大晦日で忙しすぎてストックがパーになってしまった・・・
艦娘達といえば戦闘だけが仕事というわけではない、自分のコンディションとともに艤装の整備をしたりまた、
なぜか提督も艦隊指揮だけでなく艤装の整備のこと、しかもすべての艦種の艤装まで習わされるのは少し疑問だが、まあ必要なことなのだろう
艦娘の艤装というのは基本的に皆同じではあるものの自分の型などで艤装が変わってきたりもする。
更に、訓練の中で自分の癖に合わせて艤装を調整していくのもまた彼女達がここにいる間にやっておかなければならない事の一つであった。
まあ、さらに精密に彼女たちの癖を分析しデータ化してからさらに細かい調整を入れていく役職にある艦娘もいるようだ。
整備が終われば後は帰路に就き夕食までの時間を自由に過ごすこととなる。
「はーい、みんなお疲れ~」
「うむ、お疲れさまだ」
艦娘達は今日も訓練を終えそれぞれの部屋に帰っていく。
特に駆逐艦娘達は今日の合同訓練により意気消沈していた。なんというかゾンビの群れとでもいうべきだろうか?
「……寝る」
あの初雪ですら、最近は真面目に訓練に出ているため夜に寝るという規則正しい習慣に戻りつつあり、夜に電気の点いていない彼女のプライベートスペースをむしろ不気味がる艦娘も出てきたようだ
それ以外の艦娘は、ほとんどの娘達が夕食までの間、ガールズトークに花を咲かせているのであった。
そのほとんどは、今日も香取姉妹が戦闘中にもかかわらず女子力を振りまいていたとか軽巡の先輩がお菓子くれたとかそんな話ばかりで中には、弾幕が足りないだとか今度こそあのニヤケ顔に喰らわしてやりたいだとか物騒な言葉も聞こえてくるが、それは艦娘あるあるのようなものでただでさえ好戦的なものの多い艦娘が本当に戦場に出るのであればなおさらそういった言葉が聞こえてくるだろう。
中にはどう見てもおっとりとしていてそういったことに無縁な娘でも物騒なことを言って周囲を驚かす時もあるようだ。
だがそんなガールズトークの中にもいわゆるタブーの領域があった。
それは、お互いの身の上話である。
艦娘の中にはもうすでに自身の家族が亡くなっている娘やそうでないもの、またあまり表には出られないような仕事をやっていた者たちもいるためそのあたりはあまり会話には出さないのである。
とはいっても、しばらく一緒に寝食を共に生活していればなんとなくわかってきたりもする、例えばどう見ても戦いの世界にいるのが初めてではないものだったりとか。
しかしながら、彼女たちの中にはまるでその出所がわからない者もいた。例えば北上達とかだがそれよりも何というか艦娘としての仕事に異様に執着を持つものがいた。
「叢雲はどーするの? これからみんなで集まろうって思うんだけど」
「私はやることがあるわ。先に行ってて」
吹雪型駆逐艦叢雲、彼女は秘書艦としての仕事のためにこの寮の寮長を務めていたのだ。
叢雲の主な仕事は艦娘の要望や苦情を受け付けたりと結構忙しい。
「ねぇ、叢雲。隣の部屋がうるさいんだけど、どうにかしてくんない?」
「ああ、川内さんの部屋ね。神通さんに言っておくわ」
「ねぇ、叢雲さん。長門さんが駆逐艦に交ざって枕投げして壁に穴が……」
「業者に連絡しておくわ。それから長門さんは謹慎処分ね」
そして何より大変なのが……
「消灯後ね。さて……見回りの時間ね」
夜の見回りであった。
毎度の事ながら夜にうるさくなるものや夜に寝ないものを注意して回ったりするためより時間がかかる。
そして一番大変な理由というのが……
「……」ガタガタ
「あら、叢雲さん見回りですか?」
「ひぃぃぃぃ!!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、いえ、大丈夫よ、心配しないで。というかあなた何してるのよ!? 消灯時間よ!」
「いえ、お手洗いに……」
「ああ、そういうことね。ま、まあ、夜は危ないから気を付けなさい」
実は叢雲は夜が苦手なのだった。
もしこんなことが司令官にバレれば示しがつかないため夜を克服するべく夜に一人で歩く練習もかねて見回りを行っているのだ。
始まった当初は夜中にトイレに行くのすら怖がっていた叢雲だったが、最近ようやく他の階まで行けるようになった。だが────
「うう、なんで今日は初雪まで寝てるのよ。川内さんまで……いつもは注意しても起きてるのに……」
それは、夜中に起きている者たちがいたおかげであった。今日は合同訓練があったため皆、寝静まってしまっていた。
そのためいつもなら少なからず感じる人の気配すら今夜はないのであった。
「お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない、オバケナンテイナイ、オバケナンテイナイ、オバケナンテイナイ、オバケナンテイナイ……」
夜中の廊下を独りライトで照らしながらいつもよりも時間を掛けて一周を終えた。
マア、ワタシニカカレバコンナモノヨネ。イジョウナシ
モシモシ? ソコノカタ、ヨウムチャンミナカッタカシラ?
