俺はその航空巡洋艦に会いに行くということだが、やはり青葉がついてくる必要があったようで俺の後ろに隠れるように付いて来ていた。
しかし、そのままその青葉は御用となり今現在青葉は粛清を受けていた。
「カントリーロード~♪ このみ~ち~ずっと~行けば~♪」
「え? ちょっと持って!! そんなの押し付けられたら青葉ただじゃ済まないので助け、嗚゛呼゛嗚゛呼゛嗚゛呼゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ごめんなさい、熊野さん! 鈴谷さん、助けてください~!」
「あの町~へ~♪ 続い~て~る~気がす~る~カントリーロード~♪」
その熊野と呼ばれる航空巡洋艦は青葉の言葉に全く反応することなく無表情で海老吊りになっている青葉に鉄板で焼かれたばかりのアツアツの神戸牛をフォークで突き刺し青葉の頬に押し付けていた。
何故かカントリー・ロードを歌いながら。
「何でカントリー・ロードなんだ?」
「熊野めちゃくちゃ道に迷うんだよね~。それであの歌にシンパシー感じちゃったんじゃないかな~」
俺の隣で青葉の叫びを眺めている鈴谷は青葉を全く助けるつもりはないようだった。
この二人は最上型重巡洋艦4姉妹の3番艦鈴谷と4番艦熊野だった。青葉はこの二人に会わせるつもりだったのだろうがどうも鈴谷の言うところによると熊野と青葉はそりが合わないらしい。
同じ重巡洋艦同士仲良くできないものかと思うのだが、それでも何というかまるで前世で何かしたんじゃないかってぐらいに熊野は青葉の事をこうして嫌っているのだ。でなければ初対面で顔面を殴ったりしないんじゃないかな?
しかし、今回こうして青葉が何とも言えない状態にあるのは決してそういった因縁とかではない。
そもそも鈴谷としては青葉とは仲良くしてほしいらしく。普段ならもうその辺にしときなよと青葉を助ける側に回る役をしていたらしい。
しかし、今回その鈴谷ですらそれを止めないのはあの時雨の資料が原因のようだった。
「私はあの資料を軍人時代のコネで手に入れましたの。それは知っておりますわよね? 私その時言いましたでしょう? これをいたずらに流したり人に見せたりするなといいましたし、その意味も説明しましたわよね?」
どうやら、あの時雨の資料を俺たちに見せたことが原因だった。あの資料は極秘で、もし知られれば鈴谷や熊野たちもただでは済まないのだろう。
しかし、青葉としても時雨はもともとこの世にいないものとして資料に書いてあったため青葉も安心していたのだろう。
「今、軍の上層部がその時雨の噂でいっぱいになっていますわ。危うく私達が疑われかけたのですけれど?」
そう言いながら、アツアツの神戸牛ステーキを青葉のほっぺたに押し付ける。
「熱い! それはもう本当に申し訳ないと思っておりま、アッッツイ!!」
俺も本当は青葉を助けるつもりだったのだ。しかし、それを聞いてしまうと何というか……何も言えなくなってしまった。
というか、俺たちはこの二人を勧誘しに来たのに何をしているのだろう?
「私は貴方と初めて出会った時は無意識にあなたの事を叩いてしまったことを申し訳ないと思っていました。そのお詫びもかねてあなたの依頼を受けましたのに……かと思えば自分のした事を棚に上げて私達に艦としてあなた方の艦隊に合流しろですって? 冗談じゃありませんわ!!」
熊野たちは自分がこの件に関わっていることを完全に抹消するハメになったらしい。監視カメラの証拠を差し替え、青葉の資料を完全に回収しすべて燃やした。
あきつ丸が収賄の証拠としてその資料を突き付けたため回収するのにかなり苦労したらしい。彼女たちは本当に肝を冷やしたらしく。まあ、こうして青葉にケジメを付けさせているわけだ。
しかし、そもそも青葉に時雨の情報を依頼したのは俺であり、俺にも非があるため青葉をどうにか助けてやりたいのだが……
「なぁ、もう許してやってくれないか? あいつも別に悪気があってやったわけではないんだからさ」
「ダメですわ、こういう時はきちんとやっておかないといけませんわ」
そういいながら、ステーキを食べさせる。しかし、だんだんステーキが適温になってきたせいか普通に食べだす青葉。
「あー、ステーキ怖いわー。ものすごく怖いわー」
そして調子に乗り出す青葉。
「そうですか、あちらにできたてのを用意しておりますのでいくらでも食べさせてあげますわ」
「え?」
まあ、そのうち飽きるだろ。
「も、もう無理です……勘弁してください……。もう入らない……」
青葉ももう限界のようだ。流石に海老吊りの状態でステーキを10枚食べさせられればそりゃあ限界だろう。
因みに俺も一枚ごちそうになった。やはり適正な姿勢で適量食べるのが一番だな。
「でしたら、私の質問に答えていただけますか? そうすれば解放して差し上げましょう」
「わかりました! 何でも答えます!」
その時の青葉は序盤で仲間を裏切り相手方に付こうとしたら即相手方に殺されるモブのような雰囲気を感じざるを得なかった。
そんな青葉を軽蔑の目で蔑む熊野は大きなため息をつきながら答える。
「時雨は本当にいたのですか?」
「……」
青葉は俺の方に視線を向けてくる。
「……」
俺は小刻みに横に振りバラさない様に伝える。
「いえ、残念ながらいませんでした。あきつ丸さんと調査しましたがその資料の不備から収賄を見抜いたわけですし……。確かにあの壊れた艤装は存在したわけですから」
「ですが、それでは収賄の理由がわかりませんわ。それに時雨さんが関わっているのだとしたら……」
「まあ、私は一般通過艦娘ですのでそこまでの事は伝えられていません。もしかしたら調査を続ければ何か見えてくるのかもしれませんが……」
「そうですか……」
青葉は、普通にうそをついた。あくまで真剣に紳士的に誠心誠意を持っているかのように見せながら答えて見せた。
今までの醜態を挽回するかのような立ち振る舞いだが、何分吊られているので格好がつかないのだが……
「どうしてそんなことを?」
青葉は時雨の事ついて興味を示した理由について聞き出そうとする。
熊野は鈴谷と目配せする。すると鈴谷が話し始めた。
「実はね、青葉が時雨の事についての情報を何の気なしに求めてきた時、私達の姉の最上が真っ先に反応したんだ。でも、どうしてそこまで興味を持ったのかわからなかったんだ。時雨がかつての前線を支えた伝説のような存在だっていうのは知っていたんだけど……」
彼女たちの姉が時雨に興味を? どうして? 疑問だけが頭をぐるぐる回っていく。
情報が足りないからどうしようもない。もしかしたらまた問題になるかもしれない。
彼女たちは元々軍人であり、何処とつながっているのかわからないから時雨を守るためにもあまり情報は渡さないほうがいい。
まあ、これが今の俺に出来る事だろう。勧誘どころではなくなってしまったため、俺は青葉を連れていったんここから離れる算段を考える。
すると、熊野が突然こんなことを言い始めた。
「そういえば貴方がたは卒業試験のために私達の力が必要なのですわよね?」
「ああ、そうだな。お前たちがいればすごく助かるぞ」
熊野は「そうですか」というと、しばらく考え事をしたのち俺の方に近づいてきた。
「でしたら考えて差し上げなくもないですわよ? 条件を呑んでいただけるのでしたらですが」
まさかの熊野自ら俺の部隊に来ることを考えてくれているらしい。まあ、願ったりかなったりだが・・・
「一緒に時雨さんの捜索を手伝っていただけたらですが・・・」
そういうと、熊野はにこりと笑った。どうしてこうなったんだ?