三度目だなと思いました。何がというと、いつものように枕を抱えて私の部屋を訪れたルイズがヒラガ様とばったり遭遇した回数です
一度目はルイズが唖然としている隙にヒラガ様を退出させてうやむやにしました
二度目はヒラガ様を発見するやいなや、機嫌を悪くしたルイズがご主人様特権とやらを行使してヒラガ様を部屋から叩き出しました
そして三度目の現在、床にヒラガ様を正座させ、その前で仁王立ちしているルイズの姿があります。そういうことはルイズの部屋でやってくれないものでしょうか
「ねえ犬、少し話があるの」
「はい……」
犬ときました。ルイズが人の尊厳をここまで気にしない発言をするのを、私は初めて聞きましたよ。ひょっとすると、ヒラガ様とはいつもこんな調子なのでしょうか
「あんたがあのメイドと何をしようとそれは自由だわ。恋人だものね。でも恋人でもない女性と部屋で二人きり。これは駄目だわ。まずいなんてもんじゃないわ。恋人じゃなくてシエスタさんと二人きりでお喋り。なんなの?」
ルイズの全身がプルプルと震えています。ここが私の部屋でなければ暴れていたかもしれません
「ルイズの使い魔はいつもメイドとよろしくやっている。毎晩のようにメイドの部屋でけしからんことをしている。主人を放っておいて毎日遊んでいる。そんなことを噂されるのはいいの。それくらい言われるのは我慢してあげる。あんたは発情期の犬だものね」
正座しているヒラガ様の膝の上にルイズは足をかける。そのまま前かがみになり、じわじわと重みをかけていった
「でもこの部屋は駄目だわ。ご主人様はね、ストレスが溜まっているの。姫様から無理難題を押し付けられて参ってるの。その気分転換をするためにシエスタさんといろいろとやらなきゃいけないことがあるの」
やることというか、いつも私がルイズにしているだけの気もしますね
「それなのに、どこかの恥知らずの発情使い魔ときたら、その貴重で大切な時間を無遠慮に奪ってくれるわ」
「ル、ルイズ?」
それにしても、こんなルイズを見るのは本当に初めてです。まあこれは、私をヒラガ様に取られたような気がして当たり散らしているだけですね。あとでルイズの機嫌を取ることにいたしましょう
と、ドアの向こう側で誰かが立ち止まる気配がしました。間をおかずにドアがノックされます。まさかこの部屋をルイズとヒラガ様の他に訪れる人がいるとは思ってもいませんでした。ルイズが一方的にヒラガ様を責め立てる声を背にドアを開けると、そこにいたのは先日に一緒に宝探しをしたモンモランシ様でした。そしてその手に、昼にあの娘が来ていたのと同じセーラー服を抱えています
「何か御用でしょうか、モンモランシ様」
そう言うと、モンモランシ様は顔をやや紅潮させて、ぽつぽつとした小さな声で用件を伝えてきました。ええと、この服をモンモランシ様の体型に合わせて仕立て直せばいいのでですか?わかりましたが、なぜ私のところへ……はあ、この前一緒に宝探しをしたので声を掛けやすかったと。口が堅そうだからモンモランシ様の体型について他の使用人たちに言いふらしたりしないですか。それはそれは……、では他のメイドに気付かれないうちに私の部屋で…はルイズたちがまだ騒いでいるのでどうしましょうか。それにルイズが例外なだけで、平民の部屋に学院の生徒が入るのは抵抗があるでしょう。さて、どうしましょうと尋ねればモンモランシ様の部屋でですか。わかりました、それでは今からお伺いさせていただきます。帰ってくる頃にはルイズの頭も冷えていることでしょう
「ありがとう、助かったわ。また機会があればよろしく頼むわね」
そうしてモンモランシ様の部屋で採寸をして出来上がるのは二日後だと告げました。部屋を後にする際、モンモランシ様から眠気がとれる薬とやらをいただきました。あまったものだから気にしないでいいそうです。今日はもう夜中ですし、早速朝にでも使ってみましょう
その翌朝、息を切らせて青い顔をしたモンモランシ様が洗濯をしていた私の前に現れました。なにやら、間違えた!だの、何滴飲み水に入れた!だの勢いよく聞いてきます。そして、最後に薬を飲んだあと最初に見た人を聞かれたので……
「妹のセスタです」
そう答えたのでした
モンモンの栄光への道始動(笑)