イエ、ミマセンデシタ。
アラ、ソウ。オナカスイタノニドコニイッチャッタノカシラ。
「うん、異常なしね」
「あら? 先ほどどなたかいらっしゃいませんでしたか?」
「ああ、神通さん。いいえ誰もいなかったわ」
「そうですか。それはそうと、今日もお疲れ様です。大変ではありませんか?」
叢雲の労をねぎらうのは神通さんだった。あの訓練の後も仕事のある叢雲のために神通さんも仕事を手伝ってくれているのだった。
「あら、大丈夫よ。それに訓練が大変でも別の事がおろそかになってやっているようじゃあ。司令官に示しがつかないわ」
「ふふふ、それならもう少し厳しめにしても問題ありませんね。……冗談ですからそんな顔しないでください」
叢雲は今後の行事予定などの資料に目を通していた時、神通が話し始める。
「そういえば貴方はもうすぐここを去るのでしたね」
「ええ、そうなるわね。その時のために新しい寮長を決めておかないとね」
叢雲は資料を読み終わると、それをファイルに綴じ棚に戻す。消灯時間までまだ時間があるためお茶を淹れ始めた。
「どんな方を次の寮長に選ぶつもりですか?」
神通は叢雲に注いでもらったお茶をしばらく冷ましてからすする。
「別に誰だってかまわないわ。やる気のあるやつを志願制にして選べばいいんじゃない?」
「そうですか。貴方が相当この役職を張り切ってやっていたので、何か思い入れがあるんじゃないかと思っていたのですが?」
「そんなわけないじゃない、秘書艦の訓練みたいなものよ。秘書艦になってやることは大体一緒なのよ」
「ですが秘書艦の仕事はあくまで司令官の補助です。しかも、秘書艦としての訓練は着任してからでも遅くはないのでは?」
叢雲は他のみんなから見ても明らかに頑張りすぎなのであった。他のみんなは着任して戦闘中や艦隊生活の中でみんなに迷惑が掛からないようにするのに精いっぱいのはずなのだが、叢雲はそれ以上のことまで手を出していた。ただ、他の人から手を借りながらやっているところを見ると一人で抱え込んだりしているわけではなさそうだった。
「もしものためよ、私の司令官が艦隊指揮が苦手でも執務が苦手でも対処できるようにしておかないといけないわ」
「そういえば貴方は気に入った司令官がいましたね。彼はどうなのですか?」
「まだわからないわ。司令官としては優秀みたいだけど何分サボり癖があるみたいね」
「それは……本当に良いのですか? あなたがそんな司令官のもとに行こうとするとは思えないのですが……」
「いいのよ、それにサボってるときは私が引きずってでも連れてくるわ」
傍から見た叢雲は、常に優秀さを求める艦。その分プライドが高く自分の上司である司令官にはそれ相応の力量を求めているとそう思っていた。
というか、なぜ叢雲が司令官の成績を知っているのか神通は少し疑問に思ったが、まあそういうものだろうと考えるのをやめた。
「私はね、普通の艦娘とは少し違うのよ。ああ、誤解しないで頂戴、何というかね産まれ方が違うの。私はこの世に生を受けた段階で半分艦娘になるのが決められていたのよ」
「え? それって────」
すると突然叢雲の電話が鳴る。
電話を見ると・・・司令官だった。
「ああ、ごめんなさい。ちょっと出てくるわ」
「なによ、こんな時間に!」
「ああ、叢雲か。あのさ、今から用事あるか?」
「ないけど・・・何するのよ?」
「その・・・大事な用があるんだ」
「は?」
今回は冥界からゲストの方に来ていただきました