副業持ちの艦娘達   作:maple sugar

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青葉の言の葉

「えー、今日の見出しは「噂の提督、就任前から艦娘を調教」っと」

 

「ちょっと待ってくれ! 誤解なんだって!!」

 

「はぁ、あの真面目な若葉ちゃんがあんな風に調教されてしまうなんて……」

 

「調教したの俺じゃないから! もともとそういうやつだったから!」

 

「まあ、知ってましたけどね。最近だと、もう長門型の砲撃では物足りないとか言ってましたし。でもまさかあそこまでだったとは……。この青葉の目を以てしても見抜けませんでした。でもあの感じだとあなたもう気に入られちゃってますよね? あの子あまり誰かを気に入るような子じゃなかったですし、あなたを自分の司令官だと認めたということなんでしょうか?」

 

「いやそれだけはマジで勘弁してくれ……」

 

 そんな風に俺のことを認められても何もうれしくないだろう

 

 あの時、時雨に首輪をつけているところを見て「よし、この人についていこう!」とか思った奴なんてお断りだ。断固! ダメ! 絶対! 

 

「ああ、そうだ。時雨ってやつ知ってる?」

 

 俺にはもう一人どうにかしなければならない問題があることを思い出した。それは白露の妹である時雨の事だった。

 

 白露から頼まれてしまっている以上どうにかしなければならないし。若葉以上に困った奴なのだ。

 

「時雨……いえ、すみません。私の調べたところには載っていませんね。今度調べてみます」

 

「ああ、そうなのか……」

 

 そうか、それは残念だ。この情報マニアの青葉ならば何か知っているのでは? と思ったのだが……。 

 

「あっ! でも他に知りたいことがあれば何でも教えますよ」

 

「……なぁ、ちょっといいか? こういうこと聞いていいのかわからないけどさ。艦娘って何なの?」

 

「何なのとは?」

 

「俺ここに来ていろんな奴らにあって来たけどさ、何か変な特殊……いや性格はともかくとして普通の女の子と変わらないんだよな。なんかさわざわざ「艦娘」って呼称する意味はあまりないんじゃないかって思えるくらいにさ」

 

「そう……普通に見えますか……」

 

「それでは司令官に質問します。私はこの木をどうやって登ったと思いますか?」

 

 青葉は突然そんな関係なさそうな質問をしてきた。地面からさっき青葉が登っていたところまで4~5メートルはある。どうやって……そりゃあ、よじ登るとかだろうか。昔はよくやったものだ、木に登っては滑って落ちて泣いて帰ったのを思い出す。今ではとある道場で鍛えまくったおかげで手を使わずとも垂直な壁まで登れるようになったが。

 

「答えはですね……、あっ、このカメラ持っててもらえませんか?」

 

 青葉は俺にカメラを渡すと少し助走をつけて木の枝目掛けてジャンプした。青葉はそのまま垂直に飛びながら4~5メートルはあった枝の所を通り越しさらにその上にある枝をつかむと先ほど青葉がいた枝の所に着地した。

 

「どうです?」

 

「そ、そのくらい俺もできるし」

 

 俺はウソをついた。本当はその下の枝まで手が届けばいい方であとはそこからよじ登るしかない垂直とびだとこれが限界である。

 

「じゃあこれいつ飛べるようになりましたか?」

 

「いつって?」

 

「私は8歳の時にはこれが出来ました」

 

「ふ~ん。8歳かぁ……8歳!?」

 

 いやいや8歳といえば小学2年生か3年生くらいだろう。この高さを小学生の時には飛べてたの!? 

 

「しかも私は当然ですがあなたみたいに鍛えていたわけではありません。ですが私にとってはこのくらいが普通だったのですよ。登ったはいいものの降りられなくて泣いていましたが……」

 

 それは今も変わらないのか……。あれ? 

 

「じゃあ、お前そこから降りられるのか?」

 

「……あ」

 

 青葉……大丈夫だろうか? 

 

 

 

 

「ぜっ、絶対! 絶対ちゃんとキャッチして下さいよ! あっ! そういうフリじゃありませんからね!」

 

「わかってるって。ほら、来い!」

 

「なんで構えてもないのに来いとか言えるんですか!」

 

「てゆうか艦娘は頑丈なんだろ? どうにかなるだろ」

 

「艦娘でも痛いものは痛いんです!」

 

 全く注文の多い奴だ。俺は今回はしっかり青葉を受け止めるとそのまま地面におろして事なきを得た。

 

 もうこいつは高い所に登らないほうがいいのではないだろうか

 

「……ゴホン。まあそういうわけで私昔から異常なほどに頑丈だったわけですよ。まあ、今では垂直に3階の窓まで飛ぶこともできますから潜入捜査に使えますが……」

 

「ですが、こんな奴が普通の人間たちの中にいると……まあ、浮くわけですよ。当然です。ただ強いとか特別な人間だとかでは片付かない位私の存在は異常でしたから」

 

 青葉はカメラを少し両手で強く握りしめながら話していた。

 

「私の両親は普通の人間だったはずなんですがね。私と……妹の衣笠はみんなの言う普通じゃなかったんですよ」

 

「あなたは普通といいましたが……それは違います。私達は謎の多いアンノウンですよ。なぜか現れた深海棲艦に対抗しうる謎の力を持った娘達なのですから」

 

「ここに来ていろんな人たちに聞きましたが、皆努力してたんです。普通に見えるように、普通の女の子に見えるように。自分の本来の力を隠して、まるでどこぞの妖怪人間みたいに」

 

「皮肉なものですよ。私がテレビのニュースで見ていた外国に宇宙人が攻めてきてそれをヒーローがやっつけたり、超能力のような怪奇現象があったり、そういう謎の魅力に少なからずとも引き込まれて真相を解き明かすような仕事を目指そうとしていたのにまさか自分がそちら側の人間だったなんて……」

 

「知ってますか? そういう人たちの中にも艦娘って見つかってるんですよ。私達はそういう存在なんです。自分が何者かなんて私が真っ先に聞きたいですよ」

 

「おっと、話がそれてしまいましたね。……ごめんなさい」

 

 青葉は俺に視線を向けることなく謝った。どこか少しおびえているようだった。

 

「……そうですねぇ。今のところ分かっていることといえば現代の兵器は深海棲艦にはほとんど効かないということですかね。衛星での監視は可能ですが赤いもやがかかって観測が難しいんだとか。あと、様々な超能力者やヒーローなんかでも傷一つ与えられていません。有効なのは私達艦娘の艤装だけです」

 

 それは鹿島先生から聞いた。艦娘が見つからなかったらもう海には出られずに人類は内陸の方に避難せざるを得なかったらしい。

 

「つまり、うまい魚が食えているのはお前達艦娘のおかげということか、いやマジありがてぇ」

 

「いえいえ、それは私ではなく今現在戦っている艦娘達に言ってあげてください。……魚好きなんですか?」

 

「まあな。肉より魚派を自称するくらいにはな。なんでそんなことを聞くんだ?」

 

「ああ、いえ何でもないです」

 

 なんかはぐらかされた。まあいいや話の続きを聞こう。

 

「それで、他にはあるのか?」

 

「そうですね……ああ、こんなのはどうです? 最初に発見された艦娘の話です」

 

 最初に発見された艦娘? 何か特別なのだろうか? 

 

「実はですね。最初に発見された艦娘は海に浮いていたんですよ」

 

 は? 海に? なぜ? 

 

「なぜかはわかりません。自分が何だったのかという記憶もなかったそうです。彼女と最初の提督が今の深海棲艦に対抗するシステムを作ったそうなんです」

 

「今その艦娘はどうしてるの?」

 

「うーん、それもよくわかってないんですよ。データが何処にも残ってないんです」

 

「ふーん、そっかぁ」

 

まあでも今の俺にそんな昔の偉人の話をされたところでしょうがない。

 

「それでは、司令官がもっと興味のありそうな話をしましょう」

 

「興味のありそうな話?」

 

 青葉は手帳をバラバラとめくり始めた。

 

「はい、球磨型の雷巡姉妹の話です」

 

「いや、もうしばらくあいつらには会いたくないんだけど」

 

「何をおっしゃいますか。聞きましたよ、もう北上さんはあなたの所に行くために卒業試験に精を出してるそうじゃないですか」

 

 いやまあ、北上はとっつきにくい所はあるが悪い奴ではないことは確かだ。誰にでも平等に同じ距離感で付き合う彼女は場合によっては男を勘違いさせてしまう魔性さえも兼ね備えているといえよう。

 

 だが問題なのはもう一人の方である。

 

「というわけでさっそく取材に向かいましょう」

 

 青葉はこれから行く目的地であろう場所を指さしながら元気よく立ち上がった。

 

「いざ、軽巡の訓練施設へ!!」

 

 

 

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