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村人、生贄を選ぶ
女エルフは子供を要求する代わりに村のために働くと言った
自分たちは村にすぐさま引き返し女エルフの言葉を村長に伝えた
村の大人たちを集めて開かれた話し合いは、女からは嘆くような叫びがあがり、男からは怒号があがった
だが女エルフの要求に逆らう者は誰一人としていない
やがて重苦しい静寂が広間に満ちる
誰も喋らないし誰も顔を上げようとしない
この場に身を置く者は子を持つ親たちだ
そんな親たちがこれから決めるのは誰の子供を生贄にするかということ
ひどく単純で誰の子供を殺すか
誰もが自分の子供を守るために誰の子供を犠牲にするか考え沈黙していた
不安と焦燥…
集まった者たちは早くこの場を終わらせたい
自分の子供でなければ誰の子供でもいい
ある男は低く嗚咽を漏らす妻の肩を抱き寄せた
ある女は奥歯を噛み締め夫の胸板を揺すった
草木さえ眠るような深い夜
頼れるのは己の夫、或いは妻のみ
自然と夫と妻は寄り添い、他者との間に見えない壁をつくる
やがて
唐突にドアが開いた
取っ手をつかんでいる手は指が白ずむほどの力が込められている
「生まれたんだ!」
男が笑いながら叫んだ
「俺の『娘たち』が生まれたんだ!」
子供のような邪気の無い笑顔で男は続けた
「きっと俺の娘たちは美人になるぞ!」
男を見つめる村人たちの思考がぴたりと一致した
男の表情が強張るのにさして時間は必要なかった
その日、男の家に一人の娘が生まれた
そういうことになった……
短いですねー……