神聖アルビオン共和国と、トリステイン・ゲルマニア連合軍の戦争は、降臨祭が終結した少し後になって終わりをむかえた
シエスタの犠牲によって連合軍がロサイスに無事に留まれたあと、突如現れた星の魔女は、クロムウェルをロンディニウムの城の一画ごと吹き飛ばし、ロンディニウムに駐屯していたアルビオン軍を目に付いた先から滅ぼしていった
圧倒的な暴力と、たった一時間足らずでロンディニウムを壊滅させられたことで、アルビオンは心底絶望を味わった。その上、星の魔女はロンディニウム城跡の廃墟に今も居座り続け、とある要求をしてきた。要求が叶えられない場合、アルビオン大陸を消滅させるという最悪のおまけつきでだ
その要求とは
『アルビオンと連合軍の戦争に巻き込まれた娘の生存確認』
この一点のみ
要求が叶えられない場合はアルビオンを消滅させたあと、戦争に参加していたトリステイン・ゲルマニアに対しても同様のことをすると
アルビオンでそう宣告したあと、星の魔女は自らが所有する戦艦でトリステイン・ゲルマニアの王城に乗りつけた。城にいた兵たちをなぎ払い、アンリエッタ女王、ゲルマニア皇帝の元までたどりつくと、アルビオンとまったく同じ要求を両国に突きつけた
つまりは、二十日以内に娘の生存が確認されなければアルビオン・トリステイン・ゲルマニアはハルケギニアからその名前が消える
というのが目の前に座っている黒髪の少女から教えてもらったことでした。もう一人の金髪の少女はなにやらミューズさんと話をしています
「それで『姉さまと一番縁のある私』と、いつも一緒にいた『だけ』のモンモランシ様が女王陛下の勅命で捜索隊に加えられました」
なにか含む言い方と感じるのは私の気のせいでしょうか?それに説明するのに、わざわざ腕を組んでぴったりと身体を密着させる必要があるのでしょうか?妹…………なのですよね?ただの仲の良い姉妹なだけなのですよね?
「それにしてもびっくりしました。まさか姉さまが記憶を失っているなんて……、だから『一番仲の良かった』妹の私のこともわからなかったんですね」
私の肩に顔を預け少女は言います。まるで人目も気にせず語らう恋人のようだと思いましたが、仲の良い姉妹ならこのくらい普通……だと……思います……おそらく……。別に嫌だと思っているわけではないものの、何か違うような気がしているのですよね……
「シエスタ、モンモランシーさんたちも一緒にロンディニウムに行くことになったわ」
ミューズさんにわかりましたと手を振りながら言うと、隣の少女が足を踏んできました。踏むというより足を乗せて注意を自分に向けさせたんでしょう。どれだけお姉ちゃん子なのでしょうかこの少女は……
「えー……、セスタ…でしたか」
名前を呼ぶと少女はそれだけで嬉しがり、さらに身を寄せてくる。手を取られ、その甲に頬を押し当てられる。……姉妹にしては仲良すぎませんか?まあそれはともかく
「そろそろ出発します。モンモランシーさんとセスタは荷台の方へ移動してください。私はミューズさんと御者をしますので」
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なんで私はこんなことをしているのでしょう?二人分の荷物が増えたことで少し狭くなった馬車の中でそんなことを思ってしまいました
荷台の床に座った私。その膝枕で横になってうたた寝しているセスタ。それを御者台から微笑ましそうな顔でちらちらと見てくるミューズさんとモンモランシーさん
温かい陽光が降り注ぎ、遠く空を行く鳥の声が聞こえる。心地よい天気なのに妹とべたべたべたべたしていてちっともおおらかな気持ちにはなれない
だけど、この状況をどこかで懐かしいと感じている私がいて、せめて今日くらいは妹の好きにさせてもいいかな……と、日和ってしまいました
がたがたと進む馬車に揺られながら、なんとなく誰にも聞こえない声で
「セスタ……」
私の妹の名前をそっと呼んでみたのでした……
ここぞと攻めるセスタ
そして微妙にシスコンかもしれないシエスタさん