楽。学院長の無礼講でとの趣向から、くだけた雰囲気で時間は進んでいきます

 

そして貴族様たちの間で交わされる噂。一瞬不愉快な顔はするものの、怪盗フーケが捕らえられたことを聞くと一変して貴族様特有の高慢な笑みを浮かべます

 

赤毛の女貴族様はたくさんの男性に囲まれ、青髪の少女はテーブルの上の料理に夢中のようです。何度かテーブルの上に料理を追加しましたが、一体あの小さい体のどこに料理が入るのでしょう……

 

遠めには少女が召喚した使い魔の少年がバルコニーで剣を片手になにやら騒いでいます。少年の傍の枠には、同僚のあの娘が差し入れた料理の皿とワインが見えます。だけど主人の少女の姿は近くにありません

 

ふと注意深く会場を見渡しましたが少女の姿はどこにもありません。少女を探そうと使用人用の出入り口から出ようとしたところに、ホールの門に控えていた呼び出しの騎士が少女の到着を声高々に告げる

 

ホールの壮麗な扉が開き少女が姿を現す。細い腰に、しまった体、それにすべらかな白い肌を一層強調するようなホワイトドレスに身を包んでいました。肘までの白い手袋が、少女がもつ清楚な美しさをさらに際立たせています。目元は涼しげで、鳶色の瞳は生気に満ちて輝かしい

 

少女の美しさに惹かれるようにすぐさま男性が群がり、さかんにダンスを申し込んでいます。中にはさっきまで赤毛の女貴族様に群がっていた男性もいて、だけど女貴族様は特に嫉妬するでも怒るでもなく、やはりいつものように柔らかい微笑みを浮かべて少女を見つめたあと、近くにいた青髪の少女と談笑を始めたようでした

 

さて、少女に視線を戻すと何人もの男性にダンスを申し込まれながらもその全てを断わり、きょろきょろと会場を見渡しています。まさかと思いしばらく見守っていると、少女の鳶色の瞳が私を捉えました

 

群がる男性には構いもせずにまっすぐに早足でこちらに近寄ってきます。男性たちの私を見る目が少し煩わしいものですね

 

「フーケは学院の当直をしていたシュヴルーズ先生が捕らえたそうよ」

 

意図して少女から目を逸らす。夜中で良かったと思う。いつもと同じく表情は変えない

 

「……まぁ、シエスタさんがいいなら私もそれでいいわ」

 

見られてはいないはずです。よほど夜目でも利かなければ三十メイルもの高さにいる人影を特定するなど不可能です

 

「踊られないのですか……」

 

話を変えようと目を逸らしたまま言った

 

「つりあう相手がいないのよ」

 

そう言われて、たしかにそうだなと納得してしまう

 

「ねえ」

 

今度はなんでしょう

 

「今夜泊まりに行ってもいいかしら」

 

いきなりの少女の言葉に少し戸惑った。思えば、少女には少なからず流されているような気がする。だから本当になんとなく言ってみただけだ

 

「お好きなように」

 

いつもの不満げな表情を顔に浮かべて、なんとなく少女を驚かそうと思って……

 

 

 

 

 

「ルイズ」

 

 

 

 

 

少女の名前を呼んだ

 

 




少女卒業w

原作の巻の間にはギンガサイドの話をちょこちょこ挟んでいきます
なので次話はギンガ(母さま)の話です

脇役なのににじファンではシエスタさんよりも人気だったっていうね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。