副業持ちの艦娘達   作:maple sugar

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迷子の時は動かない事!!

「扶桑さん! 久しぶりー、何やってんの?」

 

「あら……鈴谷さん。久しぶりね……」

 

 なんとあの扶桑だった。俺は瞬時に周りを確認する。まさかこんなところで出くわすなんて……

 

「どうしたの提督? 挙動不審だよ」

 

「いや、山城が……」

 

「山城なら……あそこですよ」

 

 すると扶桑さんが演習場を指さす。指さした方向を見ると山城が演習を行っていた。

 

 しかし、様子がおかしい、山城は一人で戦っているのだ。相手は複数いるのにもかかわらずだ。

 

「何で一人で戦ってるんだ?」

 

「それが……分からないんです……。いつも一人で……私の事なんか気にしなくていいのに、私に必ず見ているようにって……」

 

 うーん、山城が何をしたいのかわからない。まあ、シスコンには厄介な奴しかいないことは大井の事でもう十分知っている。

 

「昔っからだよね。私達が一緒に組もうって言っても頑なに断るし……。あっそうそう、扶桑さん! ここにいたんなら教えてほしいんだけどさ熊野を見なかった?」

 

「……ゴメンナサイね。見ていないわ……ゴメンナサイ……こんな欠陥品のポンコツはせめて誰かの役に立たないといけないのに……ゴメンナサイ」

 

 扶桑はメソメソと泣き出した。すると、俺の後ろに殺気を感じた。

 

「ネ・エ・サ・マ・ヲ・ナ・カ・シ・タ・ナ?」

 

 次の瞬間、俺の視界が揺れて気を失ってしまった。

 

 

 

「もう、同じ相手に何度もやられてるようじゃだめだよ提督」

 

 

 

 いやいや白露さんや。あれは不可抗力ですってば……ハッ! 

 

 俺が目を覚ますと鈴谷が山城に対して弁明をしていた。

 

「いや、違うんだよ。そういうつもりで言ったんじゃないよ。だから泣かないで!」

 

「ああ、また私のせいで提督にご迷惑を……」

 

「姉さま、ご安心ください。そもそもこの男がお姉さまに近づかなければいいのです。寝ているうちに今ここで始末しましょう」

 

 ああ、これは……起きないとやばいな。

 

「あら、起きたのですか。これから止めを刺そうと思ったのに……」

 

 危なかった。まあ、また白露にお世話になるだけだが……そういえば何か気になること言ってたような……? 

 

「それで? まだ姉さまを諦めていないのですか?」

 

「いやいやいやいや違うっての。俺はただ鈴谷の付き添いで……」

 

 というかなんだこいつは? 俺の後ろにこっそり近づいて首を折るとか訓練されたアサシンだろうか? 

 

「まあ、鈴谷から言わせてもらえば首折られて平気な提督も提督だけどね」

 

 それは白露が……とは言えない。夢にしか現れない艦娘とか頭おかしいとか思われるし何より時雨に足がつく可能性があるかもしれない。

 

「はぁ、いいから姉さまに近づかないで頂戴」

 

 うるせー、近づきたくて近づいたんじゃねーよ。というか、山城はさっき演習場で演習をしていたのではないのだろうか? 

 

 何でここにいるんだ? そこまで考えて気付いた、山城はすでに大破していたのだ。

 

「なあ、お前もしかして……瞬さ……」

 

「股から引き裂くわよ?」

 

 うーん、先ほど大破した奴のセリフじゃないな。

 

「ねぇ、山城。そろそろ卒業しないとやばいんでしょう? 何をこだわってるのかわからないけどそろそろ考えないとやばいんじゃないの?」

 

 鈴谷は冗談交じりに言っているが、実際ヤバいのであった。あの大淀さんが俺にどうにかして引き入れてくれと泣きついてきたほどだからな。

 

 山城と一緒に入った同期はもうすでに卒業し現役でバリバリ戦ってるのだ。

 

「なぁ、山城さんや。お前は何がしたいんだ? とっととこんなとこ出て前線から離れながらやっていけばいいじゃねぇか」

 

「う、うるさいわね。あんたには関係ないでしょう? 姉さまは……私が幸せにするの……」

 

 山城は小さくなりながら答える。山城には山城の何かがあるのだろう。

 

 だがとりあえずは聞いておかないといけない。

 

「なあ、山城? 俺の部下になる気はないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、なかなかいいマッスルスパークだったね」

 

「冗談じゃないよ」

 

 何であいつは口より先に手が出るんだ。普通に断る方法を知らないのか? 全く……

 

「結局、熊野見つからなかったなぁ」

 

 ああ、そういえば熊野を探しているのだった。扶桑姉妹がいたから完全に忘れていた。

 

「もう三隈に頼もうかなぁ。あーやだなぁ、何されるんだろうなぁ。もう「く・ま・り・ん・こ」したくないなぁ」

 

「何だくまりんこって」

 

「……提督のエッチ。責任取って」

 

「え!?」

 

 すると、俺の携帯が鳴る。時雨からだった。おいおい、今はまずいって……

 

 しばらく無視していれば切ってくれるだろうと思ったが、なかなかコールが止まず鈴谷に怪しまれてしまった。

 

「提督、出ないの?」

 

「あーうん。出るよ」

 

 俺は仕方なく応答のボタンを押す。

 

「あー、もしもし?」

 

「もしもし、提督かい? 今、困っているんじゃないかと思ってね」

 

 う~ん、鈴谷と一緒の今、お前と話している現状が困ったことなんだが……

 

「今何やってるんだ?」

 

「運動不足だったからね、ちょっと〇ングフィット〇ドベンチャーをね」

 

 何やってんだお前は。みんながてんやわんやしてる時に一人だけ遊びやがって。

 

 しかし、これが本来の女の子の姿なのではないのだろうか、むしろこうして楽しんでいる状況はかつての時雨を知る俺としては喜ぶべきだろう。

 

 艦娘の束縛から解き放たれた彼女はある意味無敵の存在となったのだ。

 

「僕が狙われていることは知っているよ。そして君が僕のために僕を隠そうとしてくれていることも知ってるよ。だから……うん、僕は大丈夫だよ」

 

 うん、いつもの時雨だから大丈夫なのかな? 

 

「おう、気を付けろよ」

 

「うん、()()()()()()()()()()。ああ、その前に君に伝言があるんだった、忘れる所だったよ」

 

「ん? なんだ?」

 

「熊野は施設の道案内の看板の前にいるらしいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どーして、一人で行っちゃうのさ! 心配したんだよ!」

 

「その……申し訳ありませんわ。今度こそ行けると思ったのです」

 

 鈴谷に結構こっぴどく怒られる熊野。

 

「イヤー助かりましたよ。あのままだと気まずくてやってられないところでしたよ」

 

「何で青葉がいるんだ?」

 

 俺は時雨に教えてもらったため看板の前にいた熊野のもとに行けたのだが、実はその前に熊野の元には青葉がたどり着いていた。

 

 恐らく俺がみんなに熊野の捜索をお願いしたから青葉が動いてくれたのだろう。

 

 しかし、なぜ青葉がたどり着けたのだろう? 

 

「熊野さんはどうやら道に迷った時は道案内の看板を見るようにしているようなのですが結局そこで2時間ほど立ち往生していたみたいですね」

 

 青葉は熊野の迷子になった時の動向は調べ済みだったようだ。

 

「うっ、うっ、青葉に動向がバレるなんてエージェント失格ですわ」

 

「まあまあ、過ぎたことはいいからさ。ケーキでも食べよう? 提督が奢ってくれるってさ」

 

「……ん?」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、それじゃあこれから気を付けるよ。それじゃあね。提督」

 

 時雨は通話を切ると、持っていたスマホを地面に落とした。その手は血で汚れていた。

 

「いいのかい? 君の愛する提督でしょ? 嘘なんてついていいの?」

 

 時雨の体は全身銃創や切創だらけになっており、ナイフや矢が胸や頭に刺さっていた。

 

「艦娘を引退してからしばらく研究所暮らしだったからね。運動不足を解消するという意味ではほとんど嘘はついていないよ? いや、それよりも僕はもう提督の艦娘なんだ。それなのにこんなコーディネートじゃ提督に嫌われちゃうよ。どうしてくれるんだい?」

 

「はぁ、それだけ完全敗北しておいてよくそれだけ飄々としていられるよね。流石というべきかな?」

 

「・・・君は僕を捕まえに来たのかい?」

 

「・・・まあ、探すのには苦労したかな? 君はもう死んだと思っていたからね」

 

「事実君に殺されかけているんだけど?」

 

「そうかい? あの地獄からただ一人だけ生還している君がそれで終わるだなんて思えないんだけど? というかそもそも僕は君と戦うつもりはなかったんだけど……」

 

 時雨は立っていられなくなり、仰向けに倒れる。

 

「そういえば僕の名前思い出してくれたかい? ほら、最上だよ。あの頃まだ僕は艦娘じゃなかったけれど結構君と会ってたんだよ? 軍の関係者としてさ」

 

 時雨はもうろうとする意識の中で考えた。そして……

 

「……全然覚えてない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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