「貴方は面倒ごとを拾ってくる才能があるわね」
「はい、面目次第もございません」
僕は今、絶賛正座中だ。何故かって? そりゃあ分かるだろう? 僕がホオズキの魔法少女と接触したと暁美さんに伝えておこうと思って、今噂になっているキリサキさんの事をついでに話したらこう言われたのだ。
それになんか雰囲気も刺々しいので自然と正座になった。
いやあ、こういう時は男は女の人に敵わないな、本当にごめんなさい。
「……まあいいわ、ましろさんが裏で何をやっていようと私の目的はまどかを助ける事だけだもの」
ここ最近その鹿目さんに守ってもらっている人が何を言っているんだ、という心の声は胸の内に秘めておこう、今ここでややこしい事を言ってめんどくさい事になるのはごめんである。
「何か失礼な事を考えていないかしら?」
「いえ、ただ、どの口が言ってんのかなぁって思って」
「いい度胸ね」
おっとしまった、僕の口は正直者だったらしく、余計な事を喋ってしまったー。
いや、少し足が痺れてきてね。さっさとこの状況を脱出したいわけですよ。
しかも、僕が正座している場所、ここが問題だ。
教室ですよ? 教室。さっきからクラスメイトの視線が痛いわけ。
おいコラ美樹さん、さっきから笑いを堪えているのバレバレだからな?
それに比べて、鹿目さんはいい人だ、さっきからこの目の前の紫の人を止めようと「ほ、ほむらちゃん……」と言って制止しようとしている。優しい。
鹿目さんはこんなに優しくて大丈夫なのだろうか? どこぞの奇怪生物に騙されてはいないだろうか? 例えば僕が宇宙人だとかホラを吐かれては居ないだろうか? 心配である。
「まあ、今日の所は不問にしといてあげる。この後まどかと遊びに行く予定があるのよ」
「そうか、実に羨ましい。鹿目さん、今度は僕と遊びに行こう」
「ふえっ///!?」
「貴方には巴マミがいるでしょう!!」
僕が冗談で言ったら鹿目さんは顔を赤らめた、かわいい。
というか暁美さん、首を締めるのはやめてくれ。この世には窒息死というものがあってだな。どんなに体を鍛えていてもそればっかりはどうしようもないんだ。苦しい。
「
「知ってるわよ、貴方と巴さんはお似合いのカップルだと学校中で噂されているの」
誰だそんな噂流しやがった奴。
中二病同士気が合うだろうってか? やかましいわ。マミさんは必殺技とかつけちゃう系の中二病であって、僕は世界構築系の中二病であるため一緒にしないで頂きたい。
それにマミさんが可哀想だろ、僕みたいな奴とカップルだと言われるのは。
それにもしかしたら、どこかで会話を聞いている可能性もあるのだからそんな事を言うのはやめて差し上げろ。
そして僕の首から手を離せ。
「まあ、ホオズキの魔法少女の問題は貴方自身で解決する事ね」
「おいおい、普段協力しているのだから、協力してくれてもいいじゃないか」
「貴方が持ち込んだ面倒ごとの方が多いじゃない」
首から手を離しながら、冷たい目線で僕に言う。
よく考えてみれば美国さんの件も僕が持ち込んだような物だった。何も言い返せない。
まあ仕方はないか。当初の予定どうり、この問題は僕個人で片付ける事としよう。
「了解した、暁美さんはデートを楽しむといい。じゃあな」
「でっ!? ……ええ、また何かあったら連絡するわ」
そして暁美さんと別れ、廊下を一人で歩く。
さて、これからどうしようか悩むところではあるな。
「あ、あの! ましろくん!」
「? 鹿目さん?」
鹿目さんが息を切らしながら僕の名前を言う。どうやら走って追いかけてきたようだが、一体全体どうしたと言うのだろうか?
