学院に入学したばかりのせいか、魔法学院の一般的な制服に身を包んだ自分の姿はまだどこかぎこちなく感じる
そんなことをぼんやりと考えていたせいか、どうやら寮への道から外れ。人気の無い場所に来てしまっていた
建物の壁と学院に植えられた木に囲まれなにか暗い雰囲気を醸し出しているこの場所は、女が一人で歩くには似合わない
自信の間抜けさに呆れ、引き返そうとしたところに・・・・・・声は聞こえてきた
『魔法が使えるものを、貴族と呼ぶのではありません』
心臓が止まったのかと思った。小さな手を胸に当ててみるとちゃんと動いている。いつもよりドクドクと激しく脈うち、呼吸を乱す。よかった、生きている
ならばさっき聞こえた女の声は現実のものだ。なぜか足音を忍ばせて声の聞こえてきた方に向かう
建物の角を曲がった先に女はいた。自分の桃色がかったブロンドの髪と違い、黒色の艶やかな髪をしたメイドだった。そのメイドを三人の男子上級生が囲んでいる
状況はだいたい察することができた。おそらくさっきの声はメイドのせめてもの抵抗なのだろう。だが、言い方が悪い……あれではいいように乱暴されたあと殺されてしまうかもしれない
家名を出してでも止めようと足を踏み出そうとして・・・
『その身に気高き誇りを宿すものをこそ、貴族と呼ぶのです』
棒立ちのような姿勢で黙然と立ち尽くしていた
ただ、いつの間にか鳶色の目からは涙が溢れ流れていた。頬の上を一滴ずつ落ちては流れていく
ただただ涙が溢れた
何も考えられなくなって泣いてしまっていた
その一言に震えるような喜びを感じて、ただ泣くことしかできなくて
「ありがとう」と、彼女に伝えたいのに口からは小さな嗚咽しか出ない
しあわせだった、彼女の言葉は自分を肯定してくれた
否定しかされなかった自分の存在を、家族以外では彼女だけが認めてくれた
ぐしぐしと制服の袖で涙を拭い、彼女を助けようと顔を上げた頃にはすでにその姿はなく、なぜかうつ伏せに倒れ全身を小刻みに痙攣させながら気絶している三人の男子生徒の姿しかなかった
その三人を起こそうとして、ずっとそのままでいればいいのにと思いなおして踵を返す
彼女を汚そうとした三人に触れるのも、彼女のことを聞くのも嫌だった
寮に戻ったら見かけたメイドにでも彼女のことを聞いてみよう。そうして彼女に会いにいこう
まるで踊るような軽やかな足取りで、後に聖女と呼ばれることになる私は寮への道を進んでいったのだった
にじファンが閉鎖された際、なろうのユーザーページにデータだけは保管されてる
自分しか見ることが出来ない
て場合でもマルチに引っかかるのかな?
もし引っかかるようならマルチ解禁される中旬まで待機します