ていうか、原作再構成よりこういうオリジナルストーリーをダラダラ書いてる方が好きというか性にあってると最近気づいた。
───焼ける、灼ける、何もかも
肉も、骨も、人も、建物も、空気も、大気も………命まで
その業火の中で唯一命の鼓動を刻んでいる少年。
(………なんで、こうなったんだろう)
ただの家族旅行のはずだったのに。
突然火の手が上がって、逃げてる間に父と妹とはぐれて。
逃げ道を失って、たった今、目の前で母が死んで。
(僕も死ぬ、のかな)
不思議と恐怖は無かった。
頭に浮かんだ父と妹のことも彼方に消える。
大好きだった母と、同じ場所に逝ける。
「かあ、さん………」
顔を襲っていた痛みも消えた。
冷たくなった母に寄り添い、そっと目を閉じる。
このまま焼かれて死ぬ。
なんてことはない。
生きていても絶望しか待っていないのなら………それなら
(僕は、ここで死にたい)
火はもう目と鼻の先。
さぁ、来い。
僕を焼け。
母を殺したように、僕も───!
「どりゃあああああっ!!」
───壁が吹き飛んだ。
比喩でもなく、リアルに。
「後先考えて行動しろって言ってんでしょうが!」
「ごめん!でも、当たりっぽい!」
穴から現れたのは、防火服を身に纏い、消化道具を持った二人組。
声からして、恐らくは女性………いや、自分と同年代の少女達だった。
「そっちは!?」
「………だめだわ。ほとんど、もう………」
「っ………誰か!誰か生存者は!?」
諦めろよ。
余計なことせずに、早く逃げればいいのに───
募る苛立ち、思わず呻き声が上がり………それが失敗だった
「?………ティア!」
見つかった。
見つかりたくなかったのに
「こっち!この子、まだ息がある!」
「ならさっさと保護!もう長くは保たないわよ、ここ!」
「わかってる!………君、立てる?」
聞く前に立たせないでほしい。というか………
「………ほっといてよ」
「え………?」
「なんで助けるんだよ………とうさんも、かあさんも、サラも、みんな………みんないないのに」
「でも、君は生きて………」
「やめてよ………誰もいないのに、生きてたって意味ないのに………」
「っ………そんなこと言っちゃだめ!この先きっと………!」
「無責任に希望を与えようとしないでよ………無関係の他人のくせに………!」
嫌だった。
何もかも、嫌だった。
自分を背負う少女の存在も、生き残るであろう自分も。
「っ!スバル!」
「!?」
瞬間、天井が崩落、唯一の通路が塞がれる。
「そんな………」
「………」
(ほら、やっぱり)
他に通路は見当たらない。
探そうにも、その間にここは完全に崩れ落ちるだろう。
「万事休す、ね………」
一人が呟く。
そこにあったのは、諦めと………僅かな悔恨。
「………まだだよ」
「スバル?」
もう一人が呟き、その防護服を脱ぎ捨てる。
その下に隠されていた、短く切り揃えられた青い髪と碧色の瞳が露わになる。
「ちょ、あんた何を………」
「壁、ぶち抜く」
「はぁ!?」
「大丈夫。やれる気がする」
「気がする、ってあんたねぇ………」
スバルと呼ばれた少女が構えると、その足下に三角形の魔法陣が現れる。
「………なんで」
「?」
「なんで………諦めないの?なんで、そこまでして助けようとするのさ………」
少年の問いに、スバルは僅かに微笑んで、答えた。
「助けようとするのは、あたしが助けたいと思ったから。傲慢だとか、独善だとか思うかもしれないけど、それがあたしだから。諦めないのは………」
その掌に、空色の光が集う。
「「あの人」なら、絶対に諦めないから!!」
その光に、目を奪われた。
暴力的な衝撃波を放ちながらも、その光は優しく、暖かかった。
「ティア、その子お願い!」
「………できるのね?」
「たぶん!」
「はぁ………わかった。信じてるわよ、スバル」
「うん!」
もう一人の少女に抱えられながら、少年はその光景に釘付けになっていた。
「待ってて!」
「え………」
「君にもう一度、空を見せてあげるから!!」
一歩、踏み出す。
「一撃、必倒!!」
その光に向け、拳を突き出す。
憧れた人のモットーと同じく、全力全開で。
「ディバイィィン、バスタァーーーーー!!」
炸裂、轟音。
目の前の瓦礫どころか、周囲の炎すら吹き飛ばし、その空色の砲撃は消え去った。
「………」
「………」
「………できた」
間の抜けた声で呟くスバル。
そこに相方からの容赦ない怒号。
「って、あんたが一番驚いてどうすんのよ!」
「はっ!?」
「さっさと脱出!はい、ゴー!」
◇◆◇
背後に爆音と熱を感じながら、息苦しさから解放される。
「げほっ、げほっ!」
「ぶはぁっ!」
「あー、すずしー………」
咳込み、呼吸を整え、外気に身を馴染ませる。
三者三様のリアクションの中で、少年はふと空を見上げた。
「………ぁ」
そこには、雲一つ無い青空。
太陽と、うっすら見える二つの月。
あれだけの地獄があっても、空は何も変わらず蒼い。
それがどこか憎たらしくて………神聖に思えた。
「………空」
「………ねぇ」
ふと、スバルが隣に座って声をかける。
「あたしもさ。火事で死にかけたことがあったんだ」
「え………」
「ちょうど、今の君くらいの年の頃。一緒にいたお姉ちゃんとも離れ離れで、一人で、心細くて」
「………」
「でもね。あたしは助かった。助けてくれた人がいた。当たり前のように天井をぶち抜いて、あたしを助けてくれた」
「………」
「憧れたんだ。ああいう風になりたいって、心から思う」
「………なんで、それを僕に?」
「………なんでだろ?」
言って、恥ずかしげに笑う。
「………君の、家族はさ」
「っ………」
「あたしには、何も言えない。でも、家族を失う辛さはわかるよ。………君に、何か願ってなかった?」
「………願い………」
そこで、思い出す。
事切れる寸前の、母の笑顔と言葉を。
「………って」
「ん?」
「生きてほしいって………笑って、生きてほしいって………かあさん、最期に………」
「………そっか………」
「なのに………なのに僕………死んでもいいって………死にたいって、あの時………!」
「………嫌だったよね」
頭を抱え、うずくまりながら、静かに涙を流して嘆く。
そんな少年を、スバルはそっと抱き寄せた。
「かあさん………ごめん………ごめんなさい………僕はぁ………」
「嫌だよね………悲しいよね………」
「イヤだ………死にたくない………いきていたい………」
「大丈夫………君はちゃんと生きてるよ………生きて、ここにいるよ」
小さな叫びはやがて大きな慟哭へと変わり、少年は長い時間、泣き続けた。
スバルはその間中、ずっと少年の側に寄り添っていた。
やがて、呼吸も落ち着いた少女───ティアナが合流、少年はそのまま保護され、親族の叔母夫婦に引き取られた。
二人の接点はそれまでだが、少年は自分の命と心とを救った、スバル・ナカジマのことを片時も忘れはしなかった。
あの空色の光と、業火を前に一歩も退かない、あの背中。
それが、少年の夢と目標となるのに、そう時間はかからなかった。
そして、月日は流れ6年後───
◇◆◇
新暦80年、2月21日。
廃墟となっている都市に、一人の青年の姿があった。
背中まで伸びた蒼い髪をうなじの辺りで纏め、顔の左半分にはそこを覆い隠すように、黒いマスクが着けられている。
長身で、ブラウンの陸士隊制服に身を包んだその青年は、目を閉じて静かに座っていた。
ふと、彼の通信端末が音を鳴らす。
「………はい」
『おっすー。どうよ、気分は』
「緊張してるよ。Aランク試験だからね」
『だろうな。まぁ、気楽に行っとけばいんじゃね?』
「君は気楽だろうね」
『だってオレ単なる通信士兼デバイスマイスターだし』
「まぁね。………それで?」
『ん?あぁ、そうだった。悪いニュースと良いニュース、どっちから聞きたい?』
「試験前の人間に対して心折りに来るね………」
『いいじゃん。んで、どうする?』
「………悪い方から」
『オレとお前、異動だってよ』
「………マジで?」
『マジマジ』
「………どこに?」
『ああ、それ良いニュースと関係あるんだよ』
「?」
『例の件、受理されたぜ』
「………マジで?」
『お前それしか言ってねぇな………大マジ』
「………なんだ」
『?』
「悪いニュースなんて、始めから無かったんじゃない」
『ま、そうとも言うな』
「………ありがと。気合い入った」
『おう。んじゃ、打ち上げの用意して待ってっから』
「ん。じゃあ、また後で」
言って、通信を終える。
その直後、目の前に画面が現れた。
『クラウ・レイヴン一等陸士ですね?』
「はい」
『今回受ける試験は、陸戦Aランク試験。受験者は貴方一人。間違いは?』
「いえ、全てその通りです」
『………確認しました。では、これより試験を開始します』
画面が消えると、青年………クラウは前を向き、左手に握った愛機を構える。
「………行こう、スノウホワイト。ここが………夢への第一歩だ」
『Yes,buddy』
あれから6年。
あの火災で家族と左目を失ったけれど、代わりに夢と目標を。
友や仲間、かけがえのない相棒達と出会えた。
あの背中を目指し続けて、走り続けた。
そして………あの人の危機に、駆け付けられるようになるために。
「クラウ・レイヴン、スノウホワイト。行きます!」
───そしてこの日、クラウ・レイヴンは史上稀に見る好成績で試験を通過。
陸戦Aランク昇格と同時に、かねてからの目標───港湾特別救助隊所属となる。
そこで活躍する、憧れの恩人と共に人を救うために
スバル可愛いよスバル