中二病少年が本物に出会う話   作:うみうどん

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十六話 閑話休題

 ──ー僕は何度も繰り返す。

 何度も何度も命を使っては消えはて、そして新しい命となって生まれてきた。ああ、これで何回めだろうか。君が消えてもうどのくらい経ったのだろうか? 今の僕にはそれすら記憶することが危うくなってきた。

 最後に……君を助けたかった。最後に君を救いたかった。なのにどうして、君はいつまでたっても現れないんだろうか? 

 

 ──ー僕は何度も繰り返す。

 君を救うため、君を見つけ出すため。もう名前も分からない君だけど、姿だけはハッキリと覚えている。

 この命が尽き果てようと、君がどんな姿になってようと。

 

 ──ー僕は君を愛そう。

 

 ──────────────ー

 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 ──ー

 

 

 

 ー

 

 

 ……何故だろうか。ひどく悲しい夢を見ていたような気がする。

 ここ最近多いのだ、魔女と接触してからだろうか? こうやって夢を見て涙を流す。しかし内容は覚えていない。頭の中にひどく靄がかかったかのように何も覚えていないのだ。

 

 僕はベットの横にあった水を飲む。冷たい水が喉を通り一気に僕の意識を回復させた。

 あの後、僕はわずか2日で退院して、家に帰った。

 美国織莉子と呉キリカは無罪放免の処置が取られた。放送室に忍び込んでただ遊んでいたら偶然あの不可思議空間に足を踏み入れてしまった不幸なイタズラ者だとされた。

 

 しかし学校の方では何かしら罰があったらしく、二人とも反省文を書かされていると話していた。

 

 時計を見ると朝7時。もうそろそろ学校に行く支度をせねばならない。

 しかし、気が重いというか何というか。すごく学校に行きたくなかった。

 

 その理由とは。

 

「よっ! ヒーロー! 今日もかっこいいな!」

 

「あ、あの人が八千ましろさんよ」

 

「今日もカッコいいわね」

 

 あれ以降、僕は英雄として扱われている。

 教室に入れば大勢のクラスメイトが僕を取り囲む。あの時はありがとうだとか、どうやったらそんなに強くなれるのだとか質問攻めに逢うのだ。

 これには大変迷惑している。これでは学校にいる時はプライベートなんてあったものじゃない。

 それに僕は一定の人数に囲まれると頭痛がしてくるのだ。これまであまり人と接触して来なかった反動なのだろうか? 

 

 これが僕が憂鬱になっている理由だ。

 ぶっちゃけもう勘弁してほしい。毎日毎日よく飽きないな君たちは。

 

「どいて欲しいのだけれど」

 

 いつのまにか僕の後ろに立っていた暁美さんがクラスメイトを睨みつけながら教室の中に入る。

 暁美さんの近くにいたクラスメイトはサッとまるでモーゼの海割りかのように割れ、暁美さんの為の道を作った。

 

 僕の時とはえらい違う反応だな。

 

「みんな、八千君が困ってるから、ね?」

「そうだぞ、みんな」

 

 横から上条君と中沢君が止めに入る。ありがとう……中沢君……是非友達になってはくれないだろうか? 

 ただし上条、テメーはダメだ。嘘嘘、上条君も是非友達になろう。

 

 ──ー

 

 結局人に囲まれてうんざりした僕は逃げるように屋上へ駆け込む。まるで奴らはゾンビのようだ。しかも、全学年ときた。下級生からは「きゃーセンパーイ」と手を振られたりした。

 これがモテ期と言うやつか、もうお腹いっぱいなので勘弁して欲しい。

 まあモテたいと願った事はあるがこんなモテ方はしたくなかった。

 

「あら?」

「……ああ! 巴さんか」

 

 僕は少しホッとする。見知った顔がいて安心したのだ。

 彼女もあれ以来、なにかと学校で注目を浴び、その性格からかアイドル化してしまったと苦笑して話していた。

 最初の頃は彼女も満更では無かったらしく、すごい嬉しそうだったが、日に日に顔がやつれていったのを覚えている。

 

 僕と彼女は近い思考をしているので、大方同じ理由で屋上へ足を運んだのだろう。

 

「……最初はね……私も嬉しかったわ。男の子達から熱烈なラブコールを受けたり、女の子と一緒にお出かけしたり……私の憧れていた状況よ……でもこんなに疲れる物だなんて……」

「同感だ、現実と理想は違うと言うわけか……悲しいなぁ」

 

 今や、学校では僕派と巴さん派の勢力に分かれているらしいが僕たち陰の者達にとっては大災害だ。頭が痛い。

 こんな事なら巴さんと必殺技の名前を考えている方が良かった。

 そして中には物好きな者がいるようで、暁美さんのその冷たい目線で見られながら踏まれたいと世迷言を話しているやつも見かけた。気持ち悪。

 

 当の本人はと言うとその話を聞いた瞬間すごい表情をしていて、すぐに鹿目さんの後ろへ隠れてしまった。その一件以来暁美さんは鹿目さんにべったりだ。……鹿目さんを救うんじゃ無かったのか……? 逆に守られてどうするつもりなのだろう。

 

「そういえば……ここ最近呉さんの姿を見かけてないわね?」

「ああ、キリカなら今は僕の家でおばあちゃんに稽古をつけてもらっている」

 

 あの一件以来、織莉子を守る力を手に入れたいと話していたので僕のおばあちゃんを紹介した。今や、メキメキと力が増していっている。しかし、毎日キリカが宙を舞っている光景しか見ていないような気がして仕方がない。「あの……人……何でそんなに強いの……?」と生傷を作って震え声で僕に聞いてきたのを「諦めろ」と言ったのを覚えている。ちなみにその後、僕も宙を舞った。

 全く、あの人は怪我人にも容赦がない。

 

「前から思っていたのだけど、そのお祖母様って何者?」

「さあ? でも、昔、陰陽術を習ったことがあると言っていたな」

「……もう、ましろさんとその方だけでいいんじゃないかしら?」

「……僕もそう思うよ」

 

 しかし何度言ってもその重い腰を動かそうとはしないのがあの人だ。

 しかもここ最近忙しいらしく、僕たちの稽古の他に何か国から呼び出されているらしい。おばあちゃんと国がどんな繋がりがあるのか分からないし知りたくもない。どうせ、紛争地域に行って戦争でも止めているんだろう。

 

 ちなみに白女組は浅古さんと美国さんは正式に友達になったらしい。しかし関係は前と変わらず憎まれ口を浅古さんが叩き、それを美国さんがハイハイと受け流している状態らしい。

 どうやら美国さんは政治家を目指し始めたらしいが、あの人が国を動かす権利を持ったらとんでもないことになりそうだ。

 

「ねえ……その名前……なんだけど……」

 

 巴さんが頰を赤く染めて口を尖らして僕に言ってくる。どうしたのだろうか? 名前が何だって? 

 

「その……呉さんの事は名前で呼ぶのに、何で私は呼んでくれないのかなって」

 

 巴さんがもじもじとし始める。

 おっと、ついうっかり告白しそうになってしまった。「僕と君はもしかしたら前世で恋人同士だったのかもしれない、だからもう一度付き合おう」ととんでもなくヤバイ台詞を口走りそうになった。こんなことを言った日には彼女からは「は?」といわれ僕は三週間学校を休むに違いない。

 

 つまりそれほど巴さんが眩しかったと言うことだ。

 まずい、これはまずいぞ八千ましろ。

 これはどんな攻撃よりもまずい。一発でノックアウトしそうな程に強烈なジャブを巴さんは打ってきやがった。面白い……これは彼女の挑戦状だな? 僕は冷や汗をかきながら、どう攻撃を回避してカウンターを入れるか探る。

 

「私たちは……友達……でしょ?」

 

 グハッ!? 

 

 ダメだ……! ストレートを回避できなかった。僕の後ろにいたイメージの僕が巴さんのイメージに殴られて吐血する。

 こいつ……ヤバイッ! 強すぎる……! 

 なんて人だ……巴さんは……! この攻撃力はまるでおばあちゃんに殴られた時の痛みと似ている。

 僕は少し震えながらなんとか口を開いた。

 

「あ、ああ、マミさん」

 

 どうだ! 僕、会心のカウンターだ! これは避けられまい……! 

 

「……! あ、ありがとう! ましろくん!」

 

 ぐほあ!! 

 

 な、なんだ……と? カウンターに合わせて……カウンターを返された! ありえ……ない……この僕が! 

 この日、僕は初めて膝をつき、初めて敗北というものを経験した。……巴さんはとんでもない人だ。

 

 




アンケートを設置してます。
織莉子以外の外伝に手を出すか、もしくはこのままワルプルまで突っ走るかというものです。
ちなみに登場キャラが増えるだけです。

これでやらないの票が多くても、ましろ外伝で投稿するかもしれません。
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