「あの……その……わ、私にも何か、お手伝い出来ることってないのかなって……」
手伝い……か。正直言って鹿目さんにしてもらうことなどは、ほぼほぼない。強いて言うのなら、インキュベーターの勧誘から逃れ続けてくれたまえ、と言うしかないだろう。
しかし、目の前の鹿目さんはおどおどしながらも、決心したような目線で僕を見る。
「いつも……ましろくんやほむらちゃんの助けられてばかりだから……私にも……私も二人のために何か出来ないかなって思って……」
「その考えは少し危険だな」
「え?」
鹿目さんは臆病ながらも芯が強くて優しい。それはこの短い付き合いでも分かっている。この子は魔法少女になるべき人材なのだろう。しかし、その想いが世界を破滅に導くことになってしまうと彼女が知ってしまったら?
「その言い方では、誰かの役に立ちたいから、自分自身を使ってくれと言っているようにも聞こえる」
「……で、でも、私ももし、魔法少女になって二人の力になれたら」
「魔法少女になるという事がどんな事か、暁美さんから聞いた筈だろう?」
「……」
コクリと伏せ目がちにうなづく鹿目さん。
魔法少女になるという事は、肉体自身を殺し、魂をソウルジェムという器に移し替える事だ。それはたった1つの願いで、永遠の苦しみを味わう事になる。確実に割に合わない事になる。
それは誰かを助けたい然り、自分自身の欲望を叶えたい然り、呪いのような願いでさえも、たどり着く運命は同じ場所である。
「鹿目さんの気持ちはとても嬉しい。だが僕はこれ以上、女の子が苦しむ姿を見たくないんだ」
「……」
「それに、戦いだけでは無く、君に出来る事は山程ある」
「……え?」
「例えば……鹿目さんが暁美さんの隣にずっと居てやる事とかな」
「隣に?」
「ああ、それだけで暁美さんはずっと救われるだろうさ」
事実、鹿目さんの隣にいる暁美さんはいつもの仏頂面ではなく、朗らかな年相応の少女のような顔をしている。
鹿目さんが隣にいる、それだけで彼女はとても幸せなのだろう。そして僕はそんな二人を眺めて、日々ほっこりする。WIN-WINという奴だ。
そう、先ほどの馬鹿話を繰り広げるだけでも良い。ああいうのが大切なんだ。
鹿目さん自身も何かシックリ来たようで、何度も首を縦に振っていた。
「まあ、ロクな事は言えなかったかもしれないが、そういう事だ。僕達を手助けすると思って、暁美さんの側に居てやってくれ」
「……ありがとうましろくん、うん! 分かった!」
にっこりと笑う鹿目さん。その笑顔はすごく眩しくて、暁美さんが鹿目さんを何が何でも絶対に守りたいという気持ちが少し分かったような気がした。
恐らく、暁美さんはこの笑顔に何度も救われたんだろうな。
「じゃあ、これからみんなを誘ってほむらちゃんと遊びに行くね!」
「ああ、是非そうして……ん? みんな?」
「うん! ましろくんも一緒に来る?」
「いや、お誘いは嬉しいが、この後用事が……。で、暁美さんと二人で出掛けるんじゃ?」
「最初はそういう話だったんだけど、やっぱりみんな一緒の方が楽しいと思って、さやかちゃんと仁美ちゃんにはもう声をかけてあるんだ」
おいたわしや暁美さん……。きっと……二人で出かけられると思ってウキウキだったんだろうな……。何故だろう、「何でこんな事になってしまったのよ」と言って頭を抱えて心の中で泣いている暁美さんの姿が見えるような気がするよ。
でも……鹿目さんのこの笑顔には敵わないわけで……。
「どうしたのましろくん?」
同情するよ。あとで二人で遊べるように計らってあげよう。ポケットマネーで遊園地のチケット二人分を買ってあげることもやぶさかでない。
僕は暁美さんのソウルジェムが濁らないか心配ではあったが、それを無視してホオズキに向かうための準備をすべく、家に帰ったのであった。