あの後、巴マミに僕の事を聞かれた。
なぜそこまでの力があるのか、なぜキュウべぇの事が見えるのかとか、なぜ魔法少女の事を知っているのだとか聞かれたのだが、僕にはさっぱり何のことだか分からない。
どうやら映画の撮影でもないらしく、本当にみんな巻き込んで魔法少女ごっこをやっていたんだなと思った。
キュウべぇという不思議なおもちゃに関しては謎だが、多分あの人形と同じ原理で、アフレコしてる人がいるか居ないかなのだろう。
キュウべぇも僕の事に関心を持っているみたいで、魔法少女の存在を聞かされた。
ごっこ遊びでも設定をしっかりと持ってやるのは良い事だ。
設定があるかないかで、深みが違うからな。
そして詳しい話がしたいと言われ、巴さんの家に招待されたが僕はまっぴらゴメンだ。
こんな美人の先輩の家にお呼ばれされたとクラスも男どもに知られたらそれこそ注目を浴びてしまう。
ただでさえ、今は気配を消してうまくやっているんだ。
そんな訳で僕は丁重にお断りする。
理由はこの後やるべき事があると真剣な表情で言ったら、「そう……魔女を追うのね」と真剣な表情で返された。
どうやらあの人形は使い魔と言ってそれを操る魔女という存在がいるらしい。
「貴方が何者なのか、また学校で聞かせてもらうわ。後……あの子に気をつけてね」
「ああ、また学校で、フロイライン達……」
そして僕はその場を去った。
よかった弁償とか言われなくて……いや、また学校でって言ってたから学校で請求されるのか? ……こんな事になるんなら壊さなきゃ良かったぜ。
「……風呂? なんだって?」
「フロイラインよ、ドイツ語でお嬢さんって意味」
「へー八千くんって物知りなんだね」
(……多分だけど……彼、私と同じような空気を感じるのよね……何故かしら?)
──ー
僕は一人夕暮れの道を歩く。
そんな時、後頭部に突如なにか固いものが突きつけられた。
「止まりなさい」
「……」
僕は仰々しく、両手を上にあげる。
全く、エアガンでも人に向けちゃならないと習ってはいないのか? 説明書を読め、説明書を。
「本来なら魔法少女でしか倒すことの出来ない使い魔を貴方は人間で……しかも素手で倒した……貴方は一体何者なの?」
「何者か、か。それを言ったら君たち魔法少女とやらが何者かと聞きたいのだが……」
「ふざけないでっ!!!」
転校生がトリガーに指をかける。
これはいけない、たとえエアガンでもトリガーに指をかけ人に向けるのは危なすぎる。
僕は、両手を上げた状態から後ろを向き、素早く転校生の銃を持った手を抑える。
? エアガンに対しては重量が重たすぎるな。
まあリアル志向の店で買ったのだろう。
「CQC!?」
「生憎僕はそんな高度な技術は納めていない」
僕が納めているのは銀河連邦式なんちゃって徒手空拳だ。
僕が愛読しているSFライトノベルで登場人物の殆どが習得している武術であり、僕のは見様見真似であり、本物には遠く及ばない代物。
作品の中では巨大な岩を拳で叩き砕くのだから、僕の技術は赤ちゃんレベルだろう。
それより……。
「そんなものを人の頭に突き付けたら危ないだろう?」
「っ! この代物を危ないで済ませるの?」
「所詮はおもちゃではあるが、危険だからな」
僕は、なぜか呆然としている転校生から銃を抜き取る。
ズッシリと重たい感じがするが、そんな事はどうでもいい、僕は家にあるエアガン同様にその場で分解した。
エアガンみたいに一発でうまく出来なかったが、力技でなんとか分解する。
いや、これ壊れたかな? 結構リアルな代物だし、これもかなり金がかかってるんじゃ……。
僕は少し青ざめる。
しまった、またやってしまった。
これで機械を壊すのは二度目だ。
請求が怖い。
ん? 分解した銃の中から弾丸が出てきた。
ははん、中にBB弾を詰め込むタイプだな? とも思ったが、どうやら違うらしい。
限りなく本物に近い代物だ。
成る程、エアガンでもないただの弾が出ないおもちゃだったか。
ここまで拘るとは、転校生もいやはや、なかなか侮れない。
「おもちゃ……銃を……おもちゃですって……?」
「はあ……僕なら平気だが、もう茶番も終わっているこの状態でまだ続けるとは……流石に疲れたぞ」
「茶番……」
転校生は目を見開く。
む、怒らせてしまったのだろうか。ごっこ遊びでも本気でやっている彼女達に失礼な発言をしたと、少し反省する。
口は災いの元だ、やはり話さない方がいいだろう。
「私が……これまでどんな思いで頑張って来たかも知らないで……言うに事を書いて茶番ですって……!?」
あちゃあ、これは完全怒らせてしまった。
すぐに訂正しなくては。
「ああ、すまない……茶番じゃあないな、少なくとも君は本気だな」
「……私の事を知ってるの……?」
困惑して表情で僕を見据える転校生。
お互い初対面の筈だが、この問答も想定の範囲内だ。
大方、魔法少女ごっこをずっとやってきたのだろう、中学生にもなってそんな衣装に身を纏い、演技力も高いはずだ。
だから僕は彼女を傷つけないようにこう答えるしかないだろう。
「ああ、知っているよ。また学校でね、転校生」