因みに私はアサシンでした。
誤字報告をしてくださった方お気に入り登録してくださった方ありがとうございます。
「なぁ青葉さんや」
「何でしょうか? 司令官」
「お前うちに来て暇みていろんなところに取材に行きたいって言ってたよな? 具体的にどんなところに行きたいんだ?」
「そうですねぇ、軍事関係者になった以上私の身分ではありえない人の所に取材に行ったり……UFOを激写したり、幽霊をこのカメラで成敗したりしたいですね。他にも未知の生命体とか裏で危険なウイルスを研究してる会社の裏を集めたり……」
う~ん、このパパラッチ脳め。そんな簡単に見つかるわけないだろうそんなの。俺だって色々やって来たけどそこまでの物には出合わなかったぞ。
ここで俺は、謎の技術を持った所在不明の潜水艦娘や死にかけた時にしか出てこない駆逐艦娘の事を棚に上げていた。
「ですが、やってみなきゃスタート出来ないですし、やろうと思わなければそもそもスタートラインにも立てないのです。よいですか? 何事も挑戦なのです」
「そのためなら公共の機密データもハッキングすると? 人々を守る艦娘が?」
「夢の実現のためなら多少の犯罪なんて誤差ですよ誤差。それに……」
「それに?」
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。司令官」
「はい、今のセリフ録音したからな」
いつかボロを出すんじゃないかとずっとスマホで録音していたのだがまさかこんなに簡単にボロを出すとは。
「あ、ちょっと待って。本当に勘弁してください」
青葉は俺からスマホを取り上げようとするが俺がスマホを持ったまま手を上げれば青葉は俺のスマホに手が届かない。それでもスマホを取ろうとぴょんぴょん飛んでいた。
「あっそれをダシに使って私に乱暴するつもりでしょう? エロ同人みたいに!」
「私はそんな安い女ではありませんよ! 若葉ちゃんみたいに簡単にこのソロモンの狼に首輪をつけられると思わない事ですね」
正直な話をすれば通信機器において青葉には全く敵わないと思われるためこんなの後ですぐに消されてしまうだろう。
まあ、別に何かしようとしていたわけではないが。
「というわけでやってきました。訓練施設です」
青葉とそんな話をしているうちに目的地に着いたようだ。
ここは軽巡専用の訓練施設。駆逐艦の施設と比べると少し小さくはあるが、駆逐艦は数が多いため、まるで学校の様にすべての艦が同じように訓練する施設が多いが、設備の充実性ということで言えば軽巡の訓練施設の方が充実しているのだ。
そして何より彼女達、軽巡は水雷戦隊を編成されたときに駆逐艦数隻に指示を出しながら戦わなければならない。
「なぁ、青葉」
「はい? なんでしょう」
「ここでの訓練って見学していいの?」
「もちろんOKですよ。気になりますか?」
気にならないわけではない。だが一つだけ疑問があったのだ。
さっきも言ったが軽巡洋艦の艦娘達は駆逐艦達を統率しなければならない。
つまりあの一人相手にするだけでも手に余るような駆逐艦たちを数隻分統率しなければならないのである。
時には引きこもりで、時には我が強くて、時には自分の性癖を押し付けるような駆逐艦達をだ。
俺には絶対にできない。いったいどうやってるんだろう?
