副業持ちの艦娘達   作:maple sugar

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くまののこのこげんきなこ

 解放された青葉と俺はこれからの事を話し合う。

 

 熊野の言うところによると。

 

「だって、あなた方としては私達の力が必要なんですわよね? 私としても最上の目的が知りたいですし最上が時雨に固執する理由も知りたいです」

 

 ということらしい。

 

「鈴谷はどう思います?」

 

 鈴谷は少し考えると笑顔でOKを出した。

 

「そうだね、妹達に秘密で何かしてるなんてだめだよね」

 

「そういうわけですので明日から時間厳守でお願いいたしますね」

 

 何故だか俺たちの承諾を聞かずに話が進んでいる。困ったことになった。

 

 まさか、時雨の事を探してるやつがいるなんてな。しかも、彼女たちは軍に属していたため時雨の事を軽率に漏らすわけにはいかない。

 

 今回は彼女たちの事は諦めて、時雨の事を諦めてもらうしかない。

 

「まさか、熊野さんが時雨さんに興味を抱くとは……。何か裏がある気がしますね」

 

 真剣に言っているが、目はキラキラしている。まあ、こいつはひどい目にあっているのにこれだから質が悪いんだよなぁ。

 

「はぁ、出来るだけ問題は起きないでほしいんだけどなぁ」

 

 俺はこの卒業するかもしれないというときにまた何かに巻き込まれたらと思うと厄介だなと思うのであった。

 

 そういうわけで俺は彼女達が諦めるまで彼女たちに付き合わなければならない。

 

 時雨がほとぼりが冷めるまでこの寮で身を隠していてくれればいいが……。何なら誰かに頼んで匿ってもらうか……

 

 そんなことを考えていた俺だったがさらに面倒なことになった。熊野が行方不明になったらしい。

 

 俺達は甘味処を待ち合わせ場所にしていた。と言うかさせられたのだが、次の日時間通りに来た鈴谷が顔面蒼白でそう言ったのだ。

 

「行方不明ってなんだよ。ただの遅刻じゃないのか?」

 

「じゃあ、もし私よりも3時間も前に出たって言ったら?」

 

 ちょっと何言っているのかわからない。3時間前ってお前らの寮からここまで20分もかからないだろう? 

 

「熊野は目的地にたどり着けない謎の呪いにかかってるんだよ。いつもは私と一緒に行くんだけど……」

 

 じゃあ、ここから寮までを探してみるか……

 

「そんなんじゃ見つからないよ。この一帯に捜査網を敷かないと最悪一生見つからないかも……」

 

 なんだそれは……迷い牛にでも憑かれてるのか? しかし、そこまで言うのなら探さないわけにはいかない。

 

 俺は知り合いの暇な艦娘達に電話をすると何人かは手伝ってくれるといってくれた。

 

「じゃあ、俺達も……鈴谷?」

 

 鈴谷は迷うことなく歩き始める。もしかしてもう目星がついているのか? 

 

 鈴谷についていくと着いたのは艦娘寮だった。すると鈴谷は玄関前にしゃがみ込み何かを探し始めた。

 

「トラッキングって知ってる? 足跡とかから特定の人や動物を追跡するんだけど……熊野は朝早く出て行ってるから朝霜で足跡がわかりやすくなってるね。熊野の靴は鈴谷のと一緒で……あった」

 

 そういうと袖の内側からナイフが出てくる。彼女たちは全身にそういったものを隠し持っているらしい。

 

 それで地面に目印を付けた。

 

「熊野の歩幅に目印を付けたからこれをたどっていけば熊野にたどり着けるよ」

 

 そういうと鈴谷は俺にドヤ顔をする。可愛い顔していながらやはりこういった技術は彼女が軍のエージェントだったことがわかる。

 

「いや、毎回迷子になる熊野を追ってたら自然と身に付いたんだよ」

 

 結構悲しい理由だった。もしかして毎回こんなことやってるのか? 

 

「正直怖いんだよね、海で迷子になったらこれ出来ないからさ……」

 

 そんなこんなで俺たちは熊野の足跡を追う。

 

 そして、いつの間にかこの艦娘寮の入り口まで戻ってきてしまっていた。熊野は艦娘寮を一周していたようだ。

 

「何で一周して戻ってきてるんだ?」

 

「提督これ見て、この辺りを何度も踏みつけてる。この辺りでしばらく停滞してたんだろうね」

 

 もしかして、何か探していたのだろうか? 

 

「これは多分結構歩いたのにいつの間にか元のところに戻ってきて困惑してるね。本人は目的地に向かってると思ってるみたいだから……」

 

 鈴谷は一切驚くことなくそんな考察をし始めた。もう慣れたものなのだろう。

 

 そしてようやく進んだ先もやはり目的地に向かっていなかった。

 

 足跡をたどりながら鈴谷から時雨や最上の事について聞いてみる事にする。

 

「それで、お前らの姉の……最上だっけ? なんで時雨の事を追ってるんだ?」

 

「それがわかんないんだよね。今までその名前を聞いたこともなかったのに……」

 

 それは、つい最近の事何故か時雨の噂が上層部の間でささやかれ始めたころらしい。

 

 完全に俺たちが時雨と関わったからだ。どうしよう俺達思いっきり関係者だ。

 

 問題は最上が時雨をどうするつもりで探しているのかということだ。最上は元々軍の所属だったこともあり軍のそれも上層部とつながっている可能性も高い。しかも、このタイミングということは……もしかするかもしれない。

 

 万が一も考え、出来るだけ早く、そして慎重にこいつらから離れる必要がある。

 

 しかし、彼女たちにそれを教えないのはなぜだろう? 普通大人数で探した方が早いのではないだろうか? 

 

「そうなんだよね、今までこんな事なかったのにいきなりこんな水臭いことされてもね……」

 

 鈴谷はそんな寂しそうな話をケーキを食べながら話す。実はあんまりどうでも良いのでは? 

 

「それじゃあ、お前らは最上に何かあったんじゃないかと思ったってこと?」

 

「うーん、まあ大体そういうことかな?」

 

 ふーん、そうか……恐らくこいつらは時雨の事を本当に知らないのだろう。

 

 しかし、時雨の事を知っている以上油断はできないが……

 

「それなら、普通に最上を探せばいいんじゃないか?」

 

「あー確かにそうかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちが熊野の足跡をたどってたどり着いたのはなぜか演習場だった。それは、俺たちの集合場所とは全然違う方向だった。

 

「さて、聞き込みしますか」

 

 鈴谷は熊野がここに来たかもしれないということに一切疑問を持つことなく中に入っていく。

 

「なぁ、本当にこんなところに来るか? いくら何でも……」

 

「熊野ならあり得るんだよ。最近やっと車を目印に道を歩くのをやめてくれるようになったんだけど……」

 

 何言ってんだ? 車を目印にしたところで車は移動するから……

 

 鈴谷は死んだ目で演習場に入っていった。その目にはどれだけ熊野にそれを教え込むのが大変だったかを物語っていた。

 

 それでも迷子になっているのだが……

 

 

 

 

 演習場に入ると鈴谷は持ち前のフレンドリーさで皆に聞き込みを始める。

 

「お疲れ~、演習終わり? ちょっと聞きたいんだけどさ、熊野見なかった? ……そうそう茶髪の女の子ね」

 

「やあやあ、ちびっ子達よ。熊野を見なかったかね? ……うん、また迷子なんだ」

 

 恐らく、あの誰とでも気兼ねなく話せるあの性格も鈴谷の持ち味の一つなのだろう。熊野はまだよく知らないが何というか少し小難しい性格に感じたが……

 

 しばらくすると鈴谷が戻ってくる。

 

「どうだった? 熊野はいたか?」

 

「ううん、いなかった。誰も見てないのかなぁ?」

 

 すると、演習場の方からすごい音が聞こえてくる。多分誰かが演習をしているのだろう。

 

「鈴谷も訓練とかしたのか? その……軍でエージェントやってたんだろう?」

 

 すると鈴谷は俺の口を押さえる。そして、口に指をあてて「シィー」といってきた。

 

「ダメだよ提督。私達は一応海軍に知り合いのいる艦娘ってことになってるんだよね。エージェントだったことは秘密なんだ。訓練も一緒にやってるし」

 

 まあ、確かにその方が一般から来たほうが多い艦娘の中には溶け込みやすいのだろう。もしかしてそのキャラも溶け込むために作ってるのか? ……いや、まさかな。

 

「でもお前ら軍人だったんだから。ここの訓練なんて結構余裕だったんじゃないか?」

 

「それ本気で言ってる? いくら訓練受けてたからって海の上に立つのに慣れてるわけないじゃん。しかも、あんなでかい口径の兵器持ってだよ? しかも、私航空巡洋艦じゃん? 他の子達よりもやらないといけないことが多いんだよね。艦載機飛ばしたりとかさ」

 

 確かにその通りだ、みんなあまりにも普通に海の上に立つものだから割と簡単に出来るものだと思っていた。

 

 そうだ、たしか航空巡洋艦は砲撃や雷撃のほかに偵察したり潜水艦も攻撃したり制空権取ったりと大変らしい、便利ではあるのだが……

 

「まあでも、艦載機飛ばすのは結構すぐにできたけどね、昔、私達敵の偵察に鷹を使ってたりしたんだよ。まあ、かなり古典的な方法だけどこれが結構私達の手になじんだんだよね。それに私達に丁寧に教えてくれた人がいたし」

 

「誰が教えたんだ?」

 

「それは……あっ!扶桑さん! 久しぶりー、何やってんの?」

 

 鈴谷はずっと前からの知り合いのようですぐに駆け寄る。俺はその人物を知っていた。というかあまり思い出したくない人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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