「妹のセスタです」
自分の口から出た言葉に、しばし唖然と立ち尽くした。目の前では、息をきらし青い顔をしたモンモランシ様の表情に驚愕の色が加わりました
なるほど、先程モンモランシ様が間違えたと騒いでいたのは、今朝に私が飲んだ薬のことでしたか。モンモランシ様の慌て様からして故意ではないようですが、これはどうしましょうかね。口止めをするか息の根を止めるか迷いどころです。でもまずは……
「モンモランシ様」
「な、なに……」
気まずげな表情しながらも目を逸らしはそませんでした。貴族様にしては珍しい反応です。自分のやったことに目を逸らさず向き合うとは、モンモランシ様は少しだけ他の貴族様とは違うのかもしれません。かといって、今のこの状況を見過ごすことはできません
「私が飲んだものは何ですか?」
モンモランシ様はしばらく困ったように頬を掻いていましたが、やがて盛大な息を吐くと悪びれた声で言いました
「……惚れ薬」
「……禁制品ですね」
モンモランシ様も私の声も注意しなければ聞き取れないほど小さい。それからモンモランシ様は、なぜ禁制品の惚れ薬を作ったのか説明してくれました
モンモランシ家の使用人の若いメイドがとある貴族様と恋に落ちた。お互い想い合っているのにメイドは貴族様からの求婚を拒み続けている。その理由は貴族様には婚約者がいて、その女性と結ばれた方が貴族様が幸せになれるから自分は身を引くとのこと。貴族様は婚約を解消すると言っているらしいが、メイドは貴族様の幸せを願って婚約を解消しないよう説得すらしていると言うのです
「それでうちのメイドも相手も半ば意地になっちゃってね。もうこれは薬でも使わないと進展しそうにないんだもの」
モンモランシ様はそう言って小さな笑みをおとしました。いやはや、ルイズに負けず劣らずの変わった生徒もいたものです。たかが使用人のために高価な惚れ薬を用意するとはどうなのでしょう。それにメイドのことを話すモンモランシ様はどこか楽しげで、ずっと柔らかい笑みを浮かべていました
「っと、いけないいけない。こんな話してる場合じゃないわね。すぐに解除薬を調合するから、しばらく待っててちょうだい。それと今回のお詫びもいずれさせてちょうだい」
そうしてさらに翌日の夕方、モンモランシ様の部屋でひそやかにため息を吐きました。セス……の娘を少しでも意識する度に構いたくなる衝動をなんとか押さえ込みここまで過ごしてきたのですが、解除薬が作れないとはどういうことですか?
「解除薬を調合するのに必要な秘薬が売り切れていたわ。加えて、入荷も絶望的なようね」
冗談ではありません。今日だけで四度もセスタの、ではなくあの娘の名前を呼んでしまい、あの娘も勘違いして私を姉さま呼ばわりする始末。私はあの娘の姉などという気持ち悪いものではありません
「秘薬の名前は水の精霊の涙。ラグドリアン湖に住んでる水の精霊様から譲り受けられる貴重なものよ。でも最近、水の精霊様と連絡が取れないどころか姿さえ現さなくなっちゃったらしいわ」
なんだ、母さま曰く『モノマネ精霊』ではないですか。それならラグドリアン湖まで行きさえすればどうとでもなります
「それならば取りに行って参ります。幸いあれとは連絡を取る方法がありますので」
「え?」
でも、また数日は学院を留守にすることになりますね。今度はルイズが拗ねないように手紙ではなく口頭で伝えることにしましょう
「え、ちょ、本当に水の精霊様と?」
そうと決まれば、明日の早朝にでも出発することにします。え、モンモランシ様も付いてくるのですか?たかだかアレに会えるというだけで、すごい慌てっぷりですね
知人に教えてもらった『まおゆう』なる小説を読んでいたら10時間以上が経過し夜が明けていた
な、何を言っているのかわからねえと思うが俺も(ry…