床で目を覚まして、驚きました。となりにモンモランシ様が寝ていたからです。すやすや、と心地良さそうな寝息を立てています。どうして起きるまで気付かなかった……といぶかしみましたが、姉さまと似たなにかを感じ思い出しました
「そういえば転生させたのでした」
嫌がるモンモランシ様を連れて家の奥にある家の奥にあるゲートに一緒に入り、弟子にしたのでした。ここまで接近を許したのは師弟だからでしょう。モンモランシ様に敵意を全く抱けなくなっています。とはいえ、敵意を抱けないだけで、モンモランシ様を攻撃しようと思えばそうすることにためらいはありません
しかし散々嫌がったわりに転生した途端、態度を一変させたものです。嬉しそうに覚えたての魔法を精神力が尽きるまで使い続け、そして師匠としての最初の仕事は倒れたモンモランシ様を家に運び込むことでした。まあ、あのどうしようもないクズな弟子よりは幾分、いやかなりマシだと思うことにしましょう
モンモランシ様から視線を外し、その弟子とルイズが寝ているベッドを見ます。ふかふかのベッドの中、子猫を抱くようにルイズを抱きしめているカトレア。昨日、半泣きだったルイズのまぶたはまだ赤味を残しています
モンモランシ様を転生させたついでにルイズにも言ったのです、『ルイズもやりますか?魔法が使えるようにようになりますよ』と
『やる!』と即答したルイズは、しかし転生どころかゲートをくぐることもできませんでした。そこで、母さまが言っていたことを思い出しました
『大きな役割を持って生まれた者は、その個人こそが一個のクラスなんだよ』と。母さまの師匠様もそんな人で、誇り高い魂を持つ姫様だったと懐かしそうに話してくれたものです
しかし、ゲートの中に入れないと言った話は聞いたことがありません。再度ルイズにゲートをくぐらせようとしたら、まるで拒むかのようにゲートから力が溢れルイズを弾き飛ばしてしまったのです
唖然として戸惑っている私に対して吹き飛ばされたルイズが言ったのは
「シエスタさんの嘘つきっ!大っキライ!」
でした。あの時のルイズの流した涙を思い出すと心に鈍い重みを感じます。正直に、素直に言いますとルイズにそう言われて心が沈んだ私です。衝撃を受けて、ルイズを慰めるどころか、立ち尽くすだけで精一杯でした。あれ以上ルイズになにか言われていたら無様に膝を付いてしまっていたかもしれません
結局その場にいたカトレアにルイズを任せるしかありませんでした…………と、そういえばなぜカトレアはこの家にいたのでしょうか?昨日のルイズの件で動転してそのことを失念していました
ルイズを起こさないようにカトレアの頬をぴしゃぴしゃと叩きます。それでも起きなかったのでカトレアを持ち上げ家の外に放り投げました
「ひどい起こし方をするのね。わたし、びっくりしたわ」
カトレアは少し唇を尖らせてつぶやく。できるなら絶壁の崖にでも投げてやりたいところです
「いろいろあって聞くのを忘れていました。なぜここにいるのですか?」
それを聞いて、カトレアはきょとんとしたあと微笑んだ
「てっきりルイズのことを聞きたいのかと思っていたわ」
それもあとで聞くことにします。今はカトレアのことです
「そうね。聞いてもらえるシエスタ。お父さまったらひどいのよ。急にわたしに嫁に行けなんて言うのだから」
ヴァリエール公爵に大賛成です。嫁いだまま二度と顔を見せないでもらえると幸いです
「だからここに逃げてきたの。わたしガリア王妃になんてなりたくないわ」
…………はい?
カトレアと聞くと、ツンデレな金髪ツインテールを思い出すのは自分だけだろうか