俺と青葉は軽巡の訓練施設の見学スポットにやってきた。
見学スポットは2階にあり大きな窓がついている。そこから大きなプールの様になっている訓練場を見下ろすことができるようになっている。
俺たちは窓のすぐそばには座るところも用意されており、俺はそこで自販機に飲み物を買いに行った青葉を待っていた。
「司令官。飲み物買ってきましたよ」
「おお、ありがとな」
「お茶とコーヒーを買ってきましたが、どちらがいいですか?」
「コーヒーだな」
即答した俺に青葉はコーヒーを手渡す。
「なぁ、これ危なくないの? 流れ弾とか飛んで来たらやばくない?」
「大丈夫ですよ。防弾ガラスですから長門型の砲弾でも防げますよ」
そっかぁ、なら安心だな。
「あの、すみません」
俺と青葉が軽巡の訓練が始まるまで待っていると声を掛けられた。
「あなたが噂の提督さんですか?」
「ええ、そうです。彼こそ噂の提督さんです」
答えたのは青葉。
「何でお前が答えてるんだよ」
「私は長良型軽巡の由良と申します。お会いできて光栄です」
いつからかお会いできて光栄とか言われるほどの人間になっていたのか俺は。本来はまだ提督にすらなっていないのだが……。
この由良という軽巡艦娘……背は高校生くらいだろうか? かなり落ち着いた印象を受ける。
だが、早とちりしてはいけない、艦娘はヤバいということをここでイヤというほど見てきた俺は第一印象では判断したりしない。
後からになって本性を見せてくるタイプかもしれない。気を付けなければ……
しかし、何より俺の目を引いたのは腰よりも下まで続いている恐ろしいほどにサラサラした真っ白な髪。その長い髪をきれいにまとめているのもまた特徴的だった。
これ私生活に影響出るんじゃないか? 座るときなんか地面に髪がつくぞこれ。
俺は由良に隣に座るよう勧めると失礼しますといいながら俺の隣に座った。
うん、とても礼儀正しい娘だ。
肝心の髪はというと地面から僅か3cm~6cmの所、つまりスレスレの所で毛先が地面に着かずに済んでいるのだ。
これを計算して手入れしているのならすごいなぁとか思ったが、由良は左手で絡めるように髪を正面に持ってくると膝の上に乗せた。
……まぁ、そうなるな。
「ええっと、何か用かな?」
「はい、実は先ほど大淀さんがあなたをお見かけしたようでして、提督さんの事を案内して差し上げるように言われてきました」
ああ、そういえば大淀も軽巡の枠に入るんだったな。だったらお前が案内すればいいだろうとか思ったが、よくよく考えてみたらあいつは少し役割が特殊だったことを思い出し、忙しいんだろうなぁということで自己解決した。
「それにしても良い時に見学に来られましたね」
「良い時? 何かするの?」
「はい、今日は駆逐艦娘を交えた合同訓練の日なんです」
しばらくするとぞろぞろと駆逐艦娘が集まってきた。中には叢雲の姿もあり駆逐艦娘の中でも特に模範になろうとしていることが窺えた。
その場にはあの初雪もいた。
「一人の軽巡が何人かの駆逐艦をまとめて指導するわけなのですが、合同訓練のたびに代わるんですよ」
軽巡たちが今回担当する駆逐艦娘達を呼んでいく。自分が担当する駆逐艦娘は昨日あらかじめ軽巡達が話し合って決めたものらしい。その班分けのようなものが張り出されようとしていた。
しかし様子がおかしい、その紙が張り出される前なのにまるで駆逐艦娘達は神に祈るかのような。まるで何かにおびえているかのような姿があった。
「なんか駆逐艦達の様子が完全におかしいんだけど……」
「ああ、きっと神通さんですね。彼女の訓練はこの世に生まれてきたことを後悔するほどと聞いています。彼女の訓練は駆逐艦娘にとって何としてでも回避したいものでしょう」
青葉が代わりに答えた。
「うーん、彼女の訓練は見たことがないのですが普段はとても温厚で優しい人のはずなんです……。そんな厳しい訓練をする方には見えないんですが……」
「いえいえ、青葉の情報によれば彼女の訓練を受けた後に戦場に出た艦娘達は「戦場が天国に感じられた」と口々に言いますよ」
そして、紙が張り出され今日の班分けが発表された。
そしてその瞬間、何人かが入り口に向かって全速力で走りだした。それを神通と思われる艦娘が追いかける。恐らく恒例行事なのだろうか、ものすごく手際よく駆逐艦娘達をとらえていく。
しかし最後まで残って攻防を続けている艦娘がいた。
「って、あれ初雪じゃん」
初雪は普段のおっとりとした性格からは想像できないほどの俊敏な動きで神通の攻撃をかわしながら入り口に向かって走っていく。
……が、あえなく御用となった。
引きずられていく初雪は何かを叫んでいるようだった。
神通の班であったのにもかかわらず逃げなかった猛者もいたようだ。
ひとりは叢雲。
平然とした顔で神通の指示を待っていた。……いや、よく見ると顔は青ざめているし、小刻みに膝が震えている。今にも泣きだしそうだ。
若葉も呼ばれたようだ。
若葉は平然と神通のもとに歩いてゆく。……心なしか嬉しそうだ。
他の艦娘達は安心したようで改めて自分の名前を確認しだした。おそらく最初から皆神通の欄しか見ていなかったのだろう。まずそこに名前がないことを確認するのが先だったようだ。
こうして、軽巡と駆逐艦達の合同訓練が始まったのであった。
うん、あの駆逐艦娘達を統率できる理由はなんとなくわかった気がする。