赤毛の女貴族様改めツェルプストー様が宝探しをするにあたって注意したことは、地図に記されている廃墟、遺跡、森、洞窟には危険が潜んでいて怪物や魔物がわんさかいるとのことでした。その分、金銀財宝やすごい秘宝が眠っていると力説していると
それを聞いてごくりと喉を鳴らしたのは、ルイズの使い魔のヒラガ様と金髪の少女モンモランシ様。一方、青髪の少女『オルレアン』様は関心がないのか、風竜の背でずっと本を読んでいます。オルレアン様を背に乗せた風竜は始終怯えるような瞳でこちらを見ていましたが……
その風竜に乗って宝探しに出て数日後の夜、とある廃墟の中庭跡らしき場所で焚き火を囲んでいます。私以外の誰もかれも、おもしろくなさそうな顔をしている。それもそのはず。宝どころか銅貨の一枚すら発見できていないのですから
ツェルプストー様たちが訪れた場所は全て、『私が訪れた後』のものです。めぼしい宝などは持ち去り換金済みです。そもそも最深部まで細部に渡ってマッピングしてある地図を見て早々に気付かなかったのでしょうか?
「ちょっとキュルケ、これで七件目よ!お宝どころか銅貨すらないじゃない!あったのは意味の分からない記号のようなものだけよ!」
「うるさいわね。ちゃんと言ったじゃない。大金が手に入るかもしれないって」
ツェルプストー様に喰ってかかっているモンモランシ様。オルレアン様は風竜を背もたれに本を読んでいて、ヒラガ様は遺跡や洞窟の最深部で発見した七つの記号を真剣な表情で見ています
「皆様、お食事ができました」
焚き火で焼いていた野ウサギの串肉の加減を確かめ、一人ずつ渡していく。雰囲気が悪かろうと私は与えられた仕事をするだけです。ですが、ヒラガ様の呟きが、私さえ含めたメンバーの動きを一変させる
「星の魔女ギンガ」
時が止まった……、と錯覚するほどの衝撃をヒラガ様の呟きは私に与えてくれました。ツェルプストー様は緩慢な動きでヒラガ様を見つめている。モンモランシ様は突然様子の変わった周囲に戸惑っている。オルレアン様は手に持っていた串肉と本を落とし、じっとヒラガ様を睨んでいる
「いや、それとも魔女の星ギンガか?まさか星魔の女ってことはないだろ」
まさか戯れで各所に残してきた文字を全て集められ解読されるとは思ってもいませんでした。ドクドクと、早鐘のように脈打つ鼓動を悟られぬように目を瞑り呼吸を整える
「ね、ねえダーリン。今ひょっとして星の魔女って言わなかったかしら……」
否定しろ……、だけどヒラガ様はあっけなく返します
「なんだキュルケ、このギンガって人のこと知っているのか。てか星の魔女で合ってたんだな」
ふと夜空を見上げて、この使い魔が死んだらルイズは悲しむだろうかと思う
「遺跡や洞窟で見つけた七つの文字は俺の国の言葉なんだ。それで文字を組み合わせると星の魔女ギンガになる」
ヒラガ様はツェルプストー様に詰め寄る。真顔になって両の肩を押さえた
「これは俺の国の文字だ。この文字で書かれたギンガって人は誰なんだ?知っているなら教えてくれ、キュルケ」
ツェルプストー様はヒラガ様の真剣な様子に軽くため息をつくと
「ギンガ、二つ名は星。通称、星の魔女ギンガと呼ばれていて、数年前にアルビオン貴族の約六割をたった一人で殺しつくした女エルフよ」
なつかしいですね。私も頑張ったのですが、母さまの戦績にはとても及びませんでした
「ちょっと待ちなさいよキュルケ!過去にアルビオン貴族の大半が命を落としたのは、地下にあった風石が暴走してそれを抑えるために身を挺したからのはずよ!」
「トリステインではそう教えられているみたいね。なんたって星の魔女が居を構えているのはトリステインにあるタルブの森なんですもの」
「だからっ!」
「だからね、モンモランシー」
まるで幼い子どもに言い聞かせるようにツェルプストー様は続ける
「アルビオンをたった一人で制圧した力をもつ星の魔女をトリステインは絶対に敵にしたくないの。星の魔女がタルブの森にいることは秘密にしてるのよ。だってそうでもしないとプライドだけは高いトリステイン貴族のことだもの、きっと星の魔女に喧嘩を売っちゃうでしょ」
そこにオルレアン様が補足する
「おそらくはアルビオンが星の魔女に全面降伏しなければ、アルビオン大陸そのものが消滅したと言われている。実際、星の魔女の攻撃でアルビオン大陸の二割が消滅した」
なるほど、だからトリステインの貴族様は母さまのことをあまり知らなかったのですか。タルブ出身の私やあの娘が貴族様に何も言われることなく学院で働ける理由がこれで分かりました
「噂ではスクウェアクラスのメイジが死力を尽くして放った魔法を受けても傷一つ負わなかったそうよ」
「大砲が直撃しても歩みすら止められなかった。それどころか、詠唱も無しに放った一発の魔法で巨大軍用艦を撃墜されている」
ゲルマニアやガリアには母さまのことが正しく伝わっているようですね。モンモランシ様は冗談などではなく本当のことだと理解したようで顔を青ざめさせています。この様子では不用意に触れ回ったりはしないでしょう。だというのに……
「行こう!」
ヒラガ様は言いました
「星の魔女ギンガに会いにいこう!」
さて、この空気の読めない人をどうしたものでしょうかね
ツェルプストーって変換し辛い……