「ましろ────ー!!!! 大変大変大変────! 靴箱にラブレターらしき物が入ってたよ!」
急に僕のランチタイムに割り込んでくるキリカはとんでもない顔をしながら屋上で叫んでいた。
周りにはマミさんと暁美さん、鹿目さん、美樹さん、志筑さん、上条君もいたので全員が全員ビックリしてキリカを見据えている。
……というより、なんだって? ラブレター? 僕の靴箱に? はっはっはっ! そんなバカな……
「えええええええええええ!?」
嘘だろおい!? ここ最近は落ち着いてきたかと思ったら今度はラブレター!?
僕は柄にでもなく大声を出し、キリカに詰め寄って手紙を奪う。
なぜキリカが僕の靴箱を漁っているのかはこの際どうでも良い!
「いや、どうでもよくはないでしょ」
なんか青い人が何かを言っているが本当にどうでもいいのだ!
僕はやけに女の子らしいかわいい便箋に入っていた手紙を読む。
『拝啓
八千ましろ様、お元気ですか? ここ最近は暑くなってきて熱中症になりやすいので、水分補給はしっかりとなさってください。
さて、本題なのですが私は貴方の事がすごく好きで仕方がないのです……それはいつもましろ様が夢に出てきてしまう程で……その事が気になっていつもましろ様の跡をつけてしまうのです。この前だって……お家の方で捨てられた自作の小説を拝見いたしました──ー(中略)──ーと言うわけで私と付き合って欲しいと思っています。
PS.この前盗んだ服は堪能いたしましたのでクリーニングに出したのでお返しいたします』
「……やばいやつやん……」
「ええ……これは紛れもなくヤバイ人ね」
「ええ……とても危険人物よ」
とんでもなくヤベェ奴だった……。
いや……ついに僕にも春が来たと喜んだんですけどね? これは流石にキツイものがあるでしょ……。というより、僕の跡をつけていたってどういう事? 一切気配なんざ感じなかったんですが?
というよりやめろよ自作の小説を読んだとか書くの。死ぬぞ? 主に僕の心が。
「ついでに靴箱にましろの服が入ってた」
「怖い!」
無駄にピカピカになったチリ一つすら残っていない新品同然の服を渡される。
それがまた異様に不気味さをかき立ててしまっている。
どうしようかこれ……取り敢えず燃えるゴミで出せるだろうか? 一応家に帰ったら鍵のつけるところを見直しておこう。
「……八千君が……ラブレター……そんな……僕も用意していたのに……」
「!?!???? イヤですわ! 禁断ですか!? 禁断ですの?????」
何か後ろでとんでもなく不穏な空気を感じるがそれも無視しておこう。やめろ美樹さん、そんなゴミを見るような目で僕を見ないで頂きたい。悪いのは僕じゃない。
「で、でも……その人……ちょっと怖いけど……やっぱりましろくんの事を想ってラブレターを出したんだよね? やっぱりお返事してあげないと可哀想だよ?」
「そうね、まどかの言う通りよ。ましろさん、直接会ってお返事をしてあげるのが良いんじゃないかしら?」
鹿目さんは相変わらず優しいなぁ……でも暁美さん? 君、絶対面白がってるだろ。笑いを堪えているポーズをとるんじゃない。それでも仲間かこんちくしょう。
……まあしかしそうだよな……返事はしてやらないと……でもこの手紙一切呼び出しとか書かれてないんだよなぁ……どこに向かうというのやら……ん? 服の間からまた何か紙が落ちたぞ? なになに? 『果たし状』……。
「ブフッ! ら、ラブレターの次に果たし状って……ふふ……」
ついに暁美さんの笑いのツボがぶっ壊れた。ちなみに僕も頰が引きつっている。ラブレターの次に果たし状って……僕が一体何をしたと……いやいろんな事したな……うん……よく今まで命を狙われなかったのか不思議でならない。いや、殺されかけた時はあるけど……主に目の前の黒い奴に。
次に果たし状とやらも開けてみると、成る程……この人か……。
差出人の名前が『浅古小巻』となっていた、あの人こんな古風な真似をするんだな……。
なになに? この前フルボッコにするって言ったのを今思い出したから、あの日の公園で待つ。
…………そのまま忘れててくれて良かったのに……。
──ー
僕は渋々、あの日浅古さんを助けた公園へと足を踏み入れる。
すると鋭い眼光で仁王立ちをして待っていた彼女がそこにはいた。うわぁ……おっかねぇ……。一般人ならあの眼光で人一人殺せるのではないだろうか?
「来たわね」
「そりゃあなぁ……」
隣には困った顔を浮かべている美国さんとあの日浅古さんを介抱していた少女がいた。
あの子はあれ以来会ってなかったので、少し心配していたがどうやら無事のようで何よりだ。
いつのまにかキリカが美国さんの横で……というか腕に絡みついてキラキラした目でこちらを見てくる。よし、なんかムカついたので、あとでアイツの稽古は二倍にしておこう。
「古き良きヤンキー漫画じゃないんだから……本当にやるのか?」
「ええ、勿論よ。地べたに押し付けてあげる」
そのまま浅古さんは持っていた薙刀で僕を攻撃してくる。どうやら変身はせずに僕に勝とうとしているようだ。
取り敢えず様子見で、振り下ろしてきた薙刀を手で払った。その瞬間薙刀が僕の腕に絡みつくようにしなり、腕の関節を見事に抑えた。
「なっ!」
「はあああ!!」
僕は中学生にしてはかなり体重が重いのだが、それを浅古さんは軽々と薙刀を僕ごと振り上げる。これまで数多の魔女と戦って勝ち残ってきた戦闘センス。それも諸々込みで浅古さんは生身でも強いらしい。
僕はそのまま、柱にぶつけられそうになったので腕の関節を外して、なんとか回避する。
「チッ!」
怖い。何あの人怖い……。僕をフルボッコにするとか言って殺す気満々じゃないか……。
あの時結構分かり合えたと思ったのに……なんでこうも戦っているんだ……。
まあいいか……これで浅古さんは生身でもかなり強いということが分かった。それなら遠慮する必要はないだろう。
僕は足でステップを踏み、一定のリズムを刻む。
トーン…………トーン…………トーン…………────
そして自分の最善のタイミングで僕は宙高く飛んだ。そして空中で何回かしてそのまま回転により最大に増幅された威力のかかと落としを浅古さんの薙刀に向かって放つ。
「くっ! でもその程度!」
かかと落としは難なく弾かれてしまったが、僕の狙いは浅古さんではない。薙刀の方である。薙刀は時間差で真っ二つに折れて、浅古さんは両手で折れた薙刀を持ちあたふたしている。
この薙刀は競技用の物なのでこうやって力を加えると簡単に折れてしまうのだ。
「よいしょっと!」
「ふが!」
僕は二つに折れた薙刀の片方を奪い取り、そのまま背後に移動して頭を少し小突く。そのまま浅古さんは前に倒れて気絶したのだった。
「す、すごい……小巻のあの攻撃を受け流せるだなんて……」
「まあ、あの人が規格外なだけだから……」
「これだけは凄いよね……ほんと……」
────
あのあと気絶から立ち直った浅古さんは頭にできたコブをさすりながら行方晶と名乗った少女に肩を貸してもらい帰っていった。
え? 浅古さんの出番あれだけ? なんか悪いことした気分である。
「……で、私は小巻さんが倒れる未来を見て、心配だったからついてきたのだけれど、どうしてこんな事になってるのかしら?」
「いや〜聞いてよ織莉子! ましろって面白くってさァ!」
キリカは美国さんに浅古さんから来た果たし状の他に、ラブレター(怪文書)のことまで話し始める。
そして実物を見た瞬間顔をしかめて、僕に同情の視線を送ってきた。
「……なんて声をかけていいのかしら」
「ありがとう美国さん……その言葉が聞けただけで充分だよ」
「でもさぁ……いつも跡をつけているって書いてるんだから、もしかしたら今も居るんじゃない?」
……なんかキリカが怖いこと言い始めた。
いや、まあ大体そんな気はしていた。よく集中して周りを観察すると、一点だけ不自然な気配を感じてしまう。それもすごく微弱であり、よく目を凝らさないとわからない程にだ。
居るの? いらっしゃるの?
「……も、もし居るのなら聞いてほしい」
僕はその気配を感じる場所へ向かって話し始める。
「気持ちはとても嬉しい、しかし今は恋愛とかそういうのに興味が無くてな。この通りだ! すまない! 君の気持ちには答えられない」
僕は頭を下げ謝罪する。後ろで「ヘタった?」「へたったわね」とかいう会話が聞こえてきた。お前らいったいどっちの味方なんだ。今もいつ襲われるか分からないし、内心ドキドキしてるんだぞ。
取り敢えず、頭を下げ続けたら、気配が消えた。どうやら分かってくれたみたいで去っていったようだ。
ひとまず安心だ。これで気配なきストーカーに悩まされずに済むかもしれない。
「……あとで復讐に来たりして」
「ありえるわね」
「あり得てたまるか」
その後、僕の靴箱の中に『コロス』という文字がビッシリと敷き詰められた紙が置いてあったとか無かったとか。
……いや、まあ……あったんですけどね? それで後で襲ってきたので返り討ちにした。犯人は白女の生徒だった。
白女怖い。