副業持ちの艦娘達   作:maple sugar

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こんなに時間が空いてしまって申し訳ないです。

死ぬほど忙しかったもので・・・




若葉、お前・・・

「司令官! 青葉、聞いちゃいました!」

 

 青葉は自信満々で俺に語り掛けてくる。北上から情報を引き出せたのがよほどうれしかったのだろう。

 

 まあ、本当に青葉が欲しがってそうな情報は北上の記憶操作によって除去されてしまったが……

 

 昔の偉い人が言ってた、何かしらの知識や技術を欲しがるのならそれなりの代償が必要なのだと。今回の場合は、青葉が自分がなぜ奢らされているのかもわからず、その場にいた全員分の甘味を奢る羽目になったのだ。

 

 しかも北上さんは、堂々とその店で一番高いのを選んでいた。

 

 とはいえ、青葉が欲しがっているという大井の情報を手に入れることができた。というより北上が甘味を食べながら大井についていろいろ教えてくれたのだ。

 

 大井はああ見えて器用で家事や裁縫に至るまでの事を粗方やれるということ、ここに来る前に自分の周りに自分と同じような悩みを抱えた子がいた時は放っておけないということ、そして……司令官という存在をあまり快くは思っていないということ

 

 大井にも案外良い部分があるということが分かった。大井はただの通り魔ではなかったのだ。

 

 だから少しずつ北上を通して歩み寄っていけばよいのではないのだろうか。うん、それがいい。そうしよう。

 

「────というわけで、今日の夜に集合ですね。遅刻しちゃっダメですよ」

 

「ん? ごめん何の話? 聞いてなかったわ」

 

 俺が色々考えている間に青葉は何か言っていたようだ。

 

「で・す・か・ら! 青葉が聞き出した情報によりますと最近大井さんは夜中になると艦娘の寮を抜け出して何処かに行ってしまうそうなんですよ。これは確かな筋からいた話なので間違いありませんよ」

 

 それはそうだ、それも聞いた話だし俺も聞いていた。どうやら青葉は情報屋ごっこに夢中になっているらしい。

 

「まあ、そんなことも言ってたなそれでそれがどうしたっていうんだ?」

 

「ふふふ、それがわからないとはまだまだですね」

 

 青葉はチッチッチッと指を振ると自慢気な顔をする。

 

「いいですか? 大井さんが寮を抜け出してどこかへ行くようになったのは司令官が北上さんと出会ってから間もなくということが分かりました。つまり、大井さんのこの奇妙な行動は間違いなく司令官が関係しています」

 

 正直なところその部分はあまり聞いていなかった、俺もたまに抜け出しているため艦娘の中にもそういうやつがいるのかと勝手に納得してしてしまっていたが青葉は聞き逃さなかったようだ。

 

「ですのでそこを狙って取材に行こうかとおもいまして」

 

 俺はそこまで暇ではないのだから、そんなことには付き合えない。

 

 それを青葉が慌てて引き留める。

 

「ちょっと待ってくださいよ! これはスクープかもしれないんです!」

 

 さぁ~て、今日も疲れたし帰って寝ようかな。いろんな奴らに振り回されたし、今日の夕食は何だろうか? 

 

「司令官は部下が危険な場所に赴こうとしているのに帰るっていうんですか! 鬼ですか貴方は!」

 

 上司を危険な場所に連れて行こうとしてる時点で鬼はお前の方だよ。

 

 だが、その大井の行動が気にならないわけでもない、あの北上がわざわざ教えてくれたのだからきっと何か意味があるのだろう。

 

「分かりましたよ! 私一人で行きます! あとで泣きついても知りませんからね!」

 

 そういうと一人で行ってしまった。

 

 そんな青葉を追うようなことはせず俺は、寮への帰りを急いでいた。

 

 とはいえ、この時間に帰ってもすることがない俺はどのように時間をつぶそうかと思い悩んでいた。

 

 青葉には付き合ってられないし、うーん。ああ、そういえばいたではないか俺にかまってほしそうにしてたやつが

 

 

 

 

 

 

「若葉だ、初春型3番艦若葉……特技は、24時間の強制労働だ」

 

「お前それブラック企業での過酷な労働を逆に楽しみだした一歩手前の社畜みたいになってるぞ」

 

「む、提督か。どうしたんだ? 散歩の時間か? わかった、今から首輪を準備しよう。今日首輪を新調しておいたんだ」

 

 なぜこいつは俺がこいつの趣味に付き合うために電話を掛けたと思っているのだろうか

 

「あ、ちょっと待ってくれ今裸になるから」

 

 は? やめろバカ! お前電話越しとはいえ俺が若葉にそうさせているみたいじゃないか

 

「何を言っているんだ? 電話でとはいえ提督と言葉を交わすのだぞ裸になるのが道理というものだ」

 

 俺の方が然るべき常識をわきまえていないみたいな言い方するな。というかまず服を脱ぐのをやめろ

 

「フッどうやら司令官は駆逐艦のスピードを甘く見ているようだな。若葉はもう全裸だぞ、首輪も新調してばっちりだ」

 

 駆逐艦のスピードをそんなことに使うな! ていうかお前確かルームシェアしてるやつがいなかったか? 

 

「ところで一緒にこのワンコなりきりセットというものも買ったのだが犬耳はわかるがこのしっぽのようなものはどこに……あっ此処か?」

 

 もう後からかけ直そうかと思ったその時、ドアが開く音と同時にしばらくの沈黙の末ドアを開いたであろう人物が若葉に近づいてくる音が聞こえる。

 

「のう、若葉よ。今誰と電話しておるのじゃ?」

 

 聞いたことのない声というか独特なしゃべり方だった。声色からして駆逐艦にしては少し年上な気がする。

 

 というか、どういう状況なんだこれ。まず、若葉は全裸で首輪をつけてて犬耳までつけてる。そして目の前にはルームメイト、電話でしゃべってるのは俺。

 

 うん、犯罪だな

 

「提督だ。この間話しただろう?」

 

 おい、そこで俺の名前を出すな、勘違いされるだろうが

 

 そして、そのルームメイトは若葉から電話を貸してもらうように言ってきた。俺と話がしたいらしい。

 

「のう、貴様が提督か。わらわは初春、若葉の……まあ姉みたいなもんじゃ」

 

 すごくドスの利いた声で話しかけてくる。これは怒ってるね

 

「あ、はいそうです」

 

 俺もあまりの怖さに敬語で答えてしまった。

 

 やべぇよ、ほとんど俺のせいじゃないのに何か艦娘から説教される流れだぞこれ

 

「若葉は……その……分かっておるとは思うが癖のあるやつなのじゃが……まじめでいい子なのじゃ。わしも一緒に行けたらよいのじゃが、あいにくわしはもう他の提督の所に行くことが決まっているのでな……」

 

 その声は、先ほどのドスの利いた声とは違いまるで何か諦めたような遠い空でも見ているときのような声だった。

 

 どうやら説教ではなく、若葉に気に入られてしまった俺へのある意味激励のようなものだった。

 

 なるほど、つまりもうすぐ離れてしまう若葉が心配なのだろう

 

「だからその……若葉をよろしく頼むのじゃ」

 

 そこまで言うと時間を取って済まなかったと謝ると若葉に電話を返した。

 

「いい姉だろう? 私達の事をいつも心配してくれるんだ」

 

 だったら、心配かけないようにその悪い癖直せよ。

 

 しょっぱなからの若葉の発言に困惑しながらも用件を述べる。

 

 初春の心労は俺では到底想像できないものだろうな、少しでも緩和剤になってやらねば。

 

「あのさ、今暇か? ああ、無理しなくていいんだぞ。今日はその……疲れただろ?」

 

「フフフ、愚問だな。提督が私に用があるんだ。暇になったに決まっているだろう?」

 

 若葉は、いそいそと何かを準備し始めているようだ。

 

「それに私の疲労を気にすることはないんだぞ? 私はお前の盾であり剣なんだ、私はいつかは壊れる運命、その時はまた新しく改良されたものを使うといい。それであなたが守れるのであれば私は満足だ」

 

 俺は驚いてしまった。何故年端も行かないこの少女からそんな言葉が、さも当然のように出てくるのだろうと思ったからだ。

 

 そもそも、ここに来てから違和感があったのだ。何故艦娘は出会って間もない俺たちのために命を懸けられるのだろうか? 鹿島教官が言っていた艦娘は生まれながらにして艦娘なのだと、だとするならば艦娘達は俺たちを

 守って果てるために産まれてきたというのだろうか? そんな考えは悲しすぎる。

 

 ここで若葉に対して何といえばいいのだろうか? ここで俺の考えを押し付けても若葉は従順にそれを守ろうとするだろう。そういうことではないということはわかっているんだけどな……

 

「……なぁ若葉、もしお前が死ぬなら俺も死ぬとか言ったらどうするんだ?」

 

 なぜこんなことを聞いたのかわからない。なぜか口から出ていた。

 

「心中かそれも悪く……いや、悪いな。少し……いやだ」

 

「そっか、でもな俺はお前らに守られるんじゃないんだ。一緒に守るんだ。それを忘れるなよ」

 

「……ああ、わかった」

 

 若葉は少し黙り込んだが、返事をくれた。今はまあこれで良しとするか。

 

「ところで司令官、散歩の準備が出来たそちらに向かいたいのだがどうすればいい?」

 

「ああ、その前にもう一ついいか?」

 

「なんだ?」

 

「服を着てから来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ……よね?」

 

 司令官から呼び出しを受けた叢雲は驚きを隠せなかった。

 

「ああ、叢雲殿。まさか本当に来ていただけるなんて恐縮であります」

 

「あら? あきつ丸じゃない。いいのよ、久しぶりね」

 

 取調室から出てきたのはあきつ丸、陸軍の揚陸艦だった。

 

「ええ、随分と大きくなられて……」

 

「その話はいいじゃない。それより……司令官は?」

 

 叢雲は心配そうにあきつ丸に尋ねる。

 

「ああ、ではこちらに……」

 

 あきつ丸に連れられて、取調室を進んでゆく叢雲。

 

「おい! 犯罪者! 叢雲殿が来てくださったぞ」

 

「おい叢雲! 俺の誤解を解いてくれ! 変態はこの若葉だけなんだ!」

 

 司令官は若葉と一緒に取調室にいたのだ。若葉にリードをつけた状態で……

 

「全く……何がおかしいんだ? 司令官と夜の散歩をしていただけじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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