あまりにもお粗末な戦い方でした。陣形と呼べる様なものではなく、ただ数にまかせて押し寄せてきただけです。それに呪文を詠唱することに夢中になって、詠唱中に攻撃を受けることに注意が全く向いていませんでした
この貴族様達は本当に王国の騎士なのでしょうか?正式な訓練を受けたのならば如何なる状況下でも必要な行動が取れるよう、意識しなくても身体そのものに刻まれているはずなのですが……
全員がワルドに近い実力を持っていると仮定して身構えていたこちらとしては、肩透かしというか呆れるというか、モンモランシ様も私の背後で何度も失望のため息をこぼしていらっしゃいました
結局は三十に近い肉塊を築きあげたところで、騒ぎに気づいた枢機卿が黒髪の若い兵士一人だけを伴って私たちの前へと姿を現しました
即金で千エキュー金貨。後々追加で四千エキューを支払って頂けるということで話は丸くおさまりました。その後はモンモランシ様と堂々と城門から出て、用意されていた馬車に乗って学院へと帰ってきたのが数日前のことでした
そんなことを学院にある自室のベッドでぼんやりと思い出していると扉を叩く音が聞こえます。扉を開けるとそこにいたのは何やら思い悩んだ顔のルイズ。手には上質な紙とひと目でわかる手紙が握り締められています
「……シエスタさん。これ」
「なんですか?」
ルイズが差し出してきた手紙に目を通すと、なんともまあ……ウェールズ皇太子を殺害したモンモランシ様を極秘裏に捕らえよですか。実際に皇太子を殺したのはワルドで、火葬したのは私なのですからモンモランシ様にとっては災難なことです
まあ事情を詳しく知らない上に、モンモランシ様が皇太子を魔法で攻撃した直後に気絶させたのでモンモランシ様が殺したのだと勘違いしていてもおかしくはないでしょう
それにしても、知人とはいえ一介の学生のルイズに頼むにしてはやや大仕事すぎではないでしょうか?アルビオンの時といい、アンリエッタ様の考えは理解できません
手紙の内容にしても、任務自体はたったの三行で書かれ、あとに続くのはどれほどウェールズ皇太子を愛していたか、どれほどモンモランシ様が憎いか四枚に渡って書かれた手紙には苦笑するばかりです。城で被害が拡大しないようにと尽力した枢機卿の爪の垢でも煎じて飲ませたいものです
おや、手紙の最後に私のことが書かれていますね。モンモランシ様の従者。シエスタ様と呼ばれていたことからアルビオン王家と親交のあった者と思われる。話がしたいので丁重にお連れするようにですか。この手紙をモンモランシ様にお見せしたらさそおもしろい反応を見せてくれることでしょう
「ねえ、モンモランシーと何をしていたの?」
「水の精霊に秘薬を分けてもらいに行っただけです」
その途中でいろいろあり、そのあともいろいろあっただけです
「それでモンモランシーのことだけど……」
「書かれている通り連行すればいいのでは?」
モンモランシ様がどうなろうと私には関係ありません。しばらく共に過ごし、モンモランシ様が他の貴族様と違うとわかっても、ただそれだけのことです。モンモランシ様の気骨にはやや関心すれど、別に親しくなったわけではないのです
「あ、それとルイズ。私を王宮に連れていこうとしたら、たとえルイズでも全力で抵抗しますのでそのおつもりで」
そう言うとルイズは何か言おうとして表情を歪め、しかし思いとどまったように黙り込む。ただ無言でうなだれている
トリステインに忠誠を誓っているルイズとしてはアンリエッタ様には容易に逆らえない。かといって、薄々は無実と気付いているモンモランシ様を連行するのはルイズの誇りが許さないといったところでしょうか
腕を組んで何やら表情を険しくさせるルイズ。ルイズはその日、いつものように私の部屋に泊まり、いつも以上に私の傍にいたように感じました
そうして夜の闇が訪れ学院全体が静寂に包まれる深夜。自室の窓から目を凝らして外を見れば小さな人影が暗がりに二つ
私は手の中にあるルイズの置手紙にもう一度目を落とす
『モンモランシーが逃げたから追います。心配しないで待ってて』
そして再び窓の外へと目を向ける。ルイズがモンモランシ様の手を引っ張り先導しているように見えるのは、きっと私の見間違いなのでしょうね……
退院したと思ったら再入院させられていた。な、何を(ry…
とりあえず日曜に退院していろいろごたごたやっていましたw