タルブの森のシエスタさん   作:肉巻き団子

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シエスタさん、様付けされる

赤、青、黄の女貴族様たちは昨夜も飲み食いして騒ぎ、昨日と同じようにベッドの上で唸っていました。具合が良くなり次第、後を追ってくるそうですがそれはどうやら難しくなるかもしれません

 

なぜかというと、少しばかり厄介な事態に遭遇しています。ルイズ、使い魔の少年、ワルド子爵、そして私が乗るアルビオン行きの船が空賊に襲われたのは、青空に浮遊大陸アルビオンが姿を現してすぐのことでした

 

舷側に空いた穴からは大砲が並んで突き出ており、黒塗りされた船体は戦う船を思わせます。その黒船から進路上に大砲の威嚇射撃が放たれると、こちらの船の船長は空賊の停船命令に従うほかありませんでした

 

たとえこちらにスクウェアメイジのワルド子爵がいようと船体に大砲を打ち込まれればdぷしようもありません。もしそうなっても私だけは助かる自信はありますが、傍で寄り添っているルイズの無事は保障できない

 

停船した自選の様子に少しも怯えることなく、微塵の不安さえない瞳でルイズが見上げてくる

 

「シエスタさん」

 

だけど、繋いだ手に込められた弱い力。繋いだ私にしか知りえないうっすらと手のひらに浮かんだ汗。そうしたら自然と決めてしまっていた。ルイズに害があれば空賊を皆殺しにすることを葛藤もなく決めてしまっていました

 

スカートに忍ばせておいたゴッドハンドを装着して拳を硬く握り締める。深く静かに呼吸を繰りかえす。繋いだ手に安心させるように軽く力を込める。ルイズと一度だけ視線を合わせ、ゆっくりと空賊たちに視線を移す

 

空賊たちは武器を手に次々と船に乗り移ってくる。その中で一層派手な格好をした眼帯の男がおそらくは空賊の頭でしょう。空賊たちに大声で指示を飛ばしながら荒っぽい仕草で辺りを見渡しています

 

やがて船長に船ごと略奪することを宣言すると、甲板に佇んでいたルイズと私に気付きました。嫌な笑みを顔に張りつけながらこちらに近付いて…………、おや?まさかとは思いましたが間違いなさそうですね。それでは、顎を手で持ち上げられようとしたところで……

 

「母さまとの約束を違えるとは良い覚悟とだけ言っておきます」

 

その手がぴたりと止まる。片目の視線が交わる。もう片方の手で眼帯を外すと、今度は両目でまじまじと凝視されました。そうして私の姿を十分に確認すると顔を蒼白にしてうずくまってしまいました

 

「あなたがどこで何をしようとかまいませんが、母さまとの不干渉との約束を破ることだけは見過ごせません」

 

「いっ、いや違う!私はギンガ様との約束を違えるつもりなどない!」

 

「つもりもなにも今も弓や銃で狙われ、剣を持った賊に囲まれているところですが。なんだかこうしていると昔を思い出してしまいますね」

 

「っ!……総員ただちに武装を解除せよ!ウェールズ・デューダーの名のもと命じる!総員ただちに武装を解除し『シエスタ様』に頭を下げよ!」

 

ああ、そういえばルイズはこれに密書を届けるのが役目でしたね。そう思い出して振り返ると、ルイズは口をあんぐりと空けていました。使い魔の少年もぼけっと呆けたように立ち尽くしています。ワルド子爵だけが鋭い目つきで睨んでいました

 

空賊たちが……いえ、アルビオン王党派が余すとこなく膝を付き私に頭を下げる中、いつものようにメイド服を引っ張られる

 

「シエスタ……さん?」

 

「たいしたことではありません」

 

思ったよりも早くルイズの極秘任務とやらも終わりそうです

 

「昔、アルビオンという国がたった一人の魔女に敗北した。ただそれだけのことです」

 

はぁ……、いっそ母さまが世界征服でもしてくれたらタルブの森を買う手間も省けるのですがね。まあ平和主義者の母さまがそんなことをするのは私に何かあった時になりますか




土日は通院とリハビリで気力がごっそり持っていかれるので更新する気力が残っていませんorz

ゴッドハンド
拳武器、準最強装備


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