「しかし、叢雲殿は本当にこんな奴を司令官に選んだのでありますか?」
「おい、こんなやつとは何だ?言っておくが俺は提督になりたいと思ってここに来たんじゃないからな」
そもそも叢雲が俺がここに来るきっかけを作ったのは確かであった。叢雲が俺をあの町で見つけるようなことがなければ今も俺は一般人として暮らしていただろう。
今となってはもうどうでもよい話ではあるが・・・いやどうでもよくないないつか仕返ししてやる。
まあ、とにかく今はとにかく静かに暮らせればそれでよい。こぢんまりとした鎮守府で後方で活躍するくらいの奴になれればもうそれでよいというスタンスに変わりつつあった。
まあ、給料もいいみたいだしな。
話を聞いていると二人はまるで昔からの知り合いのような口ぶりだった。
どういった仲なのか気になるところだがそれよりも俺の冤罪についての弁明に期待が持てるのか気になるところだった
「いいかしらあきつ丸? 何度も言うようだけどこの子はそういう子だから」
「そうは言いますがな叢雲殿、この者はこの駆逐艦娘に首輪をつけて散歩と称していたのですぞ」
どうしてもこの若葉の特殊なプレイに知識のないあきつ丸からすればどう考えてもやばい奴なのは俺なのである。そのためどうしても俺は疑いの目を向けられている。
とはいえ、なぜ叢雲にその知識があるのかは、はなはだ疑問ではあるがこれ以上詮索しないことにしようと思う。何されるかわかったものではないからな。
「おい若葉! お前もなんか言えよ。もとはといえばお前がまともな恰好でくれば何も言われなかったんだからな」
「何を言っているんだ? 言われた通りに服は着てきたぞ?」
首輪とリードが余計なんだよ。
「しかし、私も自分の無知を詫びよう。まさか、この士官学校がペット禁止だったとは思いもしなくてな」
そうじゃないんだよなぁ。ほら見ろあきつ丸も何言ってんだこいつみたいな目で見てるぞ。お前みたいな特殊な奴を見たことのない奴はこういう時どう反応していいか困るんだからな。
「……つまり貴方は司令官としてこの駆逐艦娘の「遊び」に付き合っていただけということでありますか?」
「まあ、そういうことになるのかな?」
実際の所は俺が待ち合わせに若葉が現われたところでしばらくいつもの下りをしているところをあきつ丸に見つかったのである。
・・・あれ?もしかして俺若葉に侵食されている?いやそんなはずはない。
「はぁ、わかりました。信じることにするであります。しかし、そういうことは人目のない所でやっていただきたい」
「む、そうか……済まなかったな」
お、若葉が素直に反省したぞ?
「これからは司令官の椅子になることにする」
全然反省してなかったぞこいつ。
俺と若葉と叢雲は帰路についていた。
「全く! 突然来いとかいうものだから何事かと思ったら────」
叢雲は相当ご立腹のようだ。それはそうだろう突然呼び出されたかと思ったら憲兵にお世話になっていたのだから
「でも、まさかホントに来てくれるとは思ってなかったぞ」
そういえばあの憲兵の……あきつ丸だったか? あいつも艦娘のようだったがまるで叢雲と昔からの知り合いのようだった。
「なぁ叢雲、さっきの憲兵と知り合いなのか?」
「ああ、聞いてたのね。まぁ……そうね、私が小さいころ色々世話を焼いてくれたのよ」
叢雲は少し特殊な家系に生まれたようだった、小さいころに母親を亡くしたそうなのだが父親があまり家にいられなかったためその代わりに世話を焼いていたのがあきつ丸だったそうなのだ。
「ふーん、じゃあお前のそのお堅い性格はあいつの影響か?」
「違うわよ! そういえば、あんた今日の訓練見に来てたわよね? いつからそんなに勉強熱心な奴になったの?」
「ああ、それなら途中で青葉ってやつに絡まれてだな」
ああそうだ、なんか大井に興味があるからって言ってたな。まあ、置いて来たわけだが
「ああ、青葉ね。それなら納得したわ、どうせあんたの事、取材したいとか言ってきたんでしょ?」
まあ、大体そんな感じであってる。そういえば若葉もあの時あったのだったか、まあその時は痴態を見せつけてしまったのだがまあ、うちの鎮守府に来れば毎日のように見るわけだからそこまで問題視することではないだろう。
「なぁ、その青葉なのだがあそこにいるぞ」
若葉の言う方向を見ると、青葉がいた。いや、確かにいたのだが……青葉は木に吊るされていた。
「何やってんだ?」
青葉は一瞬ビクッっとなって体が振るわせたが、俺の顔を確認すると安心したようだった。
「ああ、司令官。やっぱり助けに来てくれたんですね?」
別にお前に会いに来たわけではない、ただの帰り道だ。だが何の帰り道かは言わないでおこう。ネタにされると困るでな。
「あら? 艦娘がこの時間に外にいるなんてどういうことなの?」
「げ、叢雲さん……」
何故か青葉は叢雲を見ていやな顔をしていた。
「消灯時間になって抜け出してるなんてかなりいい度胸ね」
「勘弁してくださいよ、叢雲さん。貴方の司令官のために私も働いてるんですよ?」
何を言うかこいつは……いつだってお前を動かしているものはお前の好奇心だろうが。
「でも無断で抜け出したのは本当よね?」
「はい」
青葉は叢雲になぜか頭が上がらないようだ。
「ところでお前面白い格好してるな」
「そんなこと言ってないで助けてくださいよ!」
青葉はじたばたしながら救助を要求する。
「司令官、帰るわよ。そいつは一晩ここに置いていきましょう」
なるほどこれが普段の行いの差というやつか。叢雲は青葉の事に一切構うことなく帰ろうとする。
「ちょっと! お願いします置いてかないでください! 青葉殺されちゃいます!」
「誰にだ?」
「大井さんです!」
「憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! ニ喰い! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! 肉イ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ! ニクイ!」
大井は藁人形と金槌をもってさまよっていた。とても理性があるようには思えないが……
「私もちゃんと取材するつもりだったんですがね。流石に死にたくはないわけですよ」
青葉は、逆さにつられたまま冷静に事の顛末を話し始める。
「ねぇ、大井は何をやってるんだ?」
「知りませんか? 俗にいう丑の刻参りってやつですよ」
頭にろうそくを付けながら特定の時間に藁人形を木に打ち付けることで相手を呪い殺すやつである。
そういえば人形の専門家が実験でやっていたな、呪う相手もいないのに……
「それでお取込みの最中でしたので、突撃取材をしましたがまともに答えてもらえずこのざまでして……」
青葉よ、勇気と無謀は違うのだぞ。というかなぜあんな状態の大井に取材ができると思ったのだろうか?
「それで? 相手は誰よ? 想像はつくけども」
「相手?」
「決まってるじゃない。呪い殺す相手よ」
そうだった、あんなことをやってるってことは殺したくてたまらない憎たらしい相手がいるってことだよな? そんな奴身に覚えが……
「俺か……」
「それはそうでしょうね。自分の大事な北上さんの心を奪ったわけですから」
いや、お前そんな冷静に言うなよ。当事者俺だぞ?
しかし、丑の刻参りは誰かに見られては効力がなくなるというからこれで安心……ではないなこれ。
毎日こんなことされてるんだと思うと俺も安心することができない。何とか解決できないものだろうか?
「ところで大井はなぜさまよっているのだ?」
若葉が当然の質問をする。大井の行動はまるで誰かを探しているようだった。
「ああ、それなんですが私大井さんに取材をする際に大井さんが私の声に無反応だったので、その……司令官が近くに来ているといってしまいまして……」
なぜこいつは余計なことしかしないのか?