翌朝、昨日と同じように水面に指を入れると、すぐに水面が盛り上がり水の精霊が姿を現しました。あいかわらず私のすがたを模し笑顔を浮かべています
「襲撃者は撃退しました。二度とあらわれることはないでしょう」
そう言うと、水の精霊は細かく震えだしました。やがてその体の一部がはじけ、こちらにとんできます。きゃっ!きゃああ!と叫んで、モンモランシ様が持っていた瓶でそれを受け取りました。ああ、そういえば……
「一つお聞きたいしたいことがあります。どうしてラグドリアン湖の水かさを増やしているのですか?」
オルレアン様がツェルプストー様を連れていく際、水かさが増すのが止まらないなら別の刺客が送られると言っていたのですよね。モンモランシ様からも、できれば水の精霊に水かさを増やすのを止めるよう話をしてほしいと言われたので、ものはついでです
「ふむ、シエスタならば信用できよう。先日ギンガにも話したのだが……」
へえ、水の精霊が守っていた秘宝を盗み出した者がいるのですか。トリステインの者が水の精霊にそんなことをしでかす可能性は低いので、予想ではガリアかロマリアあたりでしょうか。ラグドリアン湖に近いガリアが有力でしょうね。それで盗まれた秘宝を取り返すために水かさを増やしていたと。いずれは秘宝に届くと言われても、なんとも気の長い話です
それに、今回のツェルプストー様やオルレアン様のように刺客が送られていては秘法を取り返すどころではないでしょう。最悪、存在を消されているかもしれません。精霊と言えども死は存在するのです。あなたが死ぬと母さまが悲しむのですよ。はあ……、これは仕方ありませんね
「機会があれば私が取り返しておきますので、水かさを増やすのはもう止めてください。それで、どういった秘宝なのですか?」
「アンドバリの指輪。我と共に、長い時を過ごしてきた指輪だ」
「アンドバリの指輪ですって!」
知っているのですかモンモランシ様?偽りの生命を死者に与える伝説級の魔道具ですか。野心ある者が手にすれば脅威となる代物ですね。思いつくのは王族を殺した後、それを意のままに操って国を事実上支配するといったところでしょうか
「誰が盗んでいったか手がかりはあるのですか?」
「たしか、我から秘宝を盗み出して行った者たちの一人がこう呼ばれていた。クロムウェルと」
思わずモンモランシ様と顔を見合わせてしまいました。どうやら同じ結論に至ったようです
「アルビオンの新皇帝の名前ですね」
「きっと指輪の力を使って今の地位を手に入れたのよ!夢や願いは自らの力で叶えてこそ尊いものとなるのに、なんて恥知らずな行いを!」
つまりは、指輪の力に固執しているアルビオンの皇帝をぶん殴って指輪を取り返さなければいけないわけですか。まったく、面倒なことです
それからすぐに帰ろうとすると水の精霊に散々引き止められ、母さまの話をせがまれました。私の横でずっとモンモランシ様が聞き耳を立てていましたが、もう親子だと知られているので今更どうこうはしません。気付けば夜が明け朝日が昇り昼を過ぎていました。別に不思議なことではありません。たかが一日で母さまのことを語れるわけがないではありませんか
でもそろそろ学院に戻らないと学院長から小言を言われるかもしれません。戦時中の学院を外敵から守ってくれみたいなことを言われていた覚えがあります
まだ引きとめようとした水の精霊に別れを告げ、モンモランシ様と一路学院を目指します。あいにくの雨で馬足が鈍ってしまい、これでは急いでも学院に着くのは真夜中か夜明け前になりそうです。それをモンモランシ様に伝えようとした時、前方からいくつもの馬足が聞こえてきました。数はおよそ十.その先頭の馬上には……
「死んだはずのウェールズ皇太子にアンリエッタ姫殿下、いえ、もう女王でしたか」
「…………ッ!アンドバリの指輪ね!」
さすが座学ではルイズに次ぐ次席だけあって理解が早いですね。そういえば、操られているウェールズは私を見てどういった反応をするか気になります。ということで呼び止めてみましょう。かどわかされたであろうアンリエッタ様を助けたとなれば褒賞も貰えるでしょうからね
暇つぶしに図書館に行ったらセロ魔が全巻揃ってて笑った
外伝の烈風の騎士姫?だけなかったからリクエストしておきましたよw