なのはシリーズDVD一気見したんで筆がようやく乗った
そしてナカジマ姉妹の可愛さを再認識
ミッドチルダ、クラナガンのある住宅街。
小さなアパートの一室に、ギシッ、ギシッ………と、古びた木材が軋む音が響き渡る。
「………はぁ、はっ………」
「………疲れたか?」
「いんや、全然………!」
半裸の男と女………クラウ・レイヴンとクラン・ツァイネルの短い会話。
「ふっ………いっ………!」
「ん、はぁ………なぁ」
「………なに?」
「オレ、もう限界………!」
「我慢、してってば………!」
「無理、だっつの………!」
うわごとのように呟いて、クランは汗に塗れたその手を伸ばし………
「あー、もう無理!エアコン点けろエアコーン!!」
リモコンのスイッチを押すと同時、ピピッという音と共に涼やかな風が部屋に送り込まれる。
「あーあ。まったくもう」
「うっせ!閉め切った部屋で筋トレなんざやってるアホのすぐそばにいるこっちの身にもなりやがれバーカ!」
そう叫ぶクランの姿はショーツとネグリジェの下着姿。
対するクラウは膝丈の半ズボンだけである。
「暑いんなら窓開けるだけでもすればいいのに。電気代も安くないんだよ?あ、なんならクランもやる?」
「うっせ!あと、バカだろお前このバカ!そこら辺のガキ以下の体力しかねぇオレがお前に着いていけるか!」
「やってれば意外と気にならないもんだよ?今だって頭がいい感じに鈍ってきてるし」
「水分補給しろぉー!!」
べしっ、とタオルと温めのスポーツドリンクを叩き付けるクラン。
それで全身の汗を拭いながらちびちびとドリンクを飲むクラウに、そっぽを向きながらクランが口を開く。
「ったく………ナカジマ士長だっけか?逢えた上に覚えててくれたからってはしゃぎすぎだろ、お前」
「あはは………まぁ、嬉しかったし」
「純粋なことで。………とっとと風呂入るなりなんなりしてこい。身体冷やす前によ」
「わかってますよ奥さ………」
そう言ってクラウが立ち上がる。
タオルを片手に浴室へと向かった………その時。
「っと、鳴ってるぞ、携帯」
「?誰だろ………ナカジマ士長?」
テーブルの上に置いてあった通信端末に着信。
画面に、今日正式に上司となった女性の名前が映ったそれを手に取り、通話状態にする。
「はい、レイヴンです………」
『あ、クラウく………レイヴン一士!?こちらスバル・ナカジマ!』
「………何かあったんですか?」
『災害発生!救助隊と陸士隊に出動要請!』
その言葉にクラウの、そしてそれを見ていたクランの目つきが一変する。
『場所はサウスストリートD地区内、グランドホテル・ヨーギ!かなり大規模な火災が発生してる!詳しいことはまだわからないけど、中には従業員やホテル利用者含め、かなりの数の被害者が残っているらしいの!』
「わかりました、すぐに向かいます!」
『私も今急行してるから、現地で合流!初日からハードだけど、よろしく!』
「了解しました!」
通話が切れる。
クランを見やれば、既に壁際にかけてあった制服に着替え終えていた。
「………D地区のグランドホテル」
「飛ばせば10分以内に着くな」
「最短ルート、よろしく」
「任せろ………見えた。これなら普通より3分22秒縮まる」
「グッジョブ。流石」
話しながらクラウ自身も制服を着込み、それを終えると一目散にアパートの階段を駆け降りる。
停めてあったバイクに二人で跨がり、クランが前に座るクラウの胴に腕を回す。
次にクランがモニタを操作すると、バイクのメーター部分に地図、現在地から目標地点までへの赤いラインが現れた。
「………なかなかハードな道選んだね」
「文句は?」
「無い!むしろ最高!」
『Get Ready,Stand By』
バイクを走らせ、ルートに従って走り出す。
右手首の宝石がそれに応えるように輝き、次いでクラウの身体が蒼い光に包まれる。
「スノウホワイト!セットアップ!」
『Set Up』
割れるような音と共に光が弾け、中から姿を変えたクラウが現れる。
下半身は黒いズボンとブーツ、膝から脛にかけて同じく黒いプロテクターが着けられている。上半身は全体を覆うボディスーツの上に袖のないコート。
目を惹くのは、首もとに巻かれ、後ろに二房に分かれたマフラーと両腕の肘から先までを包み、手首部分が大きく膨らんだガントレット。
「近接格闘特化型ミッド式インテリジェントデバイス、スノウホワイト。オレの自信作だが………我ながら、いつ見ても惚れ惚れするな」
「ベルカ式と比べても遜色ない性能だからね。クラン様々だよ。………さぁ、飛ばすよ!」
クランがより強く掴まったことを確認し、アクセルを回して一気に加速。
蒼い獅子とその相方、新天地での
◇◆◇
「見えた!」
「おいおい、とんでもねぇな!」
「レイヴン一士、ツァイネル通信士も、こっち!」
バイクを走らせること数分、火災現場近くで手を振るスバルの姿があった。
「すいません、遅くなりました!」
「気にしないで!ブリーフィングは走りながら手短に行うから!」
「んじゃ、オレは向こうで構えてます!」
「お願い!」
クランが離れた所でモニタを展開、クラウとスバルは一気にホテルまで走り出す。
「炎は既にホテル全体に回ってて、消火までは時間がかかる!幸い脱出した人は多かったけど、それでもまだかなりの人が残ってる!他の救助隊はもうすぐ着くから、私達は
「はい!」
「私が先行する!レイヴン一士は後に続いて周囲を索敵!」
「了解です!………クラン!」
『どんな反応も見つけてやるよ!気にせず突っ込め!』
「だ、そうです!」
「頼りにさせてもらうよ!それじゃ………ウィングロード!」
走りながら、スバルは自分の愛機、マッハキャリバーを展開、地面に右拳を叩きつけ、空色の道を走らせる。
「GO!」
空色の道、ウィングロードを走り燃え盛る火の海へと突撃する。
炎と熱はバリアジャケットで防がれるためダメージに問題は無いが、それよりも瓦礫と煙に視界がかなり狭まる。
「酷い………!」
「ツァイネル通信士!救助者の反応は!?」
『直進28m、10時の方向!かなり多いっす!』
「了解!行くよ!」
「はい!」
走り出したスバルに少し遅れ、クラウが続く
脚部がローラーブレードのスバルに対して、何もない自分の脚だけで走るクラウ
全力で飛ばすスバルに、それでも追いすがるほどの速さをクラウは持っていた
「………速いね!」
「クランのお手製ですからね!………間もなくです!」
「OK!」
【クラウ、念話でいいか?】
【クラン?】
【今詳しく見てみた。要救助者に混じって、武装したのがちらほらいる。3、4人ぐらいだ】
【………妙だね】
【ああ。爆破や放火が目的ならとっとと逃げりゃいいのにな。………このパターン】
【うん………たぶん】
【何してくるかわかんねぇ。気ぃ抜くなよ】
【了解】
「ナカジマ士長。クラウから連絡です」
「?」
「要救助者達とは別に、武装した集団がいると」
「………どういうこと?」
「………すいません。今はうまく説明できません。でも、防御の展開だけでも用意を」
「………わかった。レイヴン一士、着くよ!」
「了解!」
そして、二人は速度を上げる
目的地まで………残り数m
「到着………!?」
『Round Shield』
目標の地点へと到達した瞬間、眼前で弾けた閃光にスバルの視界が一瞬霞む
愛機、マッハキャリバーが展開した防壁に、魔力弾が衝突したらしく、数m先に複数の男が立っていた
「………クランの報告通り、ですね」
「時空管理局です。直ちに武装を解除して、その人達から………」
「うるっせぇ!!」
スバルの警告を無視し、再び魔力弾を放つ男
後に続いて、他の男達もスバルとクラウに向けて攻撃を始めていた
「こんな密集地帯、怪我人も多いのに……!」
『……レイヴン一士!』
『は、はいっ!』
『私が注意を引きつけるから、要救助者を連れて逃げて!』
「!?」
魔力弾の雨をかいくぐりながら、そう念話を飛ばすスバル
一瞬眼を見開いたクラウを横目に、スバルは防壁を展開しながら一気に男達に吶喊した
「うぉおおおおおっ!!」
「ぐっ!?ち、ちくしょおおおお!!」
「……すぐ戻ります!みなさん、動ける人は怪我をしている方や子供に手を!他は僕に着いてきてください!」
クラウの言葉に、よろよろと数人が立ち上がり、近くにいる子供や怪我人に肩を貸していく
そこに男達の魔力弾が殺到するが、クラウが発した広域防御で相殺、そのままスバルのリボルバーシュートが直撃し、一人は昏倒
その隙に、クラウ達は一気に離脱した
◇◆◇
「やれやれ、ここまで動きが速いとは」
火災現場より少し離れた高層ビル
そこの一室から空間ディスプレイで火災……中にいるスバルとクラウ、外の陸士隊や救助隊を眺める男がいた
「それにしてもこの女性……彼女が、戦闘機人タイプゼロ。いやはや、何とも人間らしいじゃあないか」
くつくつと笑い、背後にいる人物に目をやる男
まだ十代半ばといった人物は、あどけなさの残る少女
深い蒼色の長髪を三つ編みにしたその少女は、感情の無い瞳で映像を見つめている
「先天的な彼女と後天的な君。いずれ、どちらが上か試す日が来るだろうね」
歪んだ笑みを浮かべながら、男は映像へと視線を戻した
「六年前の生き残り……君にも、期待しているよ?」
◇◆◇
「ナカジマ士ちょ……!?」
「……レイヴン、一士。救助者は……」
「……後続の救助隊が引き取ってくれました。それで、この状況は……」
「………」
スバルの所へと戻ったクラウは、その現場を見て愕然とした
言うなれば、血の海
臓器や血肉、脳漿に至るまでが辺り一面に飛び散り、人としての原型を留めているのは震えている一人だけ
「……いったい、何が……」
「……おまえらの、せいだ」
「え?」
震えていた男が顔を上げる
恐怖を張り付け、眼からは滂沱の涙を溢れさせている男は、目の前に立っているクラウに掴みかかった
「あのまま、あのまま放っといてくれりゃよかったんだよ!そうすりゃ、そうすりゃ俺たち誰も……!」
「くっ……落ち着いて……!」
「……あっ。あぁ、ぁぁぁアアアアアアっ!!ちくしょう俺もだ!俺までぇ!!」
「!?」
突然、頭を抱えてのたうち回る男
混乱するクラウと、男に駆け寄るスバル
「落ち着いて!大丈夫、大丈夫だから!局の技師に頼めばすぐに……!」
「ナカジマ士長……?」
「いやだ!イヤだイヤダアアアアアアっ!!たすっ、助けてくれ!あんたら管理局だろ!?はやく、はやくたすけ」
スバルに縋りつくように身体を起こした男
その腕がスバルに触れようとした途端
「でぅっ」
───その全身が、内側から弾け飛んだ
「───」
飛び散る血飛沫
粉微塵になった臓器や骨が、クラウとスバルにぶちまけられる
鼻を突く鉄錆の臭いと、肉が焦げたような臭い
腕や足といった末端の部分は、かろうじて原型を留めている
……そう、辛うじて
「………」
スバルもクラウも、その光景に何も言葉を出せなかった
そして二人は、クランからの脱出を促す通信が入るまで、そこに立ち尽くしていた
蒼い獅子の初任務は、怪我人多数、なれど死者と行方不明者は0という、結果だけ見れば無事成功、といった具合に終わった
だが、悪すぎる後味はクラウの心の奥に確かな引っかかりを残していた