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俺と青葉、そして叢雲とあきつ丸は旧鎮守府に来ていた。
解体され放置されてから、三年ほどたっているため目立った外傷は見られないものの、やはり人の手が入らなくなって老朽化しているというのは目に見えてわかる。
俺がここに来た目的は、写真に写っている時雨の艤装を探し出すこと。もう残っているのかすらわからないが、艤装の移送履歴に記入がなかったため、この資料を信じるのであれば時雨の艤装はまだここにあることになる。
「とりあえず目的を確認するぞ、まずはこの時雨の艤装を探すこと。もしなかったとしても、多分手掛かり位はあるだろ」
というわけで捜索は開始された。が、ここに来て問題が発生した。
「ここの鍵って誰が持ってるんだ?」
「「「・・・・・・・」」」
皆黙ってしまった。俺もうっかりしていたがなぜ戸締りがされていることに気付かなかったんだろうか?
とりあえず入り口のドアを調べてみる。
錆びついていて、もしかしたら鍵があっても開かなかったかもしれない。
施設は、外観だけ見れば煉瓦で出来ているようだが、中身は恐らく鉄筋コンクリート。
木造ならどこかに穴でもありそうだが・・・。
すると、青葉が屋根の上に登り始める。
「いや、足音消したり中に誰もいないかとか確認する必要ってあるの?」
「もう癖になってるんでしょうね。普段からああいうことしてるから」
きっと高い所に登り慣れているのであろうその動きはさながら・・・泥棒を思わせるようだった。
「司令官、ここ窓割れてますよ!ここから入れます!」
そういって青葉は中に入り一階のドアを開けた。
というわけで手分けして捜索開始。俺たちは二手に分かれて探すことにした。
青葉とあきつ丸は工廠を探し回っていた。
「そうはいっても、もう探す場所ないですね」
工廠の機械や器具はほとんど撤去されており、工廠とは思えないほど広々としていた。
青葉が捜索をしていると各艦娘の名前の書かれた棚を発見する。
恐らくそこに帰還した艦娘達が自らの艤装を置いていたのだろう。
「ええっと、し、し・・・あった。」
時雨の棚もそこにはあった。しかし艤装はそこにはなかった。
「まあ、そう簡単にはいきませんよね。あきつ丸さん!何かありました?」
しかし、返事はない。青葉は恐る恐るあきつ丸を探す。
すると、あきつ丸は何やらノートのようなものを見るのに真剣になっていた。
青葉は声をかけたがその真剣さの余りあきつ丸の耳に届かなかったのだろう。
「あきつ丸さん!」
青葉はあきつ丸の肩をたたくことでやっと気づいてもらえた。
「いやー、申し訳ないであります。実はこのようなものを見つけて・・・」
青葉はあきつ丸が見ていたものを見る。
「あれ?これって・・・」
一方、俺と叢雲はというと艦娘の宿舎に来ていた。というのも時雨の部屋を探せば何かわかるかもしれないと思ったからだ。
「とはいえ、これは・・・虱潰しに探すにしても多すぎないか?」
部屋が多いだけならまだしも、もう名前札も無いので時雨の部屋を探すのが難しくなっていた。
しかもほとんど、何も残っていないためどう頑張ってもそこが誰の部屋だったのかすら分からない。
「大丈夫よ、もしそこが時雨の部屋でそこに時雨の何かがあるのならきっとわかるわ」
もっと希望になるようなことを言ってくれ。全然励ましになってないぞ。
しかし、建付けが悪くなって開きにくくなっている上にいざ開いたと思ったらベッドすら撤去されてる始末。
俺は一体どうしたらよいのだろうか?ここから時雨の部屋を見つけ出せ?無理に決まってんだろ!
とりあえずすべての部屋を調べたがどこにも時雨の部屋と思われる部屋はなかった。
「今までの部屋の中で時雨っぽい部屋はあったか?」
「おかしいわね」
叢雲は青葉からもらった資料を真剣に眺める。
「そういえば、時雨は前線で戦うレベルの高練度艦だったのよね」
すると叢雲は何も言わず、艦娘の宿舎から離れて本館に向かう。
本館の奥に進むと客間の後に提督室があり、叢雲はどんどん進んでいきある場所で止まった。
その扉には、「秘書艦室」と書かれてあった。
「あのね、あんたがもし提督として着任した時は自分の執務をサポートする所謂秘書艦というものが必要になるの」
そしてその扉を開くと、その部屋にだけはなぜか机が残されておりその上に写真の通り燃料タンクの吹き飛んだ艤装が置いてあった。
これ以上上がらないほどに練度のあった時雨は、普段ここにいた司令官の秘書艦だったのだろう。
叢雲は艤装を調べる。今ではかすれてしまっているがそこには確かに「レグシ」と書かれていた。
「はぁ、これで決まりね」
叢雲はため息をつきながら艤装をもとの位置に戻す。
確かに、時雨の艤装がここにあるならば時雨はもう本当にこの世にいないのだろう。
じゃあ、あの時雨は何だったのか・・・
「時雨は戻ってきているわ」
「は?」
俺は耳を疑った。
「だって艤装がここにあるんだし、青葉の言う通りこの状態じゃもう・・・」
「じゃあ聞くけど、この艤装は誰が持ってきたのよ?」
誰がって、艦隊は全滅して・・・あれ?
「ここに書いてある通りなら時雨率いる艦隊は全滅してるのよ。それとも何?幸運にもこの穴だらけの艤装だけがここから遠く離れた海域からここに流れ着いたっていうの?」
幸運・・・、そういえばあいつは自分の事を幸運艦といっていた。そういうことも・・・あり得るのか?
「お二人とも、面白そうな話をしていますね」
ドアから現れたのは青葉とあきつ丸。その青葉は何やらノートのようなものを持っていた。
「実は工廠の方を漁っていたら面白そうなものがありましてね」
青葉が持っていたのは、艦娘の艤装の修復履歴だった。
「まあ、こんなものが残っているとは思わなかったでありますが・・・」
青葉はその修復履歴がまとめられたノートの最後のページをめくる。
最後のページに書かれていたのは、時雨の修復履歴だった。
日付を見ると、時雨が連合艦隊を率いて出発したおよそ三日後となっていた。
そして、その修復期間は三日にもおよびそして修復完了の印は押されていなかった。
「なぜ沈んだはずの艦娘の艤装を修理しているのでしょうか?もしかして、ブラックジャックが死体の手術をしたように、弔いのつもりだったのでしょうか?ですがもし、幸運にもこの艤装だけが流れ着いたとしてもこの鎮守府の提督の辞職と解体が言い渡されるギリギリまでやらせるでしょうか?」
青葉はペンを口元に当てて歩き回りながらまるで探偵のように自らの考えを述べていく。
「そういえば、もし時雨さんだけでも生きていれば提督の辞職だけは免れたかもしれないと聞きました。」
つまり、もし時雨がこんな状態になりながらも生きて帰って来たんだとしたら・・・。時雨がどうにか復帰できるようにギリギリまで修理を粘った?
「じゃあ、時雨は生きてる?お化けじゃない?」
「まあ、まだお化けの方が確率としては高いわね」
おいおい、俺がお化けに呪われていない可能性を否定しないでくれよ。
「もしそうだとしたらなぜ生きているのに轟沈判定を提出したのかわからないじゃない。自分から全滅したといって自分の立場を不利にしているのよ」
ふむ、確かに時雨が生きているのなら生きていると報告すればまだどうにかなったかもしれない。
「そしてもう一つ、この鎮守府は解体されてから3年たってるわ。つまり時雨は3年間行方不明になってたってわけ。それなのになんでいまさらになって現れたのかよね」
叢雲は考え込む。
「時雨はこの3年間どこで何をしていたのかしら?」