山城はそもそも一人で戦っていたため作戦会議というもの自体が初めてではあったものの良い感じに会議は進んでいた。
ふむ、艦隊全体の雰囲気は良い感じなのではないのだろうか? このまま順調にいけば山城はこの艦隊でよい関係を築いていけるかもしれない。
俺はそんな風に思いながら作戦会議を始めようとする彼女たちを後目に部屋を出ようとした。うん、僕ができることはここまでだ、今日はとろけるまで寝よう。
「あんたどこに行くの?」
叢雲に肩をつかまれる。
「なぁ、勘弁してくれよ。今日はとりあえずお前らで親睦深めてさ。いいだろ? お願いだよ、疲れたんだよ」
関わる艦娘が一人増えるたびにトラブルが増えていく気持ちがお前にわかるか?
「ダメに決まってるでしょ! そもそも全員集まってないじゃない! ちゃんと集合かけたの?」
確かに全員集まっていない。青葉はさっきの電話で故人になってるみたいだし北上さんはなんで来てないのかわかんないし……
「あ、提督。遅れてごめんね」
やってきたのは北上だった。それとその後ろに隠れるように大井がついてきていた。
「いや、大井っちがさ。何があったのかわからないけど作戦会議に顔を出したいって言ったんだよ。ほら大井っち、提督と仲直りしたいんでしょ?」
「いや、別に仲直りしたいとかじゃ……。私はただ北上さんだけだと心配でついてきただけです」
まあいいさ。会議に顔を出してくれるだけでも進展だからな。
そういうと大井だけ逃げるように行ってしまった。
「大井っちそういえば青葉が何とかかんとかって言ってたけど青葉はどうしたの?」
青葉は……もう、いないんだ。思えばいい奴だったのだが……
「あら、お邪魔しますわ。へぇ、こんなところで作戦会議でやってるんですの?」
「ヤッホー提督。青葉回収してもらいに来たよ」
鈴谷と熊野が青葉の襟首をつかんで引きずりながら入ってきた。
「あら提督、昨日ぶりですわね。あなた先日はよくも嘘をついてくれましたわね。事の顛末はすべて最上から聞きました」
状況は大体察した。最上が時雨の事を見つけたせいで時雨の存在も時雨と俺達とのつながりもすべてバレたということだ。
「悪かったよ。謝るから青葉のことを許してやってくれないか? 時雨は色々危ない存在だから隠さないといけなかったんだ」
「ええ、存じておりますわ。あなた初めから私たちのことを疑っていらしたのでしょう?」
「まあ……そうだな」
あーこれは怒らせちゃったかな? まあ、仕方ないか。
「見直しましたわ」
「え?」
「青葉の提督というからどんなクズ野郎かと思っておりましたが……あなたは思ったより仲間思いのようですわ。それに本人には口が裂けても言えませんが青葉のことも。情報のためならプライバシーもデリカシーもないあの青葉が自分の利益になりもしないのに危険を顧みず誰かのために嘘をつくなんて思ってもみませんでした。こんな人になら協力してあげてもいいと思いましたの」
「それじゃあ……」
「ええ、今回はあなたの演習に助太刀いたしましょう。で・す・が、青葉と組むのは今回限りですわ!! 青葉と共闘なんて考えただけで背中に寒気がしますの。だから、今回だけですわ!!」
「まあ、鈴谷はどっちでもいいけどね。熊野は考えすぎだよ」
そして、熊野は青葉をその辺に捨てると作戦会議中の艦娘達の中に入っていった。
「で? これだけ集まってるのに司令官だけサボるつもりじゃないわよね?」
「……わかったよ」
渋々と俺はみんなが待つ席に向かった。
そうして、卒業演習のための作戦会議が始まった、のだが……
「青葉は重巡ですから山城さんの隣で守りを固めたほうが良いと思います」
「ちょっと! 何故私の隣に青葉がついているんですの!? 青葉は艦隊の肉壁として名誉の戦死を遂げるポジションのほうがお似合いですわ!」
「演習で死者を出さないでくださいよ! 司令官、うちの艦隊の中にすでに敵がいます。助けてください!」
「そうだぞ、熊野。皆の肉壁となるのはこの若葉の役割だぞ! 訂正してくれ!」
「いえ、そういうことを言ってほしいわけじゃないんですよ」
「あ! 初雪ちゃんだね? 鈴谷だよ、よろしくね」
「あ、あぁ、よろしく、お願い、します」
「それ何やってるの? ゲーム? 鈴谷にも教えてよ!」
「ああ、助けて……北上さん」
「ちょっと、鈴谷? 駄目だよ初めからそんな陽キャ全開でいったら戸惑っちゃうでしょ?」
「あ! そうなの? ごめんね、初雪ちゃん」
「あ、いえ、大丈夫です……」
「みなさんお疲れ様です。お茶と軽食をどうぞ……あの、叢雲さん? 大井さんと山城さん喧嘩してるんですか? お互いににらみ合って……」
「ああ、由良。いや……多分そんなんじゃないと思うわよ」
「……(なんでこの人こんなににらんでくるの? わ、私何かしたかしら?)」
「……(あ、やっぱり私みたいなポンコツがここにいることが嫌なのね……。ごめんなさい、これが終わったらここから消えていなくなりますから……)」
「先は長そうね……」
え? これ俺がまとめんの? 無理じゃね?
そもそも、あんな癖の強い奴らを一つの組織としてまとめようと思うこと自体が間違いだったんだ。
「ねぇ、俺やっぱり提督の才能無いんじゃないの?」
「はぁ、何言ってんのよ。あんたは私が認めた司令官なんだから胸を張りなさい」
「はあ、とりあえず。山城の艤装はお前の知り合いってやつらに任せてるけど大丈夫なのか?」
「ええ、腕はいいのだから多分大丈夫……のはず……」
どうにもその腕のいい整備士とやらも艦娘らしい。叢雲は生まれながらにしてこういった軍の関係者や一部の艦娘に知り合いがいて助かっている。一部の施設は顔パスというから驚きである。マジでお前なんなんだ?
「演習では沈まんはずだから作戦名は「ガンガン行こうぜ!」だ! 攻撃はすべてこの若葉が受けよう」
「ダメですよ! きちんと守備も大事ですから「みんなガンバレ」で行くべきです!」
お前らどんだけドラクエ好きなんだよ!? ドラクエでしか作戦名決められないの?
聞いた話だとそういった座学は鹿島教官の姉である、香取教官の担当だったはずだ。まさか、香取先生はドラクエ好きだったのか?
しかし、叢雲曰くこいつらは香取先生の授業中ほとんど寝てただけで、そのたびに先生からギガデインを食らっていたらしい。
ふむ、俺ですら真面目に受けていたというのにこいつらは……。ん? 何か寒気が……
まあいい、とりあえず戦力の確認だ。
まず、最大火力の出せる山城なのだが……
「止まってる的に百発百中で外してるわね……。ここまで来たら才能ね」
叢雲の正直過ぎてぐうの音も出ない感想に山城は膝を抱えて顔をうずめたまま動かなくなってしまった。
「グズでごめんなさい、鈍臭くてごめんなさい、無駄にデカくてごめんなさい、運が悪くてごめんなさい、存在しててごめんなさい、生きててごめんなさい、無駄に酸素吸っててごめんなさい、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
ああ、これはしばらくはだめだ。叢雲も、もう少し柔らかい言い方はできないのか?
「できてないものはできてないんだから仕方ないじゃない」
うーん、そうなんだけどさぁ。叢雲は言葉が足りないのだ。叢雲はただ貶したいわけではない、卒業演習まで時間がない中そういった慰めをしている暇はないということだ。
今の山城は、ただ大きな水柱を作るだけの艦ということになっている。
「あー、山城?」
「……フフフ、笑いなさいよ。所詮私は艦隊のスクラップよ、私なんていない方が勝率は上がるわ。いいの、私は姉様とまた一緒にいられればそれで……」
そんな山城の隣に俺は座った。
「お前は勝てるのなら囮にでもなる覚悟があるって言ったな? あれは嘘だったのか? 扶桑に勝ちの報告をしたいって言ったのは嘘だったのか?」
「そんなわけないじゃない! 勝てるのなら勝ちたいわよ! でも……こんな私がいたら、勝てるものも勝てないわよ……」
俺はそんな山城の両頬をつかんで無理やり俺のほうを向かせる。
「言っておくが使えるか使えないか決めるのは俺の役目だ。お前が決めることじゃない! でも、そうやって座り込んで相手の的になるような奴はお前じゃなくても用なしになるぞ? それでもいいのか?」
山城は首を横に振るも俺に疑問を投げつける。
「……あるの? 私を使って……それでも勝てる方法があるの?」
「……ああ。一応はある。ただ、結構つらい役になるぞ? いいのか?」
そんな俺の質問に山城は即答した。
「ええ、いいわ。私が勝てるというのなら喜んで不幸になる」
俺はその言葉を聞くとすぐに動いた。
「あー叢雲? さっき言ってた知り合いは開発作業もできるか?」
「ええ、もちろんよ。何? 今から会いに行くの?」
俺は、山城と叢雲を連れて叢雲の知り合いに会いに行くことにした。
めちゃくちゃ先の話が紛れ込んでいたので修正いたしました。
申し訳ありません。