中二病少年が本物に出会う話   作:うみうどん

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二十二話 記憶の底にあるものは

 僕の黒歴史が1つ増えた所で、穂香さんとパトロールを開始したのだが……。

 

「いくらなんでも早いな……」

 

 僕たちは魔女結界に取り込まれていた。僕たちが街を探索しようとしたその瞬間、タイミングを見計らっていたかのように結界が出現して、僕たちを取り込んだ。

 あたりはファンシーな布みたいなものに取り囲まれている。

 

「穂香さん、無事か?」

「う、うん……なんとか……」

 

 周りから一ツ目のハットをかぶったコウモリのような形をした使い魔達が襲ってくる。

 僕たちはお互い背中をくっつけて、背後を守った。とにかく、ここの主を早く見つけねばならん。

 使い魔達が襲ってくるので、申し訳ない気持ちになりながらも迎撃する。

 本来ならば、いくら魔女とて殴りたくはないのだが、ここは人命が優先だ。

 

「はああ!!」

 

 ドンと靴で地面を鳴らす音がした瞬間、僕は拳を突き出す。今使ったのは震脚×正拳突きで、僕の好きなSFラノベの主人公が使っていた技である。

 震脚の方で体を固定して正拳突きの威力を増大させたシンプルな技ではあるが、それ故に強力だった。

 あたり一帯の使い魔達が吹き飛んでいく。初めて使った技ではあるがかなりうまく行ったな。

 今なら奥義の方も使えそうである。

 

「す、すご……」

 

 穂香さんにありえないという目で見られたが、僕はそれを無視して最深部へと進んでいった。

 

「……誰かいるな……」

「魔法少女?」

「だろうな」

 

 奥から戦っている音が聞こえる。魔法少女同士の喧嘩ではなく、普通に魔女と戦っているようだった。

 僕は少し安堵して奥へと入る。そこには前に会った詩音さんともう一人の方は名前は知らないが黄色い衣装に身を包んでいる魔法少女が魔女と戦っていた。

 

「先輩!」

「ええ! チサト!」

 

 二人は連携して魔女へ立ち向かっていた。詩音さんが二丁拳銃で弾幕を張り、そこの間を縫って黄色い魔法少女が肉薄して行く。

 しかし、この完璧なコンビネーションでも魔女は打ち砕けずに、それどころか二人を圧倒していた。

 

「加勢するよ!」

 

 穂香さんも双剣を持って魔女へ肉薄する。彼女は自身のスピードを上げる能力の持ち主でキリカと似たような魔法を使っていた。

 そのスピードに圧倒されてかは知らないが魔女の動きが鈍くなったような気がする。

 僕は三人の邪魔をしないように彼女達の背後から迫ってくる使い魔達を迎撃していった。

 

「貴方は!?」

「話は後でしましょう!」

「三人とも! 後ろは僕に任せて魔女を!」

「オッケー!」

「八千さん!? ……はい! 分かりました!」

「一般人まで……ってチサトが前に言っていた人!?」

 

 向かってくる使い魔を裏拳で弾き飛ばして行く、少し遠い使い魔には蹴りを食らわした。

 ちなみに僕が魔女と戦わないのは、魔法少女にグリーフシードが行きやすいようにするためである。

 僕が倒した魔女から取ったグリーフシードを彼女達に渡しても、それは貴方の戦果だからと言って受け取らない人もいる。恐らく詩音さんもその類の人だろう。なんだか真面目そうだし。

 

「あれだけの数の使い魔を一人で……」

「先輩! 前!」

 

 僕の方に気をとられていた魔法少女が魔女に襲われる。まずいな……このままでは彼女がやられてしまう。

 咄嗟に僕は体を反転させて、空中を蹴る。そして、彼女へと追いつき体を手で押しやった。

 取り敢えず、先輩と呼ばれていた彼女は詩音さんの元へ弾いたが、これから僕はどうしようか。

 

 後ろには攻撃体制が完了した魔女。それに僕は背中から落ちていっている状況だ。あれ? これ結構まずいんじゃ……。

 

 そう思った瞬間、魔女は箱のようなものから黒い水のようなものを出し、それに僕は飲み込まれてしまったのだった。

 

 ──────

 

 これは……一体なんだ? 

 周りは暗いし、目のようなものが僕を見つめている。なんだ? これは……この感覚は……。

 体の奥から湧き出るこの寒気。まるで心の中……いや、記憶の中を覗かれているみたいな感覚だ。

 失敗した……この魔女……厄介なことに精神系の攻撃をしてくるのかもしれない。

 

 これまで精神系にダメージを及ぼしてきた敵とは戦ったことがない、僕にとっては未知の領域である。

 

「ぐっ!」

 

 頭が……割れるように痛いっ! コイツは……この子は……僕の何を……一体何を見ているんだ!? いや……見ていない? 心の中に入ってくる……! 

 

 ──────

 

「君はいっつもそうだね……誰かを助けては自分が怪我をしてしまう……もっと自分を大切にすればいいのに」

「まっ! それだけが私の取り柄だし? それに……魔法少女っぽく人助けってのも悪くないよ?」

「ワケがわからないよ」

 

 この記憶……なんだ? 僕は一体何を見ているんだ? 

 僕が見ているもの……そこにはインキュベーターと名前も知らない魔法少女の姿があった。

 場所は……見ている雰囲気からすると見滝原のようではあるが、僕はこの魔法少女……いや女の子を知らない。

 でも……見ていると、なんだか落ち着くような気がした。

 

 いつのまにか頭痛も治ってて、体も軽かった……って!? 浮いてる!? 心なしか僕の体も透けているように見える。

 なんだ? 僕は死んでしまったのか? だとすると……案外あっさりしていたな……。

 まあ……こんなものか……僕の最後なんて。

 

「──ー! 無茶だ! 一旦引くべきだ!」

「でも! この子が!」

「……諦めるしか……」

「私はそんなの絶対に嫌! ここで引いたら魔法少女っぽくないもん! ……今の私がこの魔女に勝てないとするのなら……己の限界を突破するだけだよ!」

 

 顔をあげると結構ピンチの状況に陥っていた。

 これまた名前も知らない魔法少女が倒れててそれを彼女が助けようとしている。

 インキュベーターは名前を叫んでいたが、それでも僕の耳には届きはしなかった。

 

 というより、おかしいな? インキュベーターには感情が無いはずだが、どうもあのインキュベーターは冷や汗をかいているようにも見えて、先ほども彼女のことを心配していた。

 

「行くよ! ファイエル!」

 

 彼女の掛け声と同時に周りにあった瓦礫やらが見ることさえ覚束ない魔女へ飛んで行く。

 その光景を見て僕はクスリと笑った。彼女も銀英伝が好きなのかな? 銀河帝国公用語を使っている時点で間違いは無いだろう。

 

 どうやら先ほどの攻撃で魔女は消滅してグリーフシードを落としたらしい。

 彼女はそれを拾い上げ、慈しみながら「おやすみ」と零していた。

 僕はその光景を何故か懐かしいと感じながら見ていた。

 

「どうなることかとヒヤヒヤしたよ」

「へへん! さーて! さっきのフロイラインは大丈夫かなっと!」

「待って、それより先にソウルジェムの穢れを取り除いたほうがいいんじゃない?」

「じゃあ、あの子と半分こしたらいいよね!」

「……全く……グリーフシードは半分こは出来ないよ、精々二人分の穢れは吸い込めるかもね」

 

 ……なんだか彼女は僕と似ているな、性格は真反対らしいが。

 そう思って彼女たちをぼんやりと眺めていたら、唐突に彼女が僕の方へ振り向いた。

 なんだ? まるで僕の事が見えているかのような……。

 

「思い出した?」

 

 え? 

 

「……そっか……まだダメか……。まあいいや! それより、フロイライン達が帰りを待っているよ! 送っていってあげる!」

 

 彼女はそう言って僕とは正反対の方へ走り出した。

 ……待ってくれ!? 送って行くって! 何処へ!? というより、君の名前は!? 

 

 そう僕が口を開けると彼女は振り向いて僕の方を向いてニッコリと笑った。

 そして、「ないしょ!」とイタズラっぽく笑った後、その姿は霧散して消えた。

 その光景に呆然としていると、突如強い光が差し込んで来て僕を飲み込んでいく。

 

 次に目を覚ましたのは、心配そうな顔で僕を見つめる穂香さんと詩音さんと先輩と呼ばれた人がいるのだった。

 

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