タルブの森のシエスタさん   作:肉巻き団子

58 / 85
シエスタさん、誓う

逃げられた、と気付いたのは翌朝のことでした。ヴァリエール領へと続く街道の途中にある宿泊村の一室、そこでふらつく頭で昨日のことを思い出します

 

カトレアが持ってきたワインを飲んで、ルイズの両頬を手ではさんだところで記憶が途切れました。それ以降の記憶がまったくありません

 

現在、ベッドで私に腕枕されているルイズと、部屋の隅で毛布を頭まら被り丸まっているモンモランシ様と、モンモランシ様とは逆の隅であちこちに傷を作って倒れているヒラガ様に繋がる記憶がないのです。そしてカトレアの姿、気配がどこにもありません

 

妙に鋭いカトレアのことです。私の目的に気付いて逃げたのでしょう。でも、いつカトレアに一服盛られたのかがわかりません。記憶がないことから即効性の睡眠薬をおそらくワインかグラスに仕込んだのでしょうが、昨晩、カトレアがそんな仕草を見せたことはありませんでした。カトレアといる時はいつも言動に注意しているのでこれは間違いないです

 

「あふ、おはようシエスタさん……」

 

ちょうどいいです。起きたばかりのルイズには急な話かもしれませんが、昨晩何があったのか聞いてみましょう

 

「おはようございますルイズ」

 

そう挨拶するとルイズは腕枕されたままこちらを向き、それから、はっ!と今の状況に気付き、一気に顔を赤らめました。この反応は少し変ですね。慣れたとはいかないものの、ルイズに腕枕をしてこれほどの反応を見せたのは最初の頃以来です。初めて腕枕をした時のルイズは、恥ずかしそうにはにかんだ笑みを見せてくれたものでした

 

「シ、シエスタさん、昨日はっ!あのっ!」

 

「はい、その昨日のことが知りたいのです。どうやらカトレアに一服盛られたようで記憶がないのです」

 

「…………え」

 

しばらく時間が過ぎて、ようやくルイズはそれだけを口にしました。それからなんだか分からない複雑な表情をしたあと、顔を真っ赤にしながら起き上がり、枕で私の顔をぽふりぽふりと叩きました

 

「シエスタさんはわたしと二人きりの時しかお酒飲んじゃ駄目!」

 

ルイズは床に転がった酒の瓶を指差して言います。そういえば母さまからも同じようなことを言われたことがあります。たしか、『親しい人としか飲んじゃ駄目!』です。あの時の母さまも顔を真っ赤にさせていました。すごく可愛かったです

 

そしてルイズは顔をそらして、『使い魔は別にして初めてだったのに…』だの、『モンモランシーにもした時点で気付くべきだった…』だの、『今度二人きりの時に飲ませよう…』だのとつぶやいているのはなんなのでしょう。知りたいのは昨日のことなのに関係のない話しか聞けません

 

しょうがないです。部屋の隅で寝た振りをしているモンモランシ様に聞くことにしましょう。ベッドから降りて近付くと、ガタガタと毛布ごと揺れ始めました。そのモンモランシ様の慌てっぷりに少し驚いてしまいます。記憶がなくなる前は、モンモランシ様とも良好とはいえないながら会話できていたのですが……

 

「わたしは何も知らない!」

 

モンモランシ様、それは知っているといっているようなものですよ

 

「わたしは何も聞いてない!」

 

震える毛布を剥ぎ取ると

 

「ガリア王が星の魔女に御執心なことも!あなたがカトレアさんとガリア王を結ばせようとしていたことも!お酒を飲むと素直でキス魔になる人のことなんかわたしは知らないんだからああああああああああああああああああああああああ!」

 

聞き逃せないことばかりですね。ちょっと人気のないところで詳しく聞かせてもらいましょうか

母さま以外とは二度とお酒を飲まない。そう固く心に誓った日でした……




知りたくもなかった情報を知ってしまったモンモンでした